Study
ヨガと動脈性高血圧症(血管性高血圧症)
動脈硬化や、大動脈縮窄症、動脈閉塞性疾患 (大動脈炎症候群) などがおもな原因となって起こる高血圧症を「動脈性高血圧症」または「血管性高血圧症」と呼びます。
以前より、ヨガと高血圧症の関係を調べる研究は多く発表されておりましたが、今回の研究では「ヨガのポーズを取った上でどれほど効果が表れるのか」を調べています。
というのも、高血圧をお持ちの方には、体に負荷のかかるヨガのポーズは非推奨であるため、過去の研究では「ポーズを取らないヨガ(呼吸や瞑想など)」が中心でした。
結果としては、やはり「ポーズを取らないヨガ(呼吸や瞑想など)」の方が高血圧症の緩和に良い影響を与えたとみられる測定結果となっております。
そして副産物的にとても良いなと思った結果報告としては、「試験の過程で重篤な有害事象はなかった」とのことです。高血圧症をお持ちの方が、ヨガのポーズを取るクラスを受講されても、しっかりとした指導の下で行うのであれば、安全に行えることを証明してくれています。
下記、研究の要約まとめです。
Yoga in Arterial Hypertension
Holger Cramer 1, Charlotte Sellin, Dania Schumann, Gustav Dobos
Affiliations expand
1: Department of Naturopathy and Integrative Medicine, Essen Central Hospitals, Faculty of Medicine,Duisburg-Essen University.
PMID: 30722837
PMCID: PMC6375068
DOI: 10.3238/arztebl.2018.0833
【背景】
ヨガは、主に関連する呼吸法と瞑想法によって動脈性高血圧に対してその効果を発揮しているようですが、ヨガのポーズ次第では、それほど効果が期待できません。この研究の目的は、動脈性高血圧症の患者を対象に、“ヨガのポーズがある場合”と“ない場合”の、両者の血圧低下効果を比較することです。
【方法】
[実験グループ分け]
動脈性高血圧症の薬を服用している75人の患者(72%の女性、平均年齢58.7±9.5歳)を3つのグループにランダムに分けました:
①ヨガのポーズ実習があるヨガ介入グループ(25人の患者|5人のドロップアウト)
②ヨガのポーズ実習がないヨガ介入グループ(25人の患者|3人のドロップアウト)
③待機リストコントロールグループ(25人の患者|1人のドロップアウト)
[プログラム内容]
2つのヨガ介入グループ(上記①と②)は、同じ2人のヨガインストラクターによって実行されました。各ヨガのプログラムは、週1回90分のセッション×12週間で構成されていました。
①ヨガのポーズ実習があるヨガ介入グループ
・45分のヨガのポーズ
・45分の呼吸、瞑想、リラクゼーションのテクニック、および短いプレゼンテーションと質疑応答のラウンドで構成
②ヨガのポーズ実習がないヨガ介入グループ
・90分の呼吸法、瞑想法、リラクゼーション法、短いプレゼンテーション、質疑応答(eSupplement)のみで構成
介入の前後の主要なアウトカム指標「収縮期24時間血圧」と「拡張期24時間血圧」を評価。このレポートでは、フォローアップデータを含む二次アウトカム指標に関する調査結果も提示。
【結果】
「②ヨガのポーズ実習がないヨガ介入グループ」の収縮期24時間血圧は、対照群よりも有意に低く(群差[Δ] = -3.8 mmHg; [95%信頼区間(CI):( -0.3; -7.4)p = 0.035])、「①ヨガのポーズ実習があるヨガ介入グループ」よりも有意に低かったのです(Δ= -3.2 mmHg; 95%CI:[-6.3; -0.8]; p = 0.045)。拡張期血圧はグループ間で有意差はありませんでした。また、試験の過程で重篤な有害事象は発生しませんでした。
【結論】
ヨガのポーズを取らないヨガの実習だけが、短期間の収縮期血圧の低下を誘発することがわかりました。また、ヨガは、動脈性高血圧症の薬を服用している患者にとって安全で効果的であるため、このカテゴリーの人のための追加の治療オプションとして推奨することができます。
引用文献は下記よりご覧下さい.
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