
Study
若いアスリートの心の状態改善にヨガとマインドフルネスがもたらす効果

記事作成日
2025年3月13日
スポーツをする人にとって、身体と同じくらい心の状態はとても大切ですよね。
特に若いアスリートは、試合中のプレッシャーや勝つことへの強いプレッシャーによって、ストレスや不安に悩まされることがよくあります。そんな中で、近年注目されているのが「ヨガとマインドフルネス」の実践です。
この研究では、ヨガやマインドフルネスが若いスポーツ選手の心に与える影響について、過去の多くの研究結果を集めて再分析(メタアナリシス)しました。
その結果、ヨガやマインドフルネスを実践すると、心を「今、ここ」に集中させるマインドフルネスや、いわゆる「ゾーン状態」と呼ばれる深い集中状態に入る力が高まることがわかりました。また、普段感じているストレスの軽減にも効果がありました。
ただし、試合直前や競技中に感じるような「競技不安」への影響は比較的小さいことも分かりました。そのため、ヨガやマインドフルネスは競技前の極度の緊張をすぐに取り除くよりも、日常的に積み重なるストレスを減らし、心のコンディションを整えることで、パフォーマンスを間接的に向上させる可能性が高いということが分かってきたわけです。
今回の研究を通じて、アスリートがヨガやマインドフルネスを日常的に取り入れることで、心身のバランスを整え、落ち着いて集中できるようになることが示されたんですね。
アスリートに限らず、多くの方が日常生活でも生かせる”心のスキル”を身に付けるためにも、これらの実践を積極的に取り入れてみるのは良いかもしれません。
下記、研究の要約まとめです。
Effect of yoga and mindfulness on psychological correlates in young athletes: A meta-analysis
Satish Kanaujia a, Priyanka Saraswati a, Anshu b, Narendra Singh c, Sanjay Singh c, Neetu Kataria d, Poonam Yadav d
a:Department of Humanistic Studies, IIT-(BHU), Varanasi, India
b:Department of Pulmonary Medicine, AIIMS, Rishikesh, Uttrakhand, India
c:Department of Yoga Science, University of Patanjali, Haridwar, India
d:Department of Nursing, AIIMS, Rishikesh, Uttrakhand, India
Received 3 February 2023, Revised 9 May 2023, Accepted 13 May 2023, Available online 13 June 2023, Version of Record 13 June 2023.
『若年アスリートにおける心理的相関因子に対するヨガとマインドフルネスの影響:メタアナリシス』
【背景】
スポーツ活動は身体的だけでなく心理的な健康にも深く関連しています。しかしながら、競争の激しい環境はストレスや不安などの心理的問題を引き起こすことが多く、スポーツ選手のパフォーマンスに影響します。そのため近年では、心理的健康を改善するためのさまざまな手法が試されています。
【ヨガとは?】
ヨガとは、インド発祥の伝統的な方法で、身体的なポーズ(アーサナ)、呼吸法(プラーナーヤーマ)、瞑想、マインドフルネスなどを通して身体と心の調和を促すことを目的とした実践です。ヨガには身体を動かすだけでなく、呼吸を調える、意識を集中するという特徴もあります。
【アスリートと心】
アスリートは競技の中で常に高いストレスとプレッシャーにさらされています。その結果として、アスリートには他の人よりも不安やストレス、バーンアウト、抑うつなどの精神的問題が多くみられることが分かっています。実際、過去の調査では、多くのアスリートがうつや不安症状を報告していることが明らかになっています。
【若年層アスリートの特徴】
若年アスリートは特に心理的なプレッシャーやストレスを感じやすく、これがスポーツのパフォーマンスにも大きく影響します。この年代の選手は競技生活と学業や社会生活との両立で、より一層のストレスにさらされやすいと考えられています。
【ヨガとアスリートの関係】
ヨガやマインドフルネスの実践は、ストレスや不安を軽減し、注意力や気づきを高め、結果としてスポーツパフォーマンスを向上させる可能性が指摘されています。また、ヨガは身体と心をつなぎ、選手の心理的問題への耐性を高めることにも効果があると言われています。
【方法】
本研究は2022年9月までに公開された複数の研究を収集し、それらを統計的に統合したメタアナリシスです。対象者は18~45歳の男女で、趣味としてスポーツを行っている選手でした。比較対象として、ヨガやマインドフルネスの実践を行わないグループが設定されました。
【サンプル】
分析の対象となったのは15件の論文で、中国、インドネシア、アメリカ、カナダ、インド、オーストラリア、イランなど多様な地域から参加したさまざまなスポーツ選手でした。
【結果】
分析の結果、ヨガやマインドフルネスは「マインドフルネス度」と「フロー状態(ゾーン状態ともいわれる集中した心理状態)」に明確な効果がありました。一方で、「注意と気づき」や「行動と受容」の分野については明確な効果が認められませんでした。ストレス軽減には有意な効果がありましたが、不安に関しては統計的に有意な結果が示されませんでした。
【考察】
研究結果から、ヨガやマインドフルネスがアスリートの心理的健康や競技パフォーマンス向上に補完的な役割を果たし得ることが示唆されました。しかし、ストレス軽減についてのエビデンスは低~中程度であり、今後の研究によって確かな効果が確認される必要があります。
【結論】
ヨガとマインドフルネスは、アスリートの心理的健康と競技パフォーマンスを向上させる可能性がある有益な補完療法として考えることができます。今後さらに厳密な研究設計を用いて、その効果の質を高めていくことが期待されます。
引用文献は下記よりご覧下さい.
もし、掲載内容と論文に誤りがございましたらご連絡いただけると幸いです。