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不眠症に効くのはヨガ?それともアーユルヴェーダ?

記事作成日
2025年3月19日
忙しくストレスが多い現代社会では、不眠症に悩む人が増えています。
不眠症とは、眠りたいのに眠れない、途中で何度も起きてしまう、早朝に目覚めてしまうなど、睡眠に関する問題が継続的に起こることです。こうした睡眠不足は心や体に悪影響を与え、記憶力や集中力を低下させ、日々の生活を苦しいものにしてしまいます。
今回紹介する研究では、不眠症を改善するためにヨガとアーユルヴェーダという伝統的な健康法の効果を比較しました。ヨガは体の動きや呼吸、瞑想を組み合わせて心と体のバランスを整え、アーユルヴェーダは自然由来の薬草を使ったオイル療法(ナッシャ:鼻腔にアプローチするオイル療法)を用いて心の安定を図ります。
研究では、18~45歳の不眠症患者112人を対象に、それぞれヨガ、アーユルヴェーダ、通常治療の3グループに分け、約1か月半にわたり実践しました。その結果、ヨガを行ったグループはストレスが大幅に減り、睡眠の質も劇的に向上しました。さらに、記憶力や注意力といった認知機能も改善し、身体面や心理面での生活の満足度も高まりました。アーユルヴェーダのナッシャ法を受けたグループでも改善が見られましたが、ヨガほどの効果はありませんでした。
この研究から、ヨガは不眠症を改善する方法として非常に効果的であり、誰でも気軽に取り入れることができる健康法であることが分かりました。睡眠に悩んでいる方は、ぜひヨガを試してみてはいかがでしょうか。
下記、研究の要約まとめです。
Comparative impact of yoga and ayurveda practice in insomnia: A randomized controlled trial
Verma, Kanika; Singh, Deepeshwar; Srivastava, Alok1. Comparative impact of yoga and ayurveda practice in insomnia: A randomized controlled trial. Journal of Education and Health Promotion 12(1):160, May 2023. | DOI: 10.4103/jehp.jehp_1489_22
【タイトル】
不眠症に対するヨガとアーユルヴェーダ実践の比較影響:ランダム化比較試験
【背景】
現代社会ではストレスが増え、多くの人が睡眠の問題に悩んでいます。不眠症になると心の不調や認知機能の低下、そして生活の質の低下など様々な悪影響が起きることが知られています。そのため、不眠症を改善するための自然な方法として、ヨガやアーユルヴェーダに注目が集まっています。
【不眠症とは?】
不眠症とは、眠りの質が悪く、なかなか眠れない、夜中に何度も目覚める、早く目覚めすぎるといった睡眠の問題が続く状態です。ただ単に睡眠時間が短いだけでなく、十分に睡眠を取る環境があるにもかかわらず眠れないことが特徴です。長期間不眠症が続くと、日中の疲労感や気分の落ち込み、記憶力の低下など、生活に深刻な影響を与えます。
【ヨガとアーユルヴェーダの特徴】
ヨガは心と体を調和させることでストレスを軽減し、健康的な生活を促進することを目的とした実践方法です。呼吸法、瞑想、身体の動きなどを通して心身の健康を整えます。
アーユルヴェーダはインドの伝統医学で、自然界のエネルギー(ドーシャ)を調和させることによって健康を保ちます。特に「ナッシャ」と呼ばれる鼻から薬草オイルを滴下する治療法(ナッシャカルマ)は、心を落ち着け睡眠を改善するとされています。
【不眠症とヨガ&アーユルヴェーダの関係】
ヨガもアーユルヴェーダも、不眠症の原因であるストレスや心の不安定さを改善することで、睡眠の質を高める可能性があります。特にヨガはリラクゼーション効果が高く、ストレスホルモンを抑制し、自律神経を整えることで深い眠りを導くとされています。アーユルヴェーダも薬草オイルによる心の落ち着きや不安軽減を通して不眠症にアプローチします。
【方法】
この研究はランダム化比較試験で行われ、120名の不眠症患者をヨガグループ、アーユルヴェーダグループ、標準治療(コントロール)グループの3つに分け、48日間実施しました。
ヨガグループは毎日60分間、身体運動、呼吸法、瞑想などを行いました。アーユルヴェーダグループは毎日朝晩、鼻に薬草オイルを滴下するナスヤ療法を行いました。コントロールグループは通常の医学的治療を受けました。
【サンプル】
参加者は18~45歳の不眠症患者112名(研究開始時は120名、脱落者を除く)で、男女ともに含まれました。
【結果】
ヨガを行ったグループは、ストレスの軽減、睡眠の質の向上、認知機能(集中力や記憶力など)の改善、さらに生活の質(身体的・心理的・社会的・環境的側面)において最も顕著な改善を見せました。アーユルヴェーダのナッシャ療法グループも、通常治療グループより改善が見られましたが、ヨガグループほどではありませんでした。
【考察】
ヨガのストレス軽減効果は高く、睡眠ホルモンであるメラトニンを増やしたり、自律神経のバランスを整えることで睡眠の質を改善したと考えられます。アーユルヴェーダも一定の効果が認められましたが、ヨガほどの効果はなかったことから、両者を組み合わせたり、さらに詳しく研究する価値があります。
【結論】
ヨガは不眠症患者のストレス軽減、睡眠改善、認知機能向上、生活の質向上に対して非常に効果的であることが証明されました。アーユルヴェーダのナッシャ療法も効果がありますが、ヨガの方がより高い効果を示しました。
引用文献は下記よりご覧下さい.
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