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オンラインで行う瞑想とヨガが過敏性腸症候群の症状や生活の質に与える効果

オンラインで行う瞑想とヨガが過敏性腸症候群の症状や生活の質に与える効果
記事作成日
2025年8月11日

日常生活の中で、なかなか改善しないお腹の不調と付き合っている方は少なくありません。

特に過敏性腸症候群(IBS)は、検査で異常が見つからなくても腹痛や便通異常が続き、仕事や生活にじわじわと影響を与えます。

そして多くの場合、その背景には「脳」と「腸」の深いつながりが潜んでいます。ストレスや緊張でお腹の具合が急に悪くなる──そんな経験がある方は、この脳-腸軸の影響を体感しているといえるでしょう。

この研究は、そんなIBSに対して「オンラインで行う瞑想とヨガ」がどのような効果をもたらすのかを調べた、カナダ発の臨床試験です。取り入れられたのは、首や関節をほぐす動きから呼吸法、AUM詠唱、呼吸観察までを含む「Upa Yoga」という体系。週1回のオンラインクラスと、毎日の自主練習を8週間続けてもらいました。

結果は興味深いものでした。主な指標であるIBS症状の改善度では、対照群との差は統計的には有意とはいえませんでしたが、ヨガ群だけを見れば明らかな症状軽減が見られました。そして特に際立ったのは、QOL(生活の質)、疲労感、ストレスといった、副次的な指標の改善です。つまり「お腹の症状そのもの」だけでなく、「その人の生活全体」にポジティブな影響が及んでいることがわかります。

しかもこのプログラムは、安全で実施可能性が高く、多くの参加者が「満足」や「他の人にも勧めたい」と回答しています。これはIBSのように長期にわたり付き合う必要がある症状にとって、とても重要なポイントです。なぜなら「安全で、生活に無理なく取り入れられる方法」であることは、継続の大前提だからです。

この論文をお勧めしたいのは、「薬や食事制限だけに頼らない選択肢を探している人」にこそです。IBSは、食事、心理的ストレス、生活習慣が複雑に絡み合うため、アプローチも多面的であるほど良い結果につながります。瞑想やヨガは、その中で「自分自身で調整できる力」を育てる手段となります。特にオンラインで受けられるという点は、距離や移動の制約を取り払い、日常に溶け込ませやすい利点がありますよね。

もちろん、この研究には「主要指標での有意差がなかった」という限界がありますが、それは「効果がない」という意味ではなく、「期間や評価方法を工夫すれば、もっとはっきり差が出る可能性がある」ということとも言えます。実際、副次的効果は明確で、生活の質を改善するだけでも十分な価値があるのではないでしょうか。

 下記、研究の要約まとめです。

Meditation and Yoga for Irritable Bowel Syndrome: A Randomized Clinical Trial

D'Silva, Adrijana PhD1; Marshall, Deborah A. PhD1,2; Vallance, Jeff K. PhD3; Nasser, Yasmin MD, PhD4,5; Rajagopalan, Vidya MHA4; Szostakiwskyj, Jessie H. MSc6; Raman, Maitreyi MD, MSc1,4,5. Meditation and Yoga for Irritable Bowel Syndrome: A Randomized Clinical Trial. The American Journal of Gastroenterology 118(2):p 329-337, February 2023. | DOI: 10.14309/ajg.0000000000002052

【タイトル】
過敏性腸症候群に対する瞑想とヨガ:無作為化臨床試験


【背景】
過敏性腸症候群(IBS)は腸と脳の相互作用が乱れることで起こる慢性的な消化器疾患で、腹痛や便通異常だけでなく、不安やうつ症状、生活の質の低下を伴いやすいです。ストレス応答の異常が症状悪化に関与しており、心身相関を整える介入が有効と考えられています。従来、対面のヨガはIBS症状やQOL改善に有効とされてきましたが、オンラインでの有効性と安全性は十分に検証されていません。


【瞑想について】
瞑想は呼吸や意識を整えることで、自律神経や情緒の安定を促し、ストレス反応を抑制する効果が期待されます。本研究では、AUM(OM)詠唱や呼吸観察といった瞑想要素がヨガプログラムに組み込まれました。


【ヨガと瞑想について】
本研究で行われたのは、Isha財団が開発した「Upa Yoga」に基づくハタ・ヨーガです。首や関節の回旋運動、ヨガナマスカーラ、片鼻呼吸、AUM詠唱、呼吸観察などが含まれ、心身を包括的に整える構成になっています。これらは交感神経の活動を下げ、副交感神経を高め、脳-腸軸のバランス改善に働きかけます。


【補足:Isha財団とIsha Yogaについて】
Isha財団は、インドのヨギでありスピリチュアル指導者のサドグル(Sadhguru)によって設立された非営利組織です。世界中でヨガプログラム、瞑想指導、社会活動、環境保全プロジェクトを行っており、本部は南インド・タミルナードゥ州のコインバトールにあります。Isha Yogaは、古典的ヨガの技法を現代生活に合わせて体系化したもので、身体を整えるアーサナや呼吸法、瞑想を組み合わせ、心身のバランスを促すことを目的としています。本研究で用いられた「Upa Yoga」もIsha Yogaの一部で、短時間で行える動きと呼吸を通して日常の活力と落ち着きを高めるプログラムです。


【過敏性腸症候群について】
IBSは腹痛、膨満感、下痢や便秘などが慢性的に続く疾患で、世界人口の約10〜15%が罹患します。原因は明確ではありませんが、ストレスや心理的要因が症状の増悪に強く関与します。


【ヨガと瞑想、過敏性腸症候群との関係性とは?】
ヨガや瞑想は、ストレス軽減、自律神経調整、HPA軸(視床下部-下垂体-副腎軸)の機能改善を通して脳-腸軸を整えるとされます。これにより腹部症状の軽減やQOL向上が期待できます。IBSは薬物療法だけでは完全にコントロールしにくいため、補完療法としてのヨガ・瞑想は注目されています。


【方法】
カナダ全域から18〜70歳のIBS患者79名を、オンライン8週間のヨガ介入群(週1回60分+自宅練習)とアドバイスのみの対照群に無作為に割り付けました。主要評価項目はIBS症状重症度スコア(IBS-SSS)の50点以上の改善、副次的評価項目はQOL、疲労感、ストレス、不安、抑うつ、自己への思いやりなど。実施可能性、安全性、満足度も調査しました。


【結果】
介入群ではIBS-SSSが有意に減少(平均-54.7点、p=0.028)し、37%が臨床的改善を達成しましたが、対照群との差は統計的有意には至りませんでした。QOL、疲労、知覚ストレスでは介入群が有意に改善しました(p<0.05)。安全性は高く、有害事象は報告されず、満足度も高水準でした。


【考察】
オンラインヨガはIBS患者にとって安全かつ実施可能で、症状やQOLの改善に役立ちます。ただし主要評価項目では対照群との差は有意でなく、プラセボ効果の影響も考えられます。今後は試験期間延長や症状別サブグループ解析が必要です。


【結論】
オンラインで提供される瞑想とヨガは、IBS症状の軽減と生活の質向上に寄与し、安全で実行可能な介入です。主要指標での有意差は見られませんでしたが、心理的・身体的な副次的効果は期待できると考えられます。

引用文献は下記よりご覧下さい.

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