Study
ヨガが脳の健康に及ぼす効果とは?
ヨガが脳の健康に及ぼす肯定的な影響について、非常に興味深い論文をご紹介します。
(現在の文献に基づく系統的レビューを行った論文です)
ヨガの実習が、海馬や前頭前皮質など、「記憶」「情緒調節」「意識」「注意制御」に関わる重要な脳領域にプラスの影響を与える可能性があることは、ヨガが心身の健康維持にどのように寄与するかを理解する上で重要な知見です。
「加齢に伴う認知機能の低下や神経変性疾患のリスクを減らす可能性」が示唆されている点は、特に日本のような高齢化社会において、健康寿命の延伸や生活の質の向上に寄与する可能性を秘めています。
ヨガが身体的な活動と心の鍛錬を組み合わせた総合的なアプローチであることが、その効果の根底にあると考えられます。
しかし、これらの結果をもとに実際の健康への応用を考える場合、さらに多くの研究が必要です。
特に、どのようなタイプのヨガが最も効果的か、どの程度の頻度や期間が必要か、個人差はどのように影響するかといった点が、具体的な指針を提供するために解明されるべき点だと思います。
「ヨガ」という言葉が指す領域があまりにも広いため、意外とこのあたりがフワフワしているんですよね。
全体として、ヨガと脳の健康に関するこの論文の結果は、ヨガが身体だけでなく心と脳にも深い影響を与える可能性があることを示唆しており、そのメカニズムや効果をさらに深く理解し、日常生活に取り入れる方法を探求するための出発点となり得ますね。
下記、研究の要約まとめです。
Yoga Effects on Brain Health: A Systematic Review of the Current Literature
Neha P. Gothe,a,* Imadh Khan,a Jessica Hayes,b Emily Erlenbach,a and Jessica S. Damoiseauxb
Guest Editor (s): Ozioma Okonkwo and Henriette van Praag
Brain Plast. 2019; 5(1): 105–122.
Published online 2019 Dec 26. Prepublished online 2019 Nov 5. doi: 10.3233/BPL-190084
【研究背景】
ヨガはアメリカで成人が行う最も人気のある補完的健康アプローチの一つです。身体のポーズ、呼吸法、瞑想を組み合わせた練習は、独特の全身的な体験を提供します。最近では、身体的健康だけでなく、精神的健康への利益にも注目が集まっています。特に、ヨガが脳の構造と機能に及ぼす影響に関する科学的証拠が増えてきています。
【手法】
この研究は系統的レビューとして実施されました。MEDLINE、PsychINFO、PubMed、Indian Council of Medical Research、Cochraneなどのデータベースを用いて、ヨガの練習が脳の健康に与える影響について検討した研究を集めました。対象となったのは、MRI、fMRI、SPECTを使用して脳の構造や機能、脳血流を評価した研究です。
【対象者】
レビューされた11の研究では、ヨガを実践する成人や高齢者が対象とされました。これらの研究は横断的研究や介入研究であり、ヨガ経験者と非経験者を比較するもの、またはヨガの介入による前後比較を行うものが含まれます。
【結果】
ヨガの練習は海馬、扁桃体、前頭前皮質、帯状回、デフォルトモードネットワークなど、脳の特定の構造や機能に肯定的な影響を与えることが示されました。これらの領域は、記憶、情緒制御、注意、自己意識に関わる重要な機能を担っています。
【考察】
ヨガが脳の健康に及ぼすこれらの肯定的な影響は、ヨガが単なる身体運動以上のものであることを示唆しています。身体のポーズ、呼吸法、瞑想の組み合わせが、脳の構造と機能を改善し、神経変性の進行を遅らせる可能性があります。
【結論】
ヨガは、加齢に関連する認知機能の低下や神経変性疾患のリスクを軽減する可能性があることから、健康な脳の維持に貢献する可能性のある有益な練習であると結論付けられます。この系統的レビューは、ヨガが脳の健康に及ぼす潜在的な利益を示し、将来の研究の基盤を提供しています。
引用文献は下記よりご覧下さい.
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