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136:太ることの基準
ヨガをしているとよく聞く言葉の一つに「あるがままを受け入れる」というものがあるわけなのですが、先日「太ることもあるがままを受け入れた結果の一つでは?」というなんとも鋭いご質問を頂戴しました。
「どんな見た目の自分でも受け入れられる人であれば、太っていても何の問題もないのではないか?」ということなんですけども、自分の中には元々“ヨガをしていると太らないのが当たり前”というステレオタイプな一面があったな…と気が付かされました。
インドのセラピー施設に居た時には、“肥満セクション”(本当にこんなヘンテコな名前のセクションだったのですが、医師によって程度が軽いと診断された心身症の患者さんが集まる生活習慣改善部門です)を太った教授が指導している光景を見て最初は「なんのこっちゃ…」と思っていましたが、学びを深めていく内に「まぁ、そんなもんか」となっていったわけです。もちろんこれは“病気しない”ということが大前提の話なんすけども
僕の知っている限りでは、別にヨガもアーユルヴェーダも理由なく「痩せるべき」とは言ってないんですよね。むしろアーユルヴェーダでは生来の体質が大まかに「瘦せ(細/小)型」「標準(グラマラス)型」「骨太(太/大)型」の3つに分類されると考えており、その体質ごとのバランスが異なると考えてきました。なので、人によっての「太ってしまった」の基準が異なるわけです。
きっと多くの方にとって、太るという認識は、その時代や文化での審美的要素が大きく影響しているんじゃないかなと思います。体の線が細い女性を見た時に「細くてお綺麗ですね」なんて思ったことはありませんか。僕がインドの教授を太っていると思っていたのも、日本寄りの審美的観点が大きかったんじゃないかなと思います。
ここで何が言いたいかといいますと、「あるがままを受け入れる」為に「本来の自分の体を知ること」がとても大事になってくるんじゃないかなということです。周りと自分を比較することは悪いことではないですが、正しい基準ではないことも多くありますよね。
大学院時代の9割が座学だったのですが、その中でも2年間通しで必須科目だったのが解剖生理学でした。看護師になる為の勉強と同レベルの量を叩き込まれてきたわけですが、当初「医療の仕事をするわけでないのに、こんなに学ぶ必要があるのか?」という生意気な質問をした僕に対して、「自分の体を知るための基礎知識だから普通でしょ」と回答をされハッとさせられたのです。
人体の構造を知ることは何も特別な専門だから必要というわけではなく、自分の体のことは自分で知っておいたほうが良くないかということなのです。勝手に呼吸してくれたり、食べ物を消化吸収してくれたりしているので、普段はほったらかしにしてしまう自分の体だと思いますが、ちょっと理解してあげようと本を読んでみたり、実際に耳を傾けてみる時間をつくるのもお勧めです。
Sahanaメルマガ vol.289(2022年1月)より