Mail Magazine
055:アメリカン・コーヒー
珈琲が好きでよく飲んでいるのですが、僕の中で珈琲は飲み物というよりも「軽食」にカウントしているため、無糖のカフェラテやカプチーノをよく飲んでいます。なのでブラックはあまり頼まないので、今まで知らなかったのですが、「アメリカン」って、「浅く焙煎した珈琲」のことを指すんですよね。きっと僕以外にもアメリカンと聞くと薄い珈琲を想像してしまう方もいらっしゃると思うのですが、エスプレッソにお湯を注いで薄くしたものが「アメリカーノ」です(珈琲を薄めて飲むアメリカ人を小馬鹿にした言葉らしいのですが、ただの珈琲の飲み方で人を馬鹿にしようなんて、なんだか可愛い発想じゃないですか)。
この浅煎りのアメリカン・コーヒーが誕生したきっかけが、「ボストン茶会事件(ティー・パーティ)」でして、争いごとのわりに名前が楽しそうなので、歴史の授業が嫌いだった方も、なにとなく覚えていませんか?当時、イギリスから紅茶の輸入に対して重税をかけられたアメリカ人が、オランダから茶を密輸入していたのですが、それもイギリスに厳しく取り締まられた為、イギリス商船を襲って、積んであった茶箱をボストン湾に投げ捨て、海をお茶で染めた事件です。
「ボストン湾をティー・ポットにする」と叫びながら300箱以上の茶箱を投げ捨てたようですが、この字面だけ見ると、とてもファンシーな事件ですね…。そんなことをされたイギリスは、ボストン湾を閉鎖するという強行措置を取りまして、アメリカ人はそれなら紅茶なんか飲むかと、代わりに浅く焙煎した珈琲を飲んだと言われています(紅茶の代わりに浅煎り珈琲で納得できたアメリカ人も凄いと思うんですけども)。
今でも、紅茶と言えばイギリスのイメージがパッと浮かんでくる方も多いかと思います(インドをすぐさま連想された方はかなりの紅茶好きですね)。そんなイギリスでも、紅茶(チャ)が広まる以前は、もっぱら珈琲が飲まれていたようで、特に街のコーヒーハウスは男性の社交場となっていました。なので、コーヒーハウスに行くことのできない女性たちの間でティーが飲まれ、そのティー文化が浸透、発展していくとともに女性たちのためのティーガーデンが造られたのです。
そして、「なにやら女性がたくさん集まってティーを楽しんでいるらしい」との噂を聞いた男たちは、男女の出会いを求めてティーガーデンへ足を運ぶようになり、街のコーヒーハウスは次第に廃れていったという…なんとも色のある事情でティーが主導権を握ったような話ですね。その後は、結局、アルコール提供のないティーガーデンから男性は離れていったので、ティーガーデンも姿を消し、家庭にアフタヌーンティーという風習が残ったそうです。
珈琲について書いていたつもりが、次第に話が紅茶になってしまいまして、このままだと前回に続いて長いメルマガになってしまいそうなので、紅茶やらお茶やらの話はまた次回のメルマガにて書こうかと思います。
それにしても最近の珈琲人気と言えばいいのでしょうか、新しいカフェや焙煎店は次々と出来ていますよね。前回のメルマガに出てきたカカオもそうですが、珈琲豆も生産者が豊かになりづらい作物の一つだと思いますので、現地の農家さんのことまで考えているお店で珈琲を楽しみたいなと思います。皆様のお勧めのお店がありましたら、是非ともお教えくださいませ。
Sahanaメルマガ vol.182(2021年3月)より