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Mail Magazine

045:動作と感覚

普段あまり電車に乗らないのですが、先日久しぶりに利用しまして、たまに乗る電車はなんだか楽しいですよね。“たまに”とか、“ほどほどに”って、とても大事だなぁと(リモートワークになられた方は、うんうんと頷いていそうですね)。僕が見た目のわりに肩幅があるのか、それとも僕自身の体の使い方が下手なのか、混雑時にはよく人と肩がぶつかってしまうのですが、最近はソーシャルディスタンスのおかげで快適なので、今後もずっとこの距離感が続けばいいのになぁと思っております。



混んでない状況といえども、人とぶつかりやすい方々はいるみたいで、そんな様子をよく見かけるのは大きなカバンを背負った学生の子たちです。そういえば自分が高校生の頃も、毎日大きな鞄を背負って電車に乗っていたので、度々鞄をぶつけてしまっていたサラリーマンの方々には申し訳ないと思っています…。大人になると、あんまり大きな鞄を持つ機会はないと思いますが、旅行に行かれる際には、キャリーケースと一緒にスムーズに行動できているでしょうか(こういう機会にバリアフリーの大事さを身をもって知りますよね)。ちなみに僕はキャリーケースでよく踵を負傷します…。



キャリーケースの話だけでなく、休日ドライバーの運転が危うかったり、気まぐれで料理をしてくれた夫のせいで逆に洗い物が増えたりと、普段使わないものって、時々使う程度ではなかなか慣れないですよね。なぜかというと、動作することによって脳が反応して、より効率よく動けるために修正を重ねる作業が必要だからなのですが(ピアノの練習だったり、縄跳びの練習もそうですね)、驚くことに脳は“動かしている手”だけでなく、その手が持つ“道具”にまで意識が広がるのです。



脳に電極をつけたサルの実験では、サルは熊手を使って、手の届かないもの、特においしいものを引き寄せることをすぐに覚えます。熊手を使うのがうまくなると、手が動くのを追跡する脳の部位が、手だけでなく熊手にまで対象を広げるのです。その道のプロは「まるで道具を体の一部のように」と比喩されますが、本当にその人の頭の中では“体の一部”になるようです。このことが、「動作が知覚を形成する」という主張の根拠にもなっているみたいですね。



いつも仕事で使う道具や工具であったり、包丁やモップなど、実は皆さんも無意識的にそれらを“体の一部”として脳が感じているかもしれません。最も日常的なところだと、意識することなく箸をとても器用に使われているのが、そうですね。とかいろいろ考えると、いつもの動作が不思議な感覚になりそうです。好きな人と食事をするときには、食べ物がうまく口に運べなかった経験なんて、ございませんか(その経験とともに、当時の熱量も是非とも思い出してみて下さい…)。今夜の食事は、すこし手元を意識してみると面白いかもしれませんね。


Sahanaメルマガ vol.162より(2020年12月)

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