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複数の病気を持つ高齢者が体験した椅子ヨガとは?

複数の病気を持つ高齢者が体験した椅子ヨガとは?
記事作成日
2025年6月20日

「椅子ヨガ」という言葉を、皆さんはどれほど馴染み深く感じるでしょうか。

ヨガというと、マットの上でポーズをとる若々しい姿を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、「ヨガは年齢や身体能力の限界を越えて、人の暮らしに寄り添う術になりうる」ということを教えてくれる論文をご紹介します。

この論文では、65歳以上で複数の慢性疾患(いわゆるマルチモビディティ)を抱える方々に、12週間の椅子ヨガプログラムを体験してもらい、その実感や感想を丁寧に拾い上げています。

驚いたのは、「症状が多いからといって健康を失っているわけではない」と話す参加者が多かったこと。高齢になっても、むしろ30代から健康に苦しんできた人もいて、病の歴史は“年齢”では測れないということが見えてきます。

そんな彼らにとって、椅子ヨガは「身体を動かすためのツール」であると同時に、「自分自身と対話する時間」でもありました。特に呼吸に意識を向けること、静けさの中で自分の内面に耳を澄ますことが、「初めて痛みがないと感じた」「不安で眠れなかったけれど、今はヨガの呼吸で眠れるようになった」というような深い変化を生んでいるんです。

もちろん全員に強い効果があったわけではありません。ですが、このプログラムが「続けてみたい」と思わせるだけの手応えをくれたという事実は、なによりも尊いことかもしれませんね。

研究の最後で印象的だったのは、ある参加者の言葉です。「今の私には、これが必要だった(“It’s not all about relieving the pain, but it’s like now – you know, it doesn’t, not all the time, it doesn’t actually make my condition better, but it makes me feel better. It makes me feel better.”)」と。薬を飲まずとも、少しの動きと呼吸だけで自分を整えられるというのは、まさにヨガが持つセラピー的効果の証なのかもしれません。

たとえ椅子に座ったままでも、僕たちの心と身体は、静かにしなやかに変わっていけるみたいです。

 下記、研究の要約まとめです。

Perceptions and experiences of chair-based yoga by older adults with multimorbidity - a qualitative process evaluation of the Gentle Years Yoga randomised controlled trial

Ward, L., Tew, G.A., Wiley, L. et al. Perceptions and experiences of chair-based yoga by older adults with multimorbidity - a qualitative process evaluation of the Gentle Years Yoga randomised controlled trial. BMC Geriatr 25, 152 (2025). https://doi.org/10.1186/s12877-025-05782-3


【タイトル】
複数の慢性疾患を持つ高齢者による椅子ヨガの認識と体験──Gentle Years Yoga 無作為化比較試験の質的プロセス評価


【背景】
高齢化が進むイギリスでは、65歳以上の人口が急増しており、それに伴って複数の慢性疾患(マルチモビディティ)を抱える人々が増えています。医療現場では、薬に頼らず、個人に合わせた「非薬物的アプローチ」の重要性が高まっており、ヨガがその一つとして注目されています。特に椅子に座って行えるヨガ(椅子ヨガ)は、身体の可動域に制限がある高齢者でも取り組みやすく、安全で有効な方法として期待されています。


【慢性疾患とは?】
慢性疾患とは、長期にわたって持続する健康上の問題で、たとえば関節炎、高血圧、心疾患、糖尿病、うつ病などが含まれます。こうした疾患が2つ以上重なる状態を「マルチモビディティ」と呼び、日常生活の質や医療ニーズに大きな影響を与えます。


【椅子ヨガとは?】
椅子ヨガは、床に座ることが困難な人でも安心してできるように設計されたヨガの一種です。椅子に座ったまま、あるいは椅子を支えにしてポーズをとり、呼吸法やリラクゼーションを組み合わせながら心身のバランスを整えます。


【高齢者と椅子ヨガの関係性について】
高齢者の多くは、健康維持や症状の軽減、孤独感の緩和などを目的に運動や活動を模索していますが、激しい運動は心身に負担を与えることもあります。その点、椅子ヨガはやさしく無理のない動きが中心で、痛みや疲労に配慮しながら、自律的に健康管理を行える手段として注目されました。


【方法】
本研究では、イングランドとウェールズに住む65歳以上の高齢者240人が、12週間の椅子ヨガプログラムか通常ケアのいずれかに無作為に割り当てられました。そのうち25名に対してインタビューを実施し、彼らの健康状態、ヨガに対する印象、実施中およびその後の変化について深く掘り下げました。クラスの観察やフィールドノートも併用し、質的分析を行いました。


【結果】
参加者の年齢は66歳から91歳で、平均年齢は74歳でした。抱えていた疾患は平均で4.5個にのぼり、ヨガ体験の感想は人それぞれでした。「健康的な老い」「運動とヨガの違い」「多面的な健康ツールとしてのヨガ」「継続的な実践パターン」という4つのテーマが浮かび上がりました。ヨガの効果については、無反応な人から人生を変えるような効果を感じた人まで幅広く、呼吸と動作の統合が「身体だけでなく心にも効く」と多くの参加者が述べていました。


【考察】
参加者の多くが「年齢」ではなく「健康状態」に応じたヨガのクラス設定が望ましいと感じており、ヨガを「運動」とは異なる内的実践と捉えていました。呼吸法が痛みのコントロールや睡眠の質の向上、ストレス軽減に役立ち、ある人は「薬を使うよりもヨガの呼吸法の方が効く」と話していました。また、自宅でも続けやすく、個別のニーズに合わせて柔軟に取り組める点も高評価でした。


【結論】
椅子ヨガは、複数の疾患を持つ高齢者にとって、安全で柔軟な非薬物的ケアの選択肢になり得ます。その効果は個人差がありますが、「身体の痛みが減った」「不安が和らいだ」「眠れるようになった」といった声が多く聞かれました。年齢よりも“健康課題”に応じて対象を設定することで、より多くの人にとって有効な介入となる可能性があります。

引用文献は下記よりご覧下さい.

もし、掲載内容と論文に誤りがございましたらご連絡いただけると幸いです。

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