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高齢女性の不眠と血圧を改善するヨガ療法

高齢女性の不眠と血圧を改善するヨガ療法
記事作成日
2025年8月7日

眠れない夜が続くと、翌朝の目覚めだけでなく、一日中どこかぼんやりしてしまったり、些細なことでイライラしたり、心にも身体にもじわじわと疲れがたまっていきますよね。とくに年齢を重ねた女性にとっては、眠れないという状態が、血圧の上昇や心臓への負担につながることも少なくありません。

今回ご紹介するのは、南インドのケララ州で行われた研究です。60〜70歳の女性を対象に、12週間ヨガを続けたところ、不眠の症状が明らかに軽減し、さらには血圧も下がったという、非常に興味深い内容です。

この研究の良いところは、難しいポーズを競うようなヨガではなく、「息を感じる」「ゆっくり動く」「静かに座る」といった、誰にでもできるやさしい実践が中心であった点です。参加者の多くはヨガ初心者で、それでも毎朝60分、週に6日コツコツと続けました。導入時にはワークショップがあり、その後も専門の指導者が丁寧にリードし、誰一人脱落することなく、最後まで取り組めたのです。

不眠重症度のスコアは、平均で5ポイント以上も改善。これは“重度”から“中等度”へと下がる、臨床的にも意味のある変化です。そして血圧も平均で10mmHg近く低下しており、薬を使わずにこれだけの効果が見られたというのは、驚きとともに希望を感じる結果でした。

興味深いのは、これらの変化が「年齢や経済状況、教育歴」に関係なく見られたということです。つまり、どんな背景を持っていても、日々の暮らしの中に少しの時間をつくって、自分の呼吸に意識を向け、ゆっくり身体を動かすことが、不眠や高血圧といった問題の緩和に繋がる可能性があるのです。

僕たちは、眠れない夜にこそ「戦わず、ゆだねる」という柔らかさが必要なのかもしれません。ヨガは、その“ゆだねる”感覚を丁寧に育ててくれる時間です。この研究は、そんなヨガの力を科学的に示してくれた貴重な例だと感じます。

「眠れない夜を、静けさを感じるための時間に─」自分と向き合う習慣としてのヨガ、始めてみてはいかがでしょうか。

 下記、研究の要約まとめです。

Effect of Yoga Therapy on Insomnia Severity and Systolic Blood Pressure in Aged Women: A 12-Week Intervention Study Conducted in Kerala

Mathew D, Rangasamy M (March 29, 2024) Effect of Yoga Therapy on Insomnia Severity and Systolic Blood Pressure in Aged Women: A 12-Week Intervention Study Conducted in Kerala. Cureus 16(3): e57169. doi:10.7759/cureus.57169

【タイトル】
高齢女性における不眠重症度と収縮期血圧に対するヨガ療法の効果:ケララ州で実施された12週間の介入研究


【背景】
不眠症は年齢を重ねるほどに増加し、特に女性に多く見られます。加齢やホルモンの変化、慢性的な病気、社会的要因が絡み合って、睡眠障害を引き起こしやすくなります。不眠は高血圧や心血管疾患、認知機能の低下といった深刻な健康問題と密接に関連しており、特に高齢女性にとっては重要なケア対象です。薬物療法もありますが、副作用や長期的な依存への懸念から、非薬物的なアプローチの関心が高まっています。その中で注目されているのが、ヨガ療法です。


【ヨガとヨガ療法について】
ヨガはインドの伝統に基づき、身体のポーズ(アーサナ)、呼吸法(プラーナーヤーマ)、瞑想などを組み合わせた総合的な実践です。現代では、個々の健康課題に合わせた“ヨガ療法”として応用され、心身へのアプローチとして注目されています。不眠や高血圧に関しても、呼吸を整え、自律神経に働きかけることで効果が期待されています。


【不眠重症度と収縮期血圧について】
「不眠重症度」は、入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒などの症状がどれほど深刻かを測る指標で、Insomnia Severity Index(ISI)という質問票によって数値化されます。また「収縮期血圧(SBP)」は、血圧の上の値として知られ、ストレスや交感神経の緊張などとも関係が深い生理指標です。


【ヨガ療法と不眠重症度、収縮期血圧との関係性とは?】
過去の研究では、ヨガが自律神経を整え、ストレス反応を和らげることで、睡眠の質向上や血圧低下に寄与することが報告されています。とくに高齢者においては、薬を使わずに心身のバランスを回復する手段として、ヨガ療法が注目されています。本研究では、不眠症状のある60~70歳の女性を対象に、12週間のヨガ実践によって、ISIスコアと収縮期血圧がどのように変化するかを調べました。


【方法】
対象は、ISIスコアで不眠と判定された高齢女性30名で、ヨガ初心者が選ばれました。最初に1日集中の導入ワークショップが行われ、その後、12週間にわたり週6回、朝60分のヨガセッションを継続しました。

プログラムには、呼吸意識、準備運動(パワンムクタアーサナ)、複数のアーサナ、リラクゼーション、呼吸ストレッチ、各種プラーナーヤーマ(バストリカ、ナディショーダナなど)、視線集中のクリヤ、マントラ、ヨーガ・ニードラなどが組み込まれていました。セッションは経験豊富な指導者によって指導され、参加者全員が途中離脱せずに完遂した点も特徴的です。


【結果】
介入前後で比較したところ、不眠重症度スコア(ISI)は平均で5.17ポイント減少し、初期の23.03から17.87へと改善されました。この変化は統計的に非常に有意でした(p<0.001)。また、収縮期血圧も平均で9.67mmHg低下し、140.33から130.67へと下がりました。こちらも統計的に有意な変化でした(p<0.001)。


【考察】
本研究は、ヨガ療法が高齢女性の不眠と高血圧に同時に作用する可能性を示唆しています。ヨガに含まれる呼吸法や瞑想は、副交感神経の活動を促進し、ストレスによる交感神経優位の状態を和らげると考えられます。また、マインドフルネス的な自己観察が入眠前の思考の過活動を抑える可能性もあります。さらに、血圧の改善は内皮機能の改善やリラクゼーション反応とも関係していると考えられています。

一方で、本研究にはコントロール群が存在しないため、因果関係を厳密に確定することは難しいという限界があります。今後はランダム化比較試験などの精緻な研究が必要とされます。


【結論】
12週間にわたるヨガ療法は、高齢女性の不眠重症度と収縮期血圧を有意に改善する効果があることが示されました。今後の研究によって、この効果の持続性や、他の高齢者集団への一般化が検討されることが期待されます。

引用文献は下記よりご覧下さい.

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