top of page
studio Sahana logo ヨーガ ヨガ ヨガスタジオ ヨガセラピー
Study

妊娠中のうつ症状改善におけるヨガの効果──系統的レビューとメタ分析

妊娠中のうつ症状改善におけるヨガの効果──系統的レビューとメタ分析
記事作成日
2022年2月18日

妊娠中というのは、身体が大きく変化するだけでなく、心も揺れやすい時期ですよね。嬉しさや期待の一方で、不安や孤独感、理由のない涙が出る日もあるかと思います。

そんな気持ちの波が長く続くと「産前うつ」になることがあります。実は、これは決して珍しいことではなく、国によっては3人に1人が経験すると言われています。そして、この時期のうつはお母さんだけでなく、生まれてくる赤ちゃんの健康や発達にも影響することが分かっています。

では、薬に頼らず、心を少しでも軽くする方法はあるのでしょうか。この論文が示してくれたのは、その一つの答えは「ヨガ」です。

この研究は、世界中で行われた6つのランダム化比較試験をまとめ、妊娠中のヨガがうつ症状にどう影響するのかを分析したものです。

その結果、ヨガをしたグループは、そうでないグループに比べて明らかにうつ症状が軽くなっていました。そして面白いのは、もともとうつ症状がある妊婦さんだけでなく、特に症状がない妊婦さんでも、ヨガをすることで気分がさらに安定していたことです。

さらに、ヨガの内容によって効果に差があることも分かりました。体を動かすことだけを中心にした「運動型ヨガ」よりも、呼吸法や瞑想、深いリラクゼーションを組み合わせた「統合型ヨガ」のほうが、はっきりと効果が高かったのです。

これは、心の状態に直接アプローチできる要素が加わることで、単なる運動以上の効果が生まれていると考えられます。

僕がこの研究を面白いと思うのは、「心の安定」がただの気分の問題ではなく、出産や育児のスタートにも関わる大事な要素だということを改めて感じさせてくれる点です。

妊娠中のヨガは、体をしなやかに保つだけでなく、呼吸を整え、心を静める練習でもあります。忙しい頭の中を一旦休ませ、「今ここ」に意識を置くこと。それが、出産の時にも、赤ちゃんとの毎日にも、きっと役立ちます。

だからこそ、この研究結果は多くの妊婦さんに知ってほしいなと思います。もし妊娠中に少しでも気持ちが沈む日があったら、あるいは出産への不安が募るときがあったら、ヨガマットの上でゆっくりと呼吸をしてみてください。

 下記、研究の要約まとめです。

Yoga for prenatal depression: a systematic review and meta-analysis

Hong Gong, Chenxu Ni, Xiaoliang Shen, Tengyun Wu & Chunlei Jiang
Faculty of Psychology and Mental Health, Second Military Medical University, Shanghai, People's Republic of China.
BMC Psychiatry volume 15, Article number: 14 (2015)

【タイトル】
妊娠期うつ病に対するヨガの効果:系統的レビューとメタ分析


【背景】
妊娠中のうつ症状(産前うつ)は、母体だけでなく胎児の心身の健康にも深刻な影響を与えます。発生率は国や地域により6〜38%とされ、出産後うつの最大のリスク因子でもあります。薬物療法は有効性が示される一方で、安全性への懸念や副作用の問題があり、多くの妊婦が使用を控えています。そのため、心理療法や補完代替医療(CAM)が注目されており、その中でもヨガは心身の調和を図る実践として世界的に普及しています。近年の研究では、ヨガが妊娠期のストレス軽減や免疫機能の向上、分娩の質の改善にも寄与する可能性が示されています。


【妊娠期うつについて】
妊娠中に発症するうつ症状で、気分の落ち込みや意欲低下、睡眠障害などが現れます。産後うつの発症リスクを高め、胎児にも低出生体重や発達遅延、情動反応の異常などをもたらすことがあります。


【統合型ヨガについて】
身体的なポーズに加えて、呼吸法(プラーナーヤーマ)、瞑想、深いリラクゼーションなどを組み合わせたヨガスタイルです。単なる運動効果に加え、精神面への直接的アプローチを行います。


【妊娠期うつ、統合型ヨガとヨガの関係について】
ヨガは、肉体的アプローチ(アーサナ)と精神的アプローチ(呼吸法・瞑想)を統合できるため、妊娠期うつのように身体と心が複合的に影響し合う症状に有効です。特に統合型ヨガは、身体的ストレッチによる血流促進や筋緊張の緩和に加え、呼吸法や瞑想による自律神経調整や情動コントロールを同時に行える点で優れています。


【方法】
2014年7月までに発表されたランダム化比較試験(RCT)を対象に、PubMed、Embase、Cochrane Library、PsycINFOで系統的検索を実施。妊娠中の女性を対象にヨガ群と比較群(標準的妊婦ケア、他の運動、社会的支援など)を比較した研究を抽出。ヨガは「運動中心型」と「統合型」に分類し、うつの有無別にもサブ解析を実施しました。


【結果】
最終的に6件のRCT(計375人)が対象となりました。全体解析では、ヨガ群は比較群に比べて有意にうつスコアが低下(SMD=-0.59, 95%CI -0.94〜-0.25, p=0.0007)。サブ解析では、うつ症状あり群(SMD=-0.46, p=0.04)とうつ症状なし群(SMD=-0.87, p<0.00001)の双方で有意な改善を認めました。ヨガの種類別では、統合型ヨガは有意に改善(SMD=-0.79, p<0.00001)した一方、運動中心型ヨガでは有意差は得られませんでした(SMD=-0.41, p=0.17)。


【考察】
ヨガは妊娠中のうつ症状軽減に有効であり、特に統合型ヨガは運動中心型より効果が高い可能性があります。統合型では心身両面に働きかけることで、うつ症状の緩和に加え、出産準備や分娩時の適応にも寄与すると考えられます。運動中心型でも一定の効果は示されますが、精神面への直接的介入が不足している可能性があります。


【結論】
妊娠期のヨガ実践は、うつ症状の有無に関わらず有益であり、特に統合型ヨガが推奨されます。今後は標準化されたヨガプログラムを用いた大規模RCTが望まれます。

引用文献は下記よりご覧下さい.

もし、掲載内容と論文に誤りがございましたらご連絡いただけると幸いです。

Copyright ©2018-2025 studio Sahana All Rights Reserved.

studio Sahanaのロゴです「Sahana」というサンスクリット語は「静かなる力強さ」を意味します

〒231-0023

神奈川県​横浜市中区山下町​​112-3

ポートタワー山下町902

 

E-mail: info@studio-sahana.com

 

​​​​​

bottom of page