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うつ病に対するヨガの効果 ― 科学的根拠を整理した最新のレビューと統計分析

うつ病に対するヨガの効果 ― 科学的根拠を整理した最新のレビューと統計分析
記事作成日
2025年7月12日

うつ病に悩む人の数は、時代と共に静かに、しかし確実に増えているようです。しかも、一般的な薬やカウンセリングでは効果が感じられない人が、決して少なくないという現実があります。そんな中、この論文は「ヨガ」という古くて新しい方法に光を当ててくれました。

この研究では、うつ病と診断された成人にヨガを取り入れてもらい、その効果を科学的に確かめようとしたものです。ヨガといっても、ただ体を動かすだけではなく、呼吸や瞑想、意識の向け方など、心身をまるごと扱う「全体性のある実践」としてのヨガですね。

結果を先にお伝えすると、「ヨガは、ただ何もしないで待つよりもずっといい」ということが、データとして明確になりました。症状の重さが少し軽くなるだけでなく、実際に「寛解した」とされる人の割合も、ヨガをしていたグループの方が高かったのです。

ただし、「他の治療法と比べてヨガの方が圧倒的に効果がある」とまでは言えませんでした。薬や認知行動療法のような既存の治療に比べて、劇的な違いがあったわけではないのです。それでもなお「ヨガは十分に選択肢になり得る」と研究者の方々は伝えております。特に、標準的な治療に反応しなかった人にとっては、ヨガという選択肢があること自体が救いになるかもしれません。

この論文の良いところは、単に「ヨガはいいよ」と言って終わりにしていないところですね。どんなヨガが使われたのか、どれくらいの頻度で、どんなスタイルで実践されたのか。そういった現場で役立つ情報も丁寧に載っています。たとえば、呼吸法に重きをおいたヨガや、妊娠中の女性に向けたヨガ、生活習慣を丸ごと見直すようなプログラムまで、多様なスタイルが検討されているんですね。

僕がこの論文を勧めたいのは、うつに悩むご本人はもちろん、医療者やセラピストの方々にもです。なぜなら、この論文は「ヨガは万能ではないけれど、試してみる価値は大いにある」と科学的な裏付けをもって伝えてくれているからです。

たとえ目立った効果がなかったとしても、自分の呼吸に意識を向けたり、身体を丁寧に扱ったりすることが、日々の生活の中で「もう少しだけ、自分と共にいよう」と思えるきっかけになるかもしれません。

 下記、研究の要約まとめです。

Yoga for Depressive Disorder: A Systematic Review and Meta-Analysis

Alina Moosburner, Holger Cramer, Mirela Bilc, Johanna Triana, Dennis Anheyer
First published: 19 December 2024 https://doi.org/10.1155/da/6071055Citations: 1
Academic Editor: Jingyuan Xiong

【タイトル】
「うつ病に対するヨガ:体系的レビューとメタ分析」

【背景】
うつ病は世界中で増加傾向にある深刻なメンタルヘルスの課題であり、とくにCOVID-19以降、その有病率は顕著に上昇しています。標準的な治療としては、薬物療法や心理療法がありますが、約20〜40%の患者がこれらの治療に反応を示さない現実があります。そのような背景の中で、補完代替医療、特にヨガが持つ可能性に注目が集まっています。


【うつ症状とは?】
うつ症状とは、少なくとも2週間以上続く持続的な抑うつ気分や、日常の活動への興味・喜びの喪失を指します。これに加えて、体重の変化、睡眠障害、疲労感、集中力の低下、死にたいという思考などがしばしば伴います。


【うつとヨガの関係性について】
ヨガは、アーサナ(ポーズ)、プラーナーヤーマ(呼吸法)、ディヤーナ(瞑想)などを含む包括的な実践です。これらの要素は、単なる運動以上の効果をもたらすとされ、心理的安定やストレス緩和、神経系の調整にも寄与する可能性があります。過去の研究でも、ヨガはうつ症状を軽減させる可能性があると報告されていますが、明確な診断を受けたうつ病患者に対して効果があるかどうかはまだ不透明でした。


【方法】
この研究では、うつ病と診断された成人(18歳以上)を対象としたランダム化比較試験(RCT)を抽出し、合計24件(参加者1395人)の研究を分析対象としました。そのうち20件は統計的なメタ分析にも組み込まれました。分析では、「待機群や通常治療」といった受動的な対照群と、「他の治療法(例:心理教育や運動)」といった能動的な対照群の双方と比較されています。評価項目には、うつ病の重症度、寛解率、生活の質、安全性が含まれました。


【結果】
うつの重症度に関しては、ヨガは待機群などの受動的対照と比較して有意な短期的改善を示しました(SMD=−0.43)。ただし、心理教育や他のアクティブな治療法との比較では有意差は見られませんでした(SMD=−0.22)。寛解率では、ヨガ群の方が有意に高く、受動的対照との比較では3.2倍、能動的対照との比較でも2.04倍でした。安全性については、副作用の頻度に差はなく、ヨガは安全な介入と評価されました。


【考察】
ヨガは、受動的対照群と比較したときに、うつの重症度を軽減し、寛解率を向上させる有効な手段といえます。特に、すでに薬やカウンセリングに効果が出ていないケースにおいては、有望な補完療法として位置づけられる可能性があります。ただし、研究の質にはばらつきがあり、今後の課題として、ヨガの内容や頻度、期間を標準化し、長期的効果を追跡する研究が必要とされています。


【結論】
ヨガは、うつ病に対する安全で有望な治療法の一つとして検討に値することが明らかになりました。とくに標準治療だけでは効果が不十分な場合、ヨガを併用することで、改善の可能性が広がると考えられます。

引用文献は下記よりご覧下さい.

もし、掲載内容と論文に誤りがございましたらご連絡いただけると幸いです。

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