
Study
ヨガと自然療法が新型コロナ患者の不安と抑うつを和らげる可能性──インドでの予備研究

記事作成日
2021年12月17日
2020年より世界で爆発的に広まった新型コロナウイルスですが、今まで多くの方が感染し、闘病されております。陽性と診断された方の心理的ショックや、精神的ストレスはかなりのものではないでしょうか。
今回ご紹介する研究は、新型コロナウイルス患者が持つ不安やストレスをヨガと自然療法で緩和できないものかと調査されたものです(パイロットスタディ)。
1日60分間のヨガと自然療法を、2週間行っただけでも、不安レベルやストレスレベルが減少したと報告されています。
今後も、ヨガなどの「簡単で誰もが始められるもの」が治療中や、治療後の手助けになれば良いなと思っております。
下記、研究の要約まとめです。
Yoga and Naturopathy intervention for reducing anxiety and depression of Covid-19 patients - A pilot study
JOUR
Yoga and Naturopathy intervention for reducing anxiety and depression of Covid-19 patients – A pilot study
Jenefer Jerrin, R. Theebika, S. Panneerselvam, P. Venkateswaran, ST. Manavalan, N. Maheshkumar, K.
2021 doi: 10.1016/j.cegh.2021.100800
Clinical Epidemiology and Global Health VL 11 Elsevier 2213-3984
【タイトル】
新型コロナウイルス患者の不安と抑うつ軽減のためのヨガと自然療法介入 ― パイロットスタディ
【背景】
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)は、発症した患者の身体的な健康だけでなく、心理的・精神的な健康にも深刻な影響を与えました。過去の報告では、Covid-19患者の約半数が睡眠の質の低下、ストレス、不安、抑うつなどの精神的負担を経験していることが示されています。しかし、こうした心理的問題に対する具体的な対策や研究は限られていました。インドでは、政府が推進するAYUSH省(アーユルヴェーダ、ヨガ、自然療法などの統合医療)が、Covid-19患者の補助療法としてヨガと自然療法を導入する方針を打ち出しました。
【Covid-19/新型コロナウイルス患者について】
本研究の対象は、インド・タミルナードゥ州の三次医療病院に入院したRT-PCR陽性のCovid-19患者です。年齢は20〜65歳、軽症〜中等症で、酸素投与や人工呼吸を必要としない患者が含まれています。多くは渡航歴があり、家族内感染者も多く、入院期間は平均4日でした。
【不安とうつ病について】
Covid-19感染は、隔離や身体症状による不安の増加、そして将来や健康への懸念からくる抑うつ状態を引き起こします。本研究の開始時点で、患者の33%が境界域の抑うつ、9.2%が重度の抑うつ、40%が境界域の不安、12.3%が重度の不安を持っていました。また、45.38%の患者がCovid-19に特有の機能障害性不安を示していました。
【ヨガとの関係性とは?】
ヨガは、呼吸法、瞑想、体位法などを通して自律神経の安定やストレス低減を促し、精神的な落ち着きや前向きな感情を育みます。自然療法(ナチュロパシー)は、日光浴や蒸気吸入、塩水うがいなど自然の力を活用して身体機能を高め、心身の回復を支えます。本研究では、この2つを組み合わせてCovid-19患者の不安・抑うつ改善を目指しました。
【方法】
130名のCovid-19患者に対し、1日60分(午前7:30〜8:30)、2週間のヨガ&自然療法を実施しました。内容は、ターダーサナ、アルダカティチャクラーサナ、アルダチャクラーサナなどのアーサナ、ナーディショッディやブラーマリーなどの呼吸法、蒸気吸入、塩水うがい、日光浴などです。評価にはHospital Anxiety Depression Scale(HADS)とCorona Anxiety Scale(CAS)を用い、介入前後で比較しました。
【結果】
介入後、全患者でHADS不安スコア・抑うつスコア・CASスコアが有意に低下しました(不安p<0.05、抑うつp<0.04、CAS p<0.01)。特に介入前に重度の不安や抑うつを示していた患者は、介入後にスコアが正常範囲に改善しました。
【考察】
ヨガと自然療法の組み合わせは、Covid-19患者の精神的負担を軽減する有望な補助療法になり得ることが示されました。呼吸法やアーサナによる自律神経調整、日光浴などによる免疫機能・循環機能の向上が、ストレスや不安の軽減に寄与した可能性があります。ただし、本研究は対照群を設けていない非ランダム化試験であり、サンプル数も限られているため、さらなる検証が必要です。
【結論】
ヨガと自然療法は、新型コロナ感染患者の不安や抑うつを有意に減少させました。今後、より厳密な研究デザインで再検証することで、Covid-19患者の補助的ケアとして広く導入される可能性があります。
引用文献は下記よりご覧下さい.
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