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Study

慢性腰痛患者はヨガ・理学療法・自己管理本のどれで改善する?

慢性腰痛患者はヨガ・理学療法・自己管理本のどれで改善する?
記事作成日
2021年12月14日

腰痛って、ただの腰の痛みと思われがちですが、長く続くと生活の質や心の元気まで削ってしまいますよね。今回ご紹介するのは、そんな慢性腰痛を抱える人が「どの治療で一番改善するのか?」を、ヨガ・理学療法・自己管理本の3つで比べた研究です。

研究の面白いところは、単に「どれが効くか」ではなく、「どんな人に、どの方法が効きやすいか」を探っている点です。299人の参加者は、ほとんどが低所得で人種的に多様な地域の方々。ヨガは週1回75分のグループレッスン+自宅練習、PTは週1回60分の個別セッション+宿題、自己管理本は腰痛セルフケアのガイドブックを読むという構成でした。

結果は、ヨガ48%、PT37%、自己管理本23%が「腰痛による生活の制限が30%以上改善」という基準をクリア。つまり、ヨガもPTも自己管理本よりしっかり効いていました。そして、さらに興味深いのは「効きやすい人の特徴」です。

非喫煙、痛み止めを使っていない、働いている、高所得、抑うつやストレスが少ない、恐怖回避行動が低い、高い自己効力感…こうした条件を持つ人は改善しやすい傾向がありました。特に、痛み止めを使っている人や恐怖回避行動が少ない人は、自己管理本よりヨガやPTでの改善率が大きく跳ね上がったんです。

ヨガとPTの効果自体には大きな差はありませんでしたが、「ヨガが効きそう」と思っていた人は、やはりヨガの方が効果を実感しやすい傾向もありました。これは、治療への期待感が実際の効果を後押しすることを示しています。

この研究が教えてくれるのは、腰痛治療は“合うか合わないか”を見極めることが大切だということです。自分の生活状況や心理的な傾向を知って、それに合ったアプローチを選ぶことで、回復への道がぐっと近づきます。

ですから、もしあなたや周りの方が慢性腰痛で悩んでいるなら、「とりあえず全部試す」よりも、自分の特徴に合った方法を選ぶのがおすすめです。痛み止めを飲んでいる、または“運動しても悪化しない”と思える方なら、ヨガや理学療法に飛び込む価値は大いにあります。そして、「ヨガって自分に合いそう」と感じる方は、その直感を信じてみるのも良いかもしれません。

 下記、研究の要約まとめです。

Which Chronic Low Back Pain Patients Respond Favorably to Yoga, Physical Therapy, and a Self-care Book? Responder Analyses from a Randomized Controlled Trial

Eric J Roseen, Hanna Gerlovin, David T Felson, Anthony Delitto, Karen J Sherman, Robert B Saper, Which Chronic Low Back Pain Patients Respond Favorably to Yoga, Physical Therapy, and a Self-care Book? Responder Analyses from a Randomized Controlled Trial, Pain Medicine, Volume 22, Issue 1, January 2021, Pages 165–180, https://doi.org/10.1093/pm/pnaa153

【タイトル】
どの慢性腰痛患者がヨガ、理学療法、自己管理本に好ましい反応を示すか?無作為化比較試験における反応者分析


【背景】
慢性腰痛は世界的に多くの人が抱える健康問題であり、米国の臨床ガイドラインでは薬に頼らない治療が第一選択として推奨されています。その中でもヨガや理学療法は有効性が示されていますが、患者によって効果は異なります。この研究は「どのような患者がどの治療に効果を示すのか」という点を明らかにし、臨床現場での治療選択を助けることを目的に行われました。


【慢性腰痛について】
慢性腰痛は12週間以上続く腰の痛みを指し、生活の質や活動能力を大きく低下させます。原因が特定できない非特異的腰痛が多く、心理的要因(抑うつ、不安、恐怖回避行動)や生活背景(喫煙、低所得、失業など)も回復を妨げる要因となります。


【理学療法について】
理学療法では個別の評価に基づき、ストレッチ、筋力強化、有酸素運動、姿勢や動作の改善を目的としたプログラムを実施します。特に腰痛では、痛みによる運動回避を減らす指導や、日常生活に取り入れられる運動指導が重要です。


【ヨガとは?】
本研究で用いられたのはハタ・ヨガを基盤にした75分間のグループクラスです。ポーズ、呼吸法、瞑想、リラクゼーション、ヨガ哲学の要素を組み合わせ、自宅練習(1日30分)も推奨しました。ヨガは身体の柔軟性や筋力向上だけでなく、呼吸や意識を整えることでストレス軽減や痛み認知の変化にも働きかけます。


【方法】
ボストンの低所得・人種的多様性の高い地域から慢性腰痛の成人299名を募集し、ヨガ、理学療法(PT)、自己管理本(The Back Pain Helpbook)の3群に無作為割付しました。期間は12週間で、ヨガとPTは週1回のセッション+自宅練習を実施。主要評価指標はRoland Morris Disability Questionnaire(RMDQ)による腰痛関連身体機能の30%以上の改善としました。


【結果】
全体の39%が12週間で臨床的に有意な改善を示しました。改善率はヨガ48%、PT37%、自己管理本23%。改善しやすい特徴は、非喫煙者、痛み止めを使用していない、就業中、高所得、抑うつやストレスが低い、恐怖回避行動が少ない、高い痛み自己効力感を持つ人でした。また、痛み止め使用者と低い恐怖回避行動者は、自己管理本よりヨガやPTで大きな改善を示しました。ヨガとPTの間では全体的な効果差はなく、ヨガへの期待が高い人はヨガのほうが改善しやすい傾向が見られました。


【考察】
本研究は、患者の背景や心理的特性が治療効果を左右することを示しました。特に痛み止め使用者や恐怖回避が少ない人には、早期から構造化された介入(ヨガやPT)を行うことで改善の可能性が高まります。一方、多くの併存疾患や強い抑うつがある患者には、多職種連携や包括的介入が必要かもしれません。


【結論】
ヨガと理学療法はいずれも自己管理本より効果的であり、患者特性によって適切な治療選択が可能になります。痛み止め使用や恐怖回避行動の程度は重要な治療選択の指標となります。

引用文献は下記よりご覧下さい.

もし、掲載内容と論文に誤りがございましたらご連絡いただけると幸いです。

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