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ヨガがもたらす神経疾患への治療的価値──てんかん・脳卒中・多発性硬化症から認知症まで

ヨガがもたらす神経疾患への治療的価値──てんかん・脳卒中・多発性硬化症から認知症まで
記事作成日
2021年1月21日

神経疾患というと、発作、麻痺、しびれ、強い疲労感、そして慢性的な痛み──生活の質を大きく奪う症状ばかりが並びます。薬や手術はもちろん大事ですが、それだけでは改善しきれない領域があるのも事実です。そんな時に「補助エンジン」のような役割を果たせるのがヨガです。

この論文は、てんかんから脳卒中、多発性硬化症、アルツハイマー病、末梢神経障害、線維筋痛症まで、幅広い神経疾患に対してヨガがどのように役立ちうるかを整理しています。

例えば、薬が効きにくい難治性てんかんの患者さんが、朝晩の瞑想と週1回のヨガクラスを続けたところ、3か月以内に9割の人で発作が減少し、そのうち3割は完全に発作が消えたという報告があります。脳卒中後の患者さんでは、呼吸法と優しいポーズを組み合わせたヨガがバランスや歩行能力を改善し、「体の感覚が戻ってきた」と感じる人もいました。

多発性硬化症の研究では、6か月間のヨガプログラムが疲労感を有酸素運動と同等に軽減し、集中力も高めました。アルツハイマー病に関しては、瞑想によるストレス低減が脳内の記憶中枢である海馬を守る可能性が指摘されています。末梢神経障害や手根管症候群では、神経伝導速度の改善や握力の向上、痛みの軽減が見られ、線維筋痛症の患者さんでは、痛み、睡眠、気分、活動量まで幅広く好転しました。

もちろん、これらはまだ「可能性」を示す段階です。多くの研究は小規模で、方法の統一や長期的なフォローが不十分です。それでも、薬以外の選択肢が限られる疾患において、ヨガのように安全で費用がかからず、自分のペースで続けられる方法があるというのは、大きな希望です。

私がこの論文から感じたのは、「ヨガは特別な人の特別な健康法」ではなく、「どこに住んでいても、誰でも取り入れられる自己ケア」だということです。椅子に座ったままでも、ベッドの上でもできるポーズがありますし、呼吸法や瞑想は道具も場所も選びません。

もし神経疾患で日常生活に不便を感じているなら、医師や理学療法士と相談しながら、自分に合ったヨガを生活に少しずつ取り入れてみる価値は十分にあります。この論文は、その一歩を踏み出すための心強い後押しになるはずです。

 下記、研究の要約まとめです。

The therapeutic value of yoga in neurological disorders

Mishra, Shri K.; Singh, Parampreet1; Bunch, Steven J.2; Zhang, Ray3. The therapeutic value of yoga in neurological disorders. Annals of Indian Academy of Neurology 15(4):p 247-254, Oct–Dec 2012. | DOI: 10.4103/0972-2327.104328

【タイトル】
神経系疾患におけるヨガの治療的価値


【背景】
ヨガは約5000年前にインドで発祥し、精神と身体の統合を目的とする修行体系として発展してきました。20世紀後半からは世界保健機関(WHO)も発展途上国での普及を推進し、欧米でも補完・代替医療として広く注目されるようになっています。特に、薬物治療だけでは十分な効果が得られない患者や、副作用回避のために非薬物療法を求める人々にとって、ヨガは有望な選択肢となっています。本論文は、これまでの科学的エビデンスを整理し、神経系疾患におけるヨガの有効性を検証することを目的としています。


【神経系疾患について】
神経系疾患は、中枢神経系(脳・脊髄)や末梢神経に障害が生じることで、運動、感覚、認知、情動などにさまざまな症状を引き起こします。てんかん、脳卒中、多発性硬化症、アルツハイマー病、末梢神経障害、線維筋痛症などは代表的で、慢性化しやすく、生活の質を大きく損ないます。


【ヨガと神経系疾患について】
本論文では、複数の神経疾患におけるヨガの利用可能性が紹介されています。

てんかん:薬剤抵抗性の患者で、ヨガ瞑想を日常的に行うことで発作頻度の減少や生活の質の向上が報告されています。

脳卒中:リハビリの一環としてヨガを取り入れると、バランス能力や可動域、精神的安定の改善が見られました。

多発性硬化症:疲労感の軽減や選択的注意力の改善に効果があり、有酸素運動と同等の有効性が示されています。

アルツハイマー病:瞑想によるストレス低減がコルチゾール抑制を通じて認知機能低下の予防に寄与する可能性があります。

末梢神経障害:糖尿病性ニューロパチーや手根管症候群で、神経伝導速度や握力、痛みの改善が報告されています。

線維筋痛症:痛み、疲労、睡眠障害、抑うつなど幅広い症状に対して改善が見られ、適応的な痛み対処行動の促進にもつながります。


【方法】
著者らは、PubMed、Ovid、MD-Consult、大学図書館などから関連文献を収集し、対象疾患ごとに症例数、対照群の有無、無作為化、二重盲検、統計解析などの条件を考慮して評価しました。レビュー対象は、てんかん、脳卒中、多発性硬化症、アルツハイマー病、末梢神経障害、線維筋痛症に関する臨床試験やパイロット研究です。


【結果】
全体として、ヨガや瞑想は多くの神経疾患で生理的・心理的指標の改善を示しました。例えば、てんかん患者では発作頻度の減少、脳卒中患者ではバランスと可動域の改善、多発性硬化症患者では疲労軽減、線維筋痛症患者では痛みや睡眠の改善が報告されました。ただし、多くの研究は小規模でデザインに不備があり、結果の一般化には限界があります。


【考察】
ヨガは低コストで非侵襲的、かつ文化を超えて適用可能な補完療法として有望です。しかし、現状では研究の質にばらつきがあり、ヨガの種類や実施条件が明確に記述されていないものも多く、再現性の担保が難しい点が課題です。また、プラセボ効果や社会的交流による影響も考慮すべきです。将来的には、大規模で無作為化・二重盲検を備えた試験や、適切な評価指標の統一、長期的効果の検証が必要です。


【結論】
ヨガは、てんかん、脳卒中、多発性硬化症、末梢神経障害、線維筋痛症など、多くの神経系疾患で症状緩和や生活の質向上に寄与する可能性があります。ただし、現時点ではエビデンスの質が十分ではなく、今後の研究による裏付けが求められます。

引用文献は下記よりご覧下さい.

もし、掲載内容と論文に誤りがございましたらご連絡いただけると幸いです。

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