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大学生のうつ、不安、ストレスに対する瞑想・ヨガ・マインドフルネスの効果 ― メタ分析

記事作成日
2021年1月21日
大学や専門学校の学生生活は、自由と挑戦に満ちています。でもその一方で、課題や試験、人間関係、将来の不安などが重なって、心がすり減っていく感覚を覚える人も少なくありません。実際、毎年多くの学生が気分の落ち込みや過剰な不安、強いストレスに悩まされています。
そんな中で注目されているのが、瞑想やヨガ、マインドフルネスです。これは「特別な人がやるもの」というより、誰でも日常に取り入れられる自己ケアの方法です。呼吸を整え、体を動かし、今ここに意識を向ける。それだけで、頭の中のざわめきが少し静まり、心がゆっくりと落ち着いていきます。
この論文では、世界中の大学生や専門学校生を対象に行われた24件の研究をまとめています。分析の結果、これらの実践はうつ、不安、ストレスを中程度改善する効果がありました。特に試験期間中など、ストレスが高まる状況では効果がやや大きくなっています。つまり、「やらなきゃ!」と心が張り詰める時こそ、深呼吸や軽いヨガが効く、ということです。
ただし、注意点もあります。リラクゼーションや犬と触れ合う活動などの他の癒し系プログラムと比べると、効果の差はあまり大きくありませんでした。これは、瞑想やヨガの特別な技法そのものよりも、「自分のために時間をとる」「誰かと一緒に穏やかな時間を過ごす」といった共通の要素が効いている可能性を示しています。
また、研究の多くは質が高いとはいえず、まだ「絶対効く」と断言できる段階ではありません。学業成績への影響や、副作用があるかどうかも十分にわかっていません。でも、「集中できない」「気持ちが重い」「試験前は特にしんどい」という人には、試してみる価値がある方法だと思います。
何より、ヨガや瞑想はお金も特別な道具もいらず、数分から始められるのが魅力です。教室の隅や自宅のベッドの上でも、深呼吸や軽いストレッチ、目を閉じて自分の呼吸を感じるだけでOKです。やってみると、「あ、少し楽になったかも」という瞬間がきっと訪れます。
学生生活は長いようで短く、その間に身につけたセルフケアの習慣は、卒業後の人生でもあなたを支えてくれます。この研究は、その入り口として瞑想やヨガが十分な可能性を持っていることを教えてくれます。心が揺れる日々の中で、自分を取り戻す時間を持ってみませんか。
下記、研究の要約まとめです。
The Effects of Meditation, Yoga, and Mindfulness on Depression, Anxiety, and Stress in Tertiary Education Students: A Meta-Analysis.
Breedvelt Josefien J. F. , Amanvermez Yagmur , Harrer Mathias , Karyotaki Eirini , Gilbody Simon , Bockting Claudi L. H. , Cuijpers Pim , Ebert David D.
Frontiers in Psychiatry Volume 10 - 2019 10.3389/fpsyt.2019.00193
1664-0640
【タイトル(日本語の直訳)】
第三次教育機関の学生における瞑想、ヨガ、マインドフルネスがうつ、不安、ストレスに与える効果:メタ分析
【背景】
大学や専門学校などの高等教育に通う学生のうち、毎年7〜16%が気分障害や不安障害を経験し、さらに約30%が中等度から重度のストレスを感じています。こうした症状は放置すると診断に至るリスクや再発率を高め、学業や生活の質に大きく影響します。しかし、多くの学生はスティグマや情報不足などの理由から支援を受けていません。そこで、非スティグマ的で自己管理しやすい方法として、瞑想、ヨガ、マインドフルネスが注目されています。
【高校生のメンタルヘルス】
本研究の対象は大学生や専門学校生ですが、若年層全体に共通する傾向として、高校生の段階からすでにメンタルヘルスの課題は顕著です。思春期後期は精神疾患の初発リスクが高く、学業・人間関係・進路不安といった要因がストレスの温床になります。この時期に適切なセルフケア方法を身につけることは、大学進学後や社会人生活のメンタルヘルス維持にもつながります。
【うつや不安、ストレスについて】
うつ病は気分の落ち込みや意欲の低下、不安障害は過剰な心配や緊張状態が続く症状を指します。ストレスはこうした症状の背景となり、心身に負荷をかけます。学生の場合、試験期や課題の締め切り、人間関係の変化が大きな引き金となります。うつ・不安・ストレスは互いに関連しており、同時に現れることも多いです。
【方法】
Cochrane、PubMed、PsycINFOを含む複数データベースを検索し、無作為化比較試験(RCT)を対象としました。瞑想、ヨガ、マインドフルネス介入を、待機群・無介入群・アクティブコントロール群と比較し、うつ、不安、ストレスを評価した研究を抽出。最終的に24件(うち23件がメタ分析に含まれる)、計1,373名の学生データを分析しました。効果指標はHedges’ gを用い、異質性やバイアスのリスクも評価しました。
【結果】
介入群は統合すると中程度の効果(g=0.42〜0.46)で、うつ、不安、ストレスのいずれにも改善が見られました。特に試験期間中の評価では効果がやや高くなりました。一方、アクティブコントロール(例:リラクゼーションや犬介在療法)との比較では効果は有意ではなく(g=0.13)、純粋な特異的効果は限定的と考えられます。長期的フォローアップ(1〜24か月)でも効果は持続しましたが、小〜中程度(g=0.39)にとどまりました。
【考察】
結果は有望ではあるものの、ほとんどの研究が方法論的に質が低く、バイアスのリスクが高いことが課題です。また、効果はアクティブコントロールと比較すると縮小するため、介入自体の特異的な効果よりも、集団活動や自己ケア時間の確保など非特異的要因が寄与している可能性があります。介入時間や実施期間と効果の関連は見られず、量より質が重要であることも示唆されます。
【結論】
瞑想、ヨガ、マインドフルネスは学生のうつ、不安、ストレス軽減に中程度の効果があり、特に試験期やストレスの高い状況で役立つ可能性があります。ただし、既存研究は質が低く、今後は高品質でアクティブコントロールを含む研究が必要です。学業成績への影響や副作用についてはデータが不十分です。
引用文献は下記よりご覧下さい.
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