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Study

初産婦における妊娠ヨガの効果──分娩と新生児の健康に与える影響

初産婦における妊娠ヨガの効果──分娩と新生児の健康に与える影響
記事作成日
2021年2月2日

妊娠期間というのは、喜びと期待に満ちている反面、体と心にとっては大きな挑戦の連続です。特に初めての出産を迎える女性にとっては、未知のことばかりで不安も多いですよね。そんな中で「体力をつけたいけれど、何をしていいかわからない」「安全にできる運動はないの?」と思ったことはありませんか。

今回ご紹介する研究は、そんな疑問に一つの答えをくれます。イランのカズビンという都市で行われた臨床試験で、初産婦70名を対象に、26週目から37週目までの12週間、週2回の妊娠ヨガを行ったグループと、通常の妊婦健診だけを受けたグループを比べています。

結果はとても興味深いものでした。ヨガをしたグループでは、陣痛を人工的に起こす必要がある人がぐっと減り(半分程度)、早産はゼロ。自然分娩の割合は8割を超え、帝王切開の率も大きく下がりました。そして分娩時間は平均で2時間近く短くなっていたのです。

さらに、新生児の出生体重は平均で約300g重く、妊娠週数も長めに保たれ、Apgarスコア──これは赤ちゃんの健康状態を評価する指標ですが──も出生直後、5分後ともに高い数値を示しました。これはつまり、母体だけでなく赤ちゃんの健康状態にもプラスの影響があったということです。

なぜこんな効果が出たのか。ヨガはポーズで筋力や柔軟性を養うだけでなく、骨盤底筋を強くし、呼吸法で心を落ち着け、血流を促します。こうした相乗効果が、分娩時の体力温存や痛みのコントロール、子宮や胎盤の血流改善につながり、赤ちゃんの発育をサポートしたと考えられます。

そして嬉しいのは、この方法が低コストで特別な器具も不要、しかも安全だということ。インストラクターの指導のもと、体調に合わせて行えば、ほとんどの妊婦さんが取り入れられます。

「運動不足だけど激しいことはできない」「出産に向けて体と心を整えたい」という初産婦さんには、ぜひおすすめしたいアプローチです。

 下記、研究の要約まとめです。

The Effect of Yoga on the Delivery and Neonatal Outcomes in Nulliparous Pregnant Women in Iran: a Clinical Trial Study

Yekefallah, L., Namdar, P., Dehghankar, L. et al. The effect of yoga on the delivery and neonatal outcomes in nulliparous pregnant women in Iran: a clinical trial study. BMC Pregnancy Childbirth 21, 351 (2021). https://doi.org/10.1186/s12884-021-03794-6

【タイトル】
イランの初産婦におけるヨガの分娩および新生児転帰への効果:臨床試験研究


【背景】
妊娠期は女性の身体と心に大きな変化をもたらす時期であり、母体と胎児双方の健康を守ることが重要です。特に帝王切開(CS)は自然分娩に比べて母体死亡率が2〜3倍高く、子宮感染症、出血、麻酔合併症といった母体リスクや、新生児集中治療室への入院、呼吸器疾患、黄疸、低Apgarスコア、低出生体重、死亡などの新生児リスクも増加します。妊娠中の運動は、こうしたリスクの軽減、体力維持、精神的安定に有効であり、特にヨガは身体運動と呼吸・瞑想を組み合わせることで、母体と胎児の双方に良い影響を与えるとされています。本研究は、初産婦における妊娠ヨガが分娩経過や新生児の健康に与える効果を明らかにすることを目的としています。


【妊娠・出産について】
妊娠中は運動量が減少しがちで、特に初産婦では出産経験がないため、分娩時の心身負担が大きくなります。ヨガは柔軟性・筋力・持久力の向上だけでなく、骨盤底筋の強化やリラクゼーションを促し、分娩時の陣痛への耐性を高めることができます。本研究では、26〜28週から37週までの間に、週2回・1回75分のハタヨガを実施し、自然分娩率、陣痛誘発率、分娩時間、会陰切開とその裂傷程度、帝王切開率などを評価しました。


【新生児について】
新生児の評価には出生体重、妊娠週数、出生直後と5分後のApgarスコア(心拍、呼吸、筋緊張、反射、皮膚色の5項目)を用いました。Apgarスコアは7点以上が正常とされ、出生後の新生児の健康状態を示す重要な指標です。


【方法】
対象はイラン・カズビンのKowsar病院に通院する18〜35歳の健康な初産婦70名で、BMI19.8〜26、単胎妊娠、26〜28週時点でのヨガ参加が可能な女性が条件です。介入群は国際資格を持つインストラクターによる妊娠ハタヨガを週2回、計12週間実施しました。内容は50分のポーズ(骨盤回し、脚のストレッチ、骨盤底筋強化など)、15分の瞑想、10分のリラクゼーションで構成。対照群は通常の妊婦健診のみを受けました。評価は医療記録と質問票により行い、統計解析にはMann-Whitney検定とχ²検定を用いました。


【結果】
ヨガ群は、対照群に比べて有意に陣痛誘発率が低く(51.7% vs 82.6%)、早産率は0%(対照群11.4%)でした。自然分娩率は82.9%と対照群(65.7%)より高く、帝王切開率は22.9%と有意に低下しました。分娩時間も短く(3.1時間 vs 4.91時間)、会陰裂傷の程度も軽度でした。出生体重はヨガ群が平均3287gと高く、妊娠週数も38.98週と有意に長く、Apgarスコアも出生直後(8.94 vs 8.54)、5分後(9.94 vs 9.28)ともに有意に高い結果となりました。


【考察】
妊娠ヨガは、分娩に必要な体力・柔軟性の向上、骨盤底筋の強化、呼吸法によるリラクゼーション効果を通じて、陣痛誘発や帝王切開の必要性を減らし、分娩時間を短縮することが示唆されました。また、血流改善やストレス軽減効果が胎児発育や成熟に寄与し、出生体重やApgarスコアの向上につながったと考えられます。これは、母体・胎児双方の健康にとって重要であり、低コスト・低リスクで導入可能な点も利点です。


【結論】
妊娠ヨガは初産婦において、分娩経過の改善(陣痛誘発・帝王切開・早産の減少、分娩時間短縮)と新生児転帰の向上(出生体重・Apgarスコア改善)に有効であり、助産ケアや母親学級に取り入れる価値があります。安全性が高く費用も少ないため、看護師や助産師、産科医が積極的に指導できるプログラムとして推奨されます。

引用文献は下記よりご覧下さい.

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