
Study
ヨガが女性のストレス・不安・うつを和らげる──4週間のハタヨガ介入研究

記事作成日
2021年1月21日
現代の生活は便利になった一方で、私たちの心は以前より多くのストレスにさらされています。仕事、家事、家族との関係、将来への不安──気づけば胸の奥がずっと緊張していたり、眠れない夜が続いていたり。特に女性は、生活の中で多くの役割を担い、その影響を受けやすいと言われています。
この研究は、そんな日常のストレス、不安、気分の落ち込みを、ヨガでどこまで和らげられるのかを確かめたものです。舞台はイランのイーラム市。対象は、運動習慣はないけれどヨガを安全に行える女性たちです。彼女たちが挑戦したのは「ハタヨガ」。ポーズ(アーサナ)、呼吸法(プラーナーヤーマ)、瞑想を組み合わせた、最も伝統的で穏やかなスタイルのひとつです。
プログラムは4週間、週3回、1回60〜70分。初めての人でも無理なくできる内容で、専門インストラクターが丁寧に指導しました。始める前と終わった後には、DASS-21という国際的に使われる質問票で、自分のストレス、不安、抑うつの状態をチェックしました。
結果は驚くほど明確でした。4週間・12回のヨガを終えた後、すべての項目で数値が下がっていたのです。ストレスも、不安も、気分の落ち込みも、統計的に「はっきり改善」と言えるレベルで減少していました。しかも特別な薬も器具も必要なく、自分の体と呼吸だけでこの変化が得られたのです。
この効果の背景には、ヨガが心と体の両方に働きかける性質があります。ポーズや呼吸法は筋肉や関節をほぐし、血流を促し、自律神経を整えます。瞑想は思考の渦から一歩距離を置き、心を静めます。これらの組み合わせが、脳内の神経伝達やホルモンバランスに良い影響を与え、結果として感情の安定やストレス耐性の向上につながるのです。
もちろん、この研究には限界もあります。参加者は女性だけで、男性や他の年代層で同じ効果が得られるかは分かりません。また、4週間という短期間での結果なので、長期的に続けた場合の変化や効果の持続性についても今後の検証が必要です。
それでも、週に数回、1時間ほどの時間を自分のために確保し、体と心に向き合う時間を持つ──それだけでここまで気持ちが変わるのだという事実は、とても希望のあるものです。
もし最近、ストレスや不安、気分の落ち込みに悩んでいるなら、この研究は背中を押してくれるかもしれません。「とりあえず4週間、ヨガを試してみよう」そう思えるだけで、変化は始まっています。特別な準備も必要ありません。マット1枚と、始める気持ち。それがあれば、あなたの毎日は少しずつ軽く、明るくなっていくはずですよ。
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当スタジオでは「ヨガが精神障害に効果的である」と断言するつもりはなく、「医療機関での治療と並行してヨガをすると効果的かもしれない」または「薬の効果が出にくい方に対して、ヨガが症状緩和の手助けとなり得るかもしれない」と考えております。
「ヨガをしてみるのも、いいかもしれない」と、皆様にすこし興味を持っていただけるきっかけとなればと思い、論文をご紹介しています。
ヨガを使った研究にご興味がある研究者の皆様は、ぜひともお気軽にお問い合わせください。また、補完的な行為としてヨガにご興味がある医療関係者の方も、お気軽にご連絡ください。
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下記、研究の要約まとめです。
The Effect of Yoga on Stress, Anxiety, and Depression in Women.
Shohani, Masoumeh; Badfar, Gholamreza1; Nasirkandy, Marzieh Parizad2; Kaikhavani, Sattar3; Rahmati, Shoboo4; Modmeli, Yaghoob5; Soleymani, Ali6; Azami, Milad7,. The Effect of Yoga on Stress, Anxiety, and Depression in Women. International Journal of Preventive Medicine 9(1):p 21, | DOI: 10.4103/ijpvm.IJPVM_242_16
【タイトル】
女性におけるストレス・不安・うつ病に対するヨガの効果
【背景】
ヨガは約5000年の歴史を持つ心身統合法で、近年は西洋でも広く取り入れられ、精神的・身体的健康の向上に有効とする科学的根拠が蓄積しています。現代の生活ではストレス、不安、うつ病の増加が問題となっており、薬物治療の副作用や限界から、非薬物的・非侵襲的なアプローチが注目されています。ヨガはポーズ、呼吸法、瞑想を組み合わせ、ストレスや負の感情を軽減し、心の安定を促すことが報告されていますが、イラン国内での研究は限られており、本研究はその効果を明らかにすることを目的としました。
【女性とストレスについて】
女性は社会的役割やライフイベント、ホルモン変化などの影響からストレスの影響を受けやすく、慢性的なストレスは心身の不調を招きやすいとされています。日常的なストレス対策は生活の質を高める上で重要であり、ヨガのような負担の少ない方法は有用な選択肢となります。
【不安やうつ病について】
不安やうつ病は現代病とも言われ、放置すると生活の満足度低下や身体疾患のリスク上昇を伴います。薬物療法は効果的な一方、副作用や依存、症状再発の問題があります。安全性が高く、自己管理にも取り入れやすいヨガは、不安・うつ症状緩和の補完療法として有望視されています。
【方法】
本研究はイラン・イーラム市のヨガクラブに通う女性を対象とした準実験(前後比較)研究です。対象は教育を受けており、非アスリートで妊娠していない、ハタヨガを無理なく行える女性とし、精神疾患薬の服用者や他の運動を並行する者は除外しました。介入は4週間、週3回、1回60〜70分のハタヨガ(ポーズ・呼吸法・瞑想)で、専門家が指導しました。評価にはDASS-21(抑うつ、不安、ストレスの3尺度・各7問)を用い、介入前と12回のセッション終了後に測定しました。
【結果】
分析対象は52名(平均年齢33.5±6.5歳)で、介入前後の比較では、抑うつ・不安・ストレスの全てで有意な低下が見られました(抑うつ:6.5→5.1、不安:5.7→4.2、ストレス:7.8→5.6、いずれもp<0.001)。
【考察】
4週間・12回の定期的なハタヨガは、女性のストレス・不安・抑うつを有意に軽減しました。この結果は、透析患者、多発性硬化症患者、妊婦などを対象にした他の研究とも一致します。ヨガは中枢神経系やホルモン系を調整し、神経伝達や自律神経のバランスを整えることで、精神状態を改善すると考えられます。ただし本研究は女性のみを対象とし、男性や長期的効果の検証は行っていない点が限界です。
【結論】
ヨガは女性のストレス・不安・抑うつを減らす有効な補完療法であり、薬物使用の減少による医療費削減にもつながる可能性があります。長期的効果や他集団への適用可能性を検証するために、さらなる研究が望まれます。
引用文献は下記よりご覧下さい.
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