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ストレスを軽減するための「ヨガ研究」の動向まとめ:過去24年間の研究の流れ

記事作成日
2025年7月22日
たとえば、誰かが「ヨガって本当にストレスに効くの?」と尋ねたら、あなたはどう答えますか?なんとなく「効きそう」とは感じていても、それをデータや科学的な裏付けで語れる人は、まだそう多くはないかもしれません。
この論文は、そんな問いにしっかりと答えてくれる、非常に頼もしいリサーチです。
2025年に発表されたこの研究は、2000年から2024年の間に発表された1,000本以上の論文を一つひとつ精査し、「ヨガは本当にストレスに有効なのか?」を、文献の量と質の両面から見つめ直しています。つまり、単なる体験談や噂話ではなく、「どれくらいの研究が」「どんな方法で」「どんな効果を報告しているのか?」を、丁寧に数と図で追いかけていったのです。
とくに面白かったのは、コロナ禍の4年間で研究数が急激に伸びていたこと。世界中が「セルフケア」の必要性に気づいたあの時期に、ヨガが再評価されたというのは、感覚的にも納得ですよね。そして、その多くが「ランダム化比較試験」や「メタ分析」といった、科学的にも信頼度の高い手法で行われていたというのは、私たちヨガ実践者にとっては、誇らしい話です。
また、この論文では、「ヨガは誰にとって有効なのか?」という視点も丁寧に描かれていました。たとえば、妊娠中の女性、がん患者、教師、医療従事者、若年層など、それぞれに合ったヨガの活用法が模索されていることがわかります。つまり、ヨガは「万人向けの万能薬」ではなく、「個別最適化された処方箋」としての可能性を広げているのです。
もちろん、課題も残されています。とくにランダム化試験の設計や、対象者の偏りなど、「ヨガの研究ならではの難しさ」も浮かび上がっていました。でも、だからこそ、この分野の未来には、まだまだ伸びしろがある。今の時点で「ヨガは効きます」と言い切れるだけのデータが揃ってきたというのは、研究の世界ではかなり大きな前進です。
私たちが日々の暮らしの中で、「なんとなく心が落ち着く」「終わった後に呼吸がしやすい」と感じるその背景には、実はこうした膨大な研究の蓄積があるのだということ。この論文は、その“静かな後ろ盾”を丁寧に照らしてくれています。
だからこそ、ヨガを教えている人、学んでいる人、興味を持っている人、すべての人に知ってほしい科学的な側面です。「ヨガがストレスに効く」とは、もはや感覚ではなく“科学的に検証されつつある事実”なんですね。
下記、研究の要約まとめです。
Research on Yoga for stress management: Bibliometric trends from 2000 to 2024
Juhi Kumawat, Kashinath G. Metri
Department of Yoga, Central University of Rajasthan, Ajmer, Rajasthan, India
Received 4 September 2024, Revised 17 March 2025, Accepted 18 March 2025, Available online 8 July 2025, Version of Record 8 July 2025.
【タイトル】
ストレス管理のためのヨガ研究:2000年から2024年の文献動向分析
【背景】
現代社会において、ストレスは心身の健康に大きな影響を及ぼす深刻な問題です。生活習慣病や慢性疾患の悪化にも関わり、精神的な不調を引き起こす大きな要因ともなっています。そこで注目されてきたのが、古くから実践されてきた「ヨガ」という心身療法です。とくにこの20年ほどで、ヨガをストレス管理の一手法として取り上げた科学研究が急増しています。
【ストレスとは?】
ストレスとは、身体的・精神的な外的刺激によって生じる緊張状態のことです。短期的には有益に働くこともありますが、慢性的に続くと心臓病や糖尿病、自己免疫疾患、睡眠障害、うつ病など多くの病態と関連します。また、ストレスにより食行動の乱れや感情調整の困難も引き起こされます。
【ストレスとヨガの関係性について】
ヨガは、ポーズ(アーサナ)、呼吸法(プラーナーヤーマ)、瞑想といった多面的な実践を通して、心と身体を統合的に整えていく伝統療法です。現代の研究では、ヨガが自律神経の調整、コルチゾール(ストレスホルモン)の低下、心拍変動の改善、心理的な回復力の向上に寄与することが示されています。特に、マインドフルネスや感情の安定にも効果があるとされ、ストレス管理における有効な選択肢とされています。
【方法】
この研究では、2000年から2024年までの間に英語で発表された「ヨガとストレス」に関する研究論文をScopusデータベースから抽出し、全体で1,025本の論文を分析しました。視覚化にはR StudioおよびVOSviewerを使用し、文献数、引用数、著者ネットワーク、キーワードの出現頻度などから科学的な動向を読み解いています。
【結果】
研究数はこの24年間で大幅に増加し、特にCOVID-19以降の4年間で急増しています。ランダム化比較試験(RCT)やメタ分析、システマティックレビューといった科学的な質の高い研究も増えており、主にアメリカとインドが研究の中心地となっています。頻出キーワードには、「マインドフルネス」「うつ」「瞑想」「心の健康」「プラーナーヤーマ」などが挙げられました。
【考察】
この研究は、ヨガが単なる身体運動ではなく、科学的にも信頼に足るストレス緩和法として認識されつつあることを示しています。とくに、心拍変動やコルチゾールといった生理的指標と、主観的なストレス尺度の両面から評価されている点が注目されます。また、従来の認知行動療法やマッサージと比較しても、ヨガは身体的・精神的な両側面に働きかける「統合的アプローチ」として有望視されています。
【結論】
ヨガは、ストレス管理における補完代替療法として、今後さらに重要な役割を果たす可能性を持っています。今後は、より規模の大きいランダム化比較試験や長期的な追跡研究を通じて、ヨガの科学的根拠をさらに確かなものとする必要があります。また、妊娠中の女性や高ストレス職業従事者など、特定集団に対する有効性も探っていくことが求められます。
引用文献は下記よりご覧下さい.
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