
Study
瞑想とヨガはPTSD(心的外傷後ストレス障害)に効果があるか:成人を対象とした系統的レビュー

記事作成日
2021年1月21日
日常の中で、ふと思い出してしまう――あの日の恐怖や悲しみ。PTSDを抱える人にとって、それはまるで体と心を奪い取る迷路のようなものです。トリガーに反応して心が叫び、眠れない夜が重なり、薬だけでは響かない感覚もある。「もう少し、別の方法も試したい」という気持ちに、ヨガや瞑想は寄り添える存在かもしれません。
2017年に発表されたこのレビューは、そうした想いに科学的な光を当てるものです。研究対象はランダム化比較試験という高い信頼性を持つ方式で、瞑想やヨガが本当にPTSDの症状を抑えるのかを丁寧に検証しています。結果として、確かに「改善の兆し」が示されているのです。
ヨガや瞑想がなぜ効果的なのか。それは「体と心を同時に整える」からです。呼吸を整え、体の動きに意識を向け、今この瞬間にいること。これが、過去の記憶から少しだけ距離を置いて、恐怖に支配されない力を取り戻す第一歩になります。
もちろん、「これだけで大丈夫」と断言するにはまだ研究が足りません。けれど、「他の治療にプラスして取り入れられる」「安全で続けやすい」という点で、瞑想やヨガは希望の1ページになり得ます。小さなスペースでも、静かな時間を少しだけ日常に取り込んでみてください。その先に少しずつ、心の震えが整えられていくことを、この研究はそっと教えてくれます。
下記、研究の要約まとめです。
Meditation and yoga for posttraumatic stress disorder: A meta-analytic review of randomized controlled trials.
Autumn M. Gallegos, Hugh F. Crean, Wilfred R. Pigeon, Kathi L. Heffner,
Meditation and yoga for posttraumatic stress disorder: A meta-analytic review of randomized controlled trials,
Clinical Psychology Review,
Volume 58, 2017, Pages 115-124, ISSN 0272-7358,
https://doi.org/10.1016/j.cpr.2017.10.004.
【タイトル】
心的外傷後ストレス障害に対する瞑想およびヨガ:系統的レビュー
【背景】
心的外傷後ストレス障害(PTSD)は重大な人生の危険体験後に起こる、再体験や回避、覚醒亢進などを特徴とする心理的状態です。従来の治療では不十分な反応を示すことが多いため、瞑想やヨガなど心と体を結ぶ補完療法が注目されています。本研究は、ランダム化比較試験(RCT)を中心に、瞑想とヨガのPTSDへの効果を丁寧に検証したものです。
【心的外傷後ストレス障害とは?】
PTSDは、事故や暴力・災害などの強いストレス体験に起因し、過去の記憶がフラッシュバックしたり、心的・身体的な過覚醒が続いたりすることで、日常生活や精神の安定に大きな支障を来す状態です。ホルモンや脳構造にも変化が現れ、治療が難しいことも多いです。
【ヨガと瞑想について】
ヨガはポーズ、呼吸、瞑想を組み合わせた心身統合の実践であり、瞑想は注意や感情の制御、ストレス減少を目的としています。これらは神経系に働きかけ、情動調整力を高める可能性から、PTSDの補完療法としての利用が広がっています。
【方法】
著者は主要な学術データベースを検索し、PTSDに対するヨガや瞑想の効果を評価したランダム化比較試験を抽出しました。そのメタ分析を通じて、介入群と対照群における症状の変化を定量的にまとめています。
【結果】
レビューの結果、瞑想やヨガはPTSD症状の軽減に有望な補完療法であるとされ、抑うつ症状などの関連症状にも改善が示されました。ただし、RCTの数は限られ、研究の質にもばらつきが見られたため、さらなる精緻な検証が必要とされました。
【考察】
瞑想およびヨガは安全性が高く、副作用も少ない補助的な介入方法である一方で、研究の多くは参加者数が少ない、ブラインド不徹底、プラセボ効果の可能性が残るなど、科学的厳密性に課題があると指摘されています。今後は無作為化かつ対照群を備えた大規模研究が求められます。
【結論】
瞑想とヨガは、PTSDおよび関連する抑うつ症状に対して、安全で有望な補完療法として期待されていますが、その効果を確実にするには、さらなる高品質な研究実証が必要です。
引用文献は下記よりご覧下さい.
もし、掲載内容と論文に誤りがございましたらご連絡いただけると幸いです。

