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Study

うつ症状と不安症状に対するヨガと心理療法の統合的グループ治療

うつ症状と不安症状に対するヨガと心理療法の統合的グループ治療
記事作成日
2022年1月19日

うつや不安の中にいると、「自分が何を感じているのか分からない」「自分に厳しすぎて苦しい」という状態に陥ることがあります。これは感情認識の難しさ(アレキシサイミア)や自己批判の強さに関係していて、回復の妨げになることが知られています。

この研究は、そんな状態に働きかけるために、心理療法とヨガを組み合わせた8週間のプログラムを試しました。使われたのは、感情教育の「アフェクトスクール(AS)」、自己への優しさを育てる「コンパッション・フォーカスト・セラピー(CFT)」、そして呼吸や動きで内面に意識を向ける「ヴィリヤ・ヨガ」です。

毎回2時間、前半は感情を理解し扱うための学びとワーク、後半はそのテーマに沿ったヨガとセルフ・コンパッションの練習を行います。しかも自宅練習用のヨガ動画も配布し、日常の中で継続できる工夫がされていました。

結果は興味深いものでした。うつや不安が和らいだだけでなく、自分の感情をより正確に捉えられるようになり、自己への優しさも高まりました。そして、自宅でヨガを多く行った人ほど、その効果は大きかったのです。これは、単なる運動効果ではなく、ヨガの「気づき」の要素が心理面に深く関わっていることを示しています。

一方で、グループ形式に馴染めず離脱した人もいたため、今後は少人数やオンライン化など、より参加しやすい形が求められます。それでも、この研究が示したのは「心と体の両面からアプローチする治療の力」です。

もし、これまでの治療でなかなか変化を感じられなかったり、自分の感情と向き合うのが難しいと感じているなら、このようなヨガと心理療法の組み合わせは新たな可能性になるかもしれません。

 下記、研究の要約まとめです。

Integrating yoga with psychological group-treatment for mixed depression and anxiety in primary healthcare: An explorative pilot study

GustavJonssonLisaFranzénMarkus B.T.NyströmPaul A.Davis
Department of Psychology, Umeå University, 901 87, Umeå, Sweden
Complementary Therapies in Clinical Practice
Volume 41, November 2020, 101250

【タイトル】
一次医療における混合型うつ病・不安障害へのヨガ統合心理グループ治療:探索的パイロット研究


【背景】
うつ病や不安障害は、情動処理の制限や感情認識の困難(アレキシサイミア)と深く関係しています。従来の心理療法や薬物療法だけでは、感情処理の改善や自己への思いやり(セルフ・コンパッション)の育成が十分でないことがあります。近年、ヨガは身体的・心理的アプローチを同時に提供できる補完療法として注目されており、とくにハタ・ヨガやその派生形は筋力・柔軟性・バランスを高めるだけでなく、呼吸法や瞑想を通じて自己認識や情動調整を促します。本研究では、一次医療の現場で「アフェクトスクール(AS)」「コンパッション・フォーカスト・セラピー(CFT)」「ヴィリヤ・ヨガ(Virya Yoga)」を統合した8週間のグループ治療の実行可能性と効果を検証しました。


【アレキシサイミア(Alexithymia)について】
アレキシサイミアは、自分の感情を特定・説明することが難しく、身体感覚と感情を区別しづらい状態を指します。この特性はうつや不安障害に関連しており、感情認識を高める介入は症状軽減に有効とされています。


【セルフ・コンパッション(Self-Compassion)について】
セルフ・コンパッションとは、失敗や苦しみの中で自分に優しく接し、人間としての不完全さを受け入れる態度です。マインドフルネス、共通の人間性、自分への優しさの3要素からなり、うつ・不安の軽減や生活の質向上に関与します。


【これらのキーワードとヨガの関係について】
ヨガは身体的動作(アーサナ)と呼吸法(プラーナーヤーマ)、瞑想を通じて内的感覚への気づきを高めます。これにより、自分の感情や身体反応をより正確に捉えられるようになり、アレキシサイミアの軽減やセルフ・コンパッションの向上につながります。本研究のヴィリヤ・ヨガは低強度の動きと瞑想を組み合わせ、心理療法と統合することで心身双方への効果を高めています。


【方法】
スウェーデン北部の一次医療センターで、軽度から中等度の混合型うつ病・不安障害患者24名を対象に、週1回2時間・全8回の統合プログラムを実施しました。前半60〜75分はASとCFTに基づく感情教育と体験的ワーク、後半45〜60分はヴィリヤ・ヨガとCFT由来のセルフ・コンパッション演習を行いました。比較対象として、最近の通常治療(TAU:認知行動療法ベースのグループ治療)を受けた17名のデータを用いました。主な評価指標は、うつ症状(PHQ-9)、不安症状(GAD-7)、全体的機能(ORS)、生活の質(BBQ)で、副次的にポジティブ感情・ネガティブ感情(PANAS-SF)、アレキシサイミア(TAS-20)、セルフ・コンパッション(SCS)などを測定しました。


【結果】
介入群はPHQ-9、GAD-7、ORSで有意改善し、ポジティブ感情の増加、ネガティブ感情の減少、セルフ・コンパッションとアレキシサイミアの改善も見られました。TAU群もうつ・不安・機能面で改善し、生活の質が向上しましたが、アレキシサイミアやセルフ・コンパッションの改善は報告されませんでした。介入群では、ヨガの自宅練習時間とアレキシサイミアの改善度、ポジティブ感情の増加に中程度の相関があり、またセルフ・コンパッションの向上は不安症状の軽減と関連していました。


【考察】
AS、CFT、ヴィリヤ・ヨガを統合したプログラムは、短期間ながらセルフ・コンパッションと感情認識力の向上に寄与し、うつ・不安の軽減に効果を示しました。特に、自宅でのヨガ実践量が多いほど感情処理能力の改善が顕著であったことから、ホームワークの促進が鍵となる可能性があります。課題としては、グループ形式ゆえの離脱率の高さがあり、少人数制やオンライン化などの改善策が示唆されます。


【結論】
この統合的グループ治療は、一次医療の現場で実施可能であり、感情処理力の改善を通じてうつ症状と不安症状の軽減に有効である可能性があります。特に、アレキシサイミアやセルフ・コンパッションといった情動面のターゲットに有望で、今後は大規模RCTでの検証が望まれます。

引用文献は下記よりご覧下さい.

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