
Study
大学生のストレスと不安を軽減するヨガ&瞑想の効果──6週間の実践研究

記事作成日
2022年2月17日
大学生活って、自由で楽しい反面、試験やレポート、人間関係、将来の不安…気づけば心も体もカチカチに緊張していること、ありますよね。この研究は、そんな大学生にこそ知ってほしい「ヨガと瞑想」の組み合わせが持つ力を、実際のデータで示してくれています。
舞台はアメリカの薬学部。しかも、試験前という一番ストレスが高まる時期に、学生たちは週1回90分、ヨガと瞑想をセットで体験しました。最初の60分はヴィンヤサヨガで体をほぐし、その後30分間はガイド付きで瞑想。呼吸を整え、心のざわめきを静かに見つめる時間です。たった6週間ですが、その結果は驚くものでした。
不安の指標は平均9.6ポイント減、ストレスは7.9ポイント減。そして「マインドフルネス」という、今この瞬間に意識を置く力は大きく伸び、中でも「自分の内側を評価・ジャッジしない姿勢」は群を抜いて向上しました。介入前に「高ストレス・高不安」だった学生は、終了後にはゼロに。しかもこの変化は、試験本番の週にも続いていたのです。
なぜこんなに効果があったのか。それは、ヨガと瞑想が心身の両面から同時に働きかけるからだと思います。ヨガで体の緊張を解き、呼吸を深めることで、副交感神経が優位になり、心が静まりやすくなる。その状態で瞑想に入ると、思考や感情をただ観察する力が高まり、「あれこれ考えすぎて苦しくなる」ループから抜けやすくなるのです。
僕が面白いと思うのは、このプログラムが「週1回」という無理のない頻度で成果を出していること。毎日やらなきゃ、と自分を追い詰めなくても、質の高い時間を継続すれば、ちゃんと変化は起きる。これは忙しい学生や社会人にも朗報ですよね。
この研究から見えてくるのは、ヨガや瞑想は単なるリラクゼーションではなく、日常を生きやすくする「心の技術」だということです。特に、将来の責任や重圧を背負う準備をしている学生時代に、この技術を身につけることは、一生の財産になるはずです。
だからもし、最近ストレスや不安で呼吸が浅くなっていると感じたら、ヨガマットの上で少し体を動かし、そのまま静かに目を閉じてみてください。その短い時間が、驚くほどの安心感と、明日を乗り越える力をくれるかもしれません。
下記、研究の要約まとめです。
Impact of a Yoga and Meditation Intervention on Students' Stress and Anxiety Levels
Virginia Lemay, PharmD ∙ John Hoolahan, PharmD ∙ Ashley Buchanan, DrPH
University of Rhode Island College of Pharmacy, Kingston, Rhode Island
American Journal of Pharmaceutical Education, Volume 83, Issue 5, 7001
【タイトル】
ヨガと瞑想介入が学生のストレス・不安レベルに与える影響
【背景】
大学生、特に医療系や薬学系など高度な学習負荷がかかる分野の学生は、慢性的なストレスや不安を抱えやすく、学業成績や生活の質に悪影響を及ぼすことが知られています。近年、薬物を使わないセルフケア方法として、ヨガや瞑想などのマインドフルネス実践が注目され、集中力や自己認識の向上、情動の安定に寄与する可能性が多くの研究で示されています。しかし、薬学部生を対象にヨガと瞑想を組み合わせた「二重介入」の効果を検証した研究はこれまでほとんどありませんでした。本研究は、学期末試験前という最もストレスが高まる時期に、ヨガと瞑想を組み合わせたプログラムが学生のストレス・不安・マインドフルネスに与える影響を明らかにすることを目的としています。
【ストレスについて】
ストレスとは、外的または内的な要因により心身にかかる負荷や緊張状態を指します。大学生は学業、将来の進路、人間関係など多様な要因でストレスを感じやすく、慢性的になると頭痛、不眠、不安、うつなど心身両面に悪影響を与えます。
【マインドフルネスについて】
マインドフルネスは「今この瞬間」に意識を向け、判断せずに経験を受け止める心のあり方です。瞑想やヨガは、この状態を養うための実践方法として広く用いられ、情動調整や集中力向上、ストレス軽減に効果があるとされています。
【ストレスとマインドフルネス、ヨガの関係について】
ヨガは、呼吸法(プラーナーヤーマ)、姿勢(アーサナ)、瞑想(ディヤーナ)を統合的に行う心身修養法です。ストレス軽減やマインドフルネス向上において、ヨガは身体的な緊張緩和と精神的な安定を同時に促します。本研究のように、ヨガと瞑想を組み合わせることで、ストレスと不安の双方にアプローチできる可能性があります。
【方法】
米国ロードアイランド大学薬学部で、2017年春学期の最終6週間にわたり、週1回・90分(60分のヴィンヤサヨガ+30分のガイド付き瞑想)を実施。参加者は18〜23歳の大学生20名(薬学部生と他学部生各10名を上限)で、事前の経験は限定的としました。プログラム前後で以下の尺度を用い評価しました:Beck Anxiety Inventory(BAI/不安)、Perceived Stress Scale(PSS/ストレス)、Five Facet Mindfulness Questionnaire(FFMQ/マインドフルネス)。
【結果】
17名が全日程を完了。平均年齢は20.7歳、女性が76%。プログラム後、不安スコア(BAI)は平均9.6ポイント減少、ストレススコア(PSS)は平均7.9ポイント減少、マインドフルネス総合スコアは平均21.2ポイント増加しました。特に「内的経験を判断しない姿勢(non-judging)」は平均6.8ポイントと最大の伸びを示しました。介入前に高ストレス・高不安と分類された学生は、介入後ゼロになりました。
【考察】
ヨガと瞑想を組み合わせた週1回・6週間のプログラムは、大学生のストレスと不安を有意に低下させ、マインドフルネスを高める効果を示しました。これは、自宅練習型や単独介入型の先行研究よりも大きな改善幅であり、対面型・統合型プログラムの有効性を裏付けます。特に試験期のような高ストレス環境でも効果が維持されたことは注目に値します。
【結論】
大学生は、ヨガと瞑想を組み合わせたマインドフルネス実践を週1回・6週間行うことで、ストレスと不安を軽減し、心の安定を促すことができます。教育機関は学生のセルフケア支援として、このような非薬物的アプローチをカリキュラムや課外活動に組み込むことが推奨されます。
引用文献は下記よりご覧下さい.
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