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アーユルヴェーダと現代科学が示すギーの健康効果 ─ “神聖な脂”の再評価

アーユルヴェーダと現代科学が示すギーの健康効果 ─ “神聖な脂”の再評価
記事作成日
2025年11月11日

僕たちが「脂」という言葉を聞くと、どこか罪悪感のようなものが湧くことがありますよね。けれど、インドの伝統医学アーユルヴェーダでは、脂こそが“命を滑らかに流すもの”として大切にされてきました。その中心にあるのがギーです。

バターをゆっくりと加熱して水分や不純物を取り除いた、黄金色のオイル「ギー」は、ただの調味料ではなく、身体と心の両方を整えるための“食べる薬”だったのです。

この論文は、そのギーを「科学」と「アーユルヴェーダ」の両側から見直したものです。現代科学では、飽和脂肪酸を含むギーは心臓病のリスクとされてきましたが、最近ではその中に含まれる短鎖脂肪酸(酪酸)や共役リノール酸(CLA)、オメガ3脂肪酸などが、炎症を抑え、脳や腸を守る役割を果たすことが分かってきています。つまり、かつて「悪者」とされた脂が、今や「守り手」として再評価されつつあるのです。

アーユルヴェーダの文献を遡ると、ギーは3000年以上前から「記憶力や知性を高める」「消化を整える」「目や皮膚を潤す」「免疫を高める」など、実に多様な効能を持つと記されています。なかでも“心を穏やかにし、智慧を澄ませる食”としての役割が、最も多く語られていました。面白いのは、これが現代の神経科学でも裏づけられつつあるという点です。

ギーに含まれる脂肪酸が、神経細胞の炎症を抑え、BDNFという脳の成長因子を増やす働きを持つことが報告されています。まさに、古典が言う「ブラフミー(知恵)」の油なのです。

さらに、ギーは薬草成分を身体に運ぶ「メディアム(媒体)」としても優れており、アーユルヴェーダの多くの処方にギーが使われてきました。これは現代でいうナノキャリアやリポソーム技術の自然版ともいえる発想で、脂が薬の吸収を助けるという点では、非常に合理的です。
このあたり、科学と伝統の知恵がきれいに重なる瞬間に僕は感動を覚えてしまうことも。

この研究の興味深いところは、アーユルヴェーダと現代科学の「見ている方向の違い」です。現代は心臓や血管といった“危険管理”の視点から脂を語りますが、アーユルヴェーダは“心や消化、免疫”といった「生命の調和」からギーを捉えています。
前者はリスク回避、後者は生命の循環──その両方を架け橋のように結ぶのが、まさにギーの存在なのかもしれません。

ヨガを実践する僕たちにとって、ギーは単なる栄養ではなく、“意識の滑らかさ”を取り戻すための象徴的な存在です。
瞑想の前にひと匙のギーを舌にのせると、呼吸が深まり、頭の中が静かに澄んでいくかもしれません。脂が神経を包み、炎症を鎮め、心が再び「調和のリズム」を取り戻す可能性を感じますね。
それは、まさにアーユルヴェーダが言う“スネハ(愛・潤い)”の感覚なんです。

「ギーを再び“悪者”ではなく、“静けさを運ぶ食”として受け取り直すこと」それが、現代のストレス社会で心身を整える大きな鍵になるのかもしれませんね。

 下記、研究の要約まとめです。

Health benefits of ghee: Review of Ayurveda and modern science perspectives

Deepshikha Kataria, Gurmeet Singh,
Health benefits of ghee: Review of Ayurveda and modern science perspectives,
Journal of Ayurveda and Integrative Medicine,
Volume 15, Issue 1, 2024, 100819, ISSN 0975-9476,
https://doi.org/10.1016/j.jaim.2023.100819.

【タイトル】
「ギーの健康効果:アーユルヴェーダと現代科学の視点による総説」


【背景】
この論文は、近年見直されつつある「乳脂肪の健康効果」を背景に、古代インドのアーユルヴェーダ文献と現代科学の研究を比較しながら、「ギー(精製バター)」の健康的価値を再検討したレビューです。

かつて飽和脂肪酸を多く含む乳脂肪は健康リスクとされてきましたが、近年では脂肪酸の多様な生理機能──抗炎症作用、抗酸化作用、脳や神経への働きなど──が再評価されており、ギーも再び注目を浴びています。

本研究では、アーユルヴェーダ古典11種を対象に、約4000件の乳製品関連記述を分析。そのうち2913件が治療的文脈であり、ギーに関する記述が最も多く(774件)、15の健康効果カテゴリーに整理されました。
これらを1990〜2023年のPubMed文献と比較し、両者の焦点の違いと重なりを明らかにしています。


【脂肪酸(Fatty Acids)について】
ギーは約99.5%が脂肪で構成され、その中に短鎖・中鎖・長鎖脂肪酸(SCFA・MCFA・LCFA)を含みます。特に、短鎖脂肪酸(酪酸など)や共役リノール酸(CLA)、オメガ3・オメガ6脂肪酸は、抗炎症作用や神経保護作用に関わる重要な分子です。
これらは単なるエネルギー源ではなく、細胞のシグナル伝達やアポトーシス(細胞死)制御などに関与しており、脳機能や免疫機能の維持にも寄与します。アーユルヴェーダにおける「オージャス(生命力)」の概念とも響き合う内容です。


【プラーナ(インド思想の生命エネルギー)と認知機能】
アーユルヴェーダではギーは「心(マナス)を鎮め、記憶・集中・知性を高める食」とされ、日常摂取推奨食(Nityasevaniya Ahara)にも含まれます。
現代科学の研究でも、ギーに含まれる脂肪酸が脳炎症を抑え、神経栄養因子(BDNF)の分泌を促す可能性が示されており、古典の「知性を増す食物」という定義と整合します。
特に、アーユルヴェーダ処方の「ブラフミー・グリタ」や「カリャーナカ・グリタ」は、認知機能改善や抗うつ効果を示す臨床結果が報告されています。


【脂肪酸とプラーナ、ヨガとの関係】
アーユルヴェーダでのギーの位置づけは、「浄化」「滋養」「鎮静」「覚醒」という四つのバランス軸を整えるものです。
これはヨガでいう「プラーナ(生命エネルギー)」「サットヴァ(純粋性)」「オージャス(生命力)」の増進と重なります。
ギーを摂ることによる消化(アグニ)の安定、神経伝達の円滑化、心の穏やかさの回復は、まさにヨガの実践における“内なる安定”の物質的基盤といえるのです。
身体と意識の橋渡しとしての「脂(スネハ)」の哲学的側面が、ヨガの“アヒンサー(非暴力)”や“サントーシャ(満足)”の精神と調和しています。


【方法】
・アーユルヴェーダ側:
紀元前15世紀〜17世紀の古典(チャラカ・スシュルタ・ハリタなど)を精読し、ギー・乳・バター等の言及をデータベース化。
出典・動物種・製造法・熟成年数・薬理属性(ラサ・グナ・ヴィリヤ・ヴィパーカ・ドーシャ作用)を整理。

・現代科学側:
PubMedで1990〜2023年の論文を検索。15の健康効果カテゴリ(認知・消化・免疫・循環・皮膚など)で109本を採用して比較しました。


【結果】
アーユルヴェーダでは「認知機能」「消化機能」「滋養」「視覚・耳鼻咽喉」「免疫・浄化」が上位5領域。
一方、現代科学では「心血管」「創傷治癒」「皮膚」の研究が中心でした。
この乖離から、ギーの真価がまだ科学的に検証されていない領域(特に脳と腸)に潜んでいることが示唆されます。


【考察】
ギーは単なる食品ではなく、「脂溶性栄養素を運ぶ媒体」としての薬理的意義を持っています。
古典の「グリタ(ギー)」処方は、薬草成分の吸収率を高め、組織(ダートゥ)への浸透を促す目的で設計されていました。
現代でもリポソームやナノキャリア技術と同じ発想で、ギーは自然の“ドラッグデリバリーシステム”といえる存在です。
特に「古ギー(プーラナ・グリタ)」は神経や消化系への作用が強く、加齢関連疾患(認知症や慢性炎症)への応用が期待されています。


【結論】
アーユルヴェーダと現代科学の焦点はまだ一致していませんが、両者を統合することで「脂肪=悪」という偏見を超えた新たな健康観が見えてきます。
ギーは脳・腸・免疫・皮膚・眼・骨といった多系統に働く機能性脂であり、生命エネルギーの安定化に寄与します。
今後は臨床試験による量的基準と機序解明が求められますが、ギーは「精神の明晰さと身体の穏やかさ」を橋渡しする食薬の一つとして再評価されるべきです。

引用文献は下記よりご覧下さい.

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