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ヨガとマインドフルネスは若年層アスリートの心の健康とパフォーマンスを高めるか?心理的側面に関するメタ分析

ヨガとマインドフルネスは若年層アスリートの心の健康とパフォーマンスを高めるか?心理的側面に関するメタ分析
記事作成日
2025年8月7日

競技をしていると、ふと「なんだか最近、集中できないな」と感じる瞬間ってありますよね。技術的には問題ないのに、気持ちがうまくついてこない。練習ではうまくいくのに、本番になると身体が固まってしまう。そんな経験、きっと多くのアスリートが一度は持っているはずです。筆者の平岡は小学生~高校生時代と陸上競技に打ち込んでいたので、こういった経験をしておりました。

この論文は、そんな“見えない心のゆらぎ”に焦点を当てた研究です。対象は、18~45歳の若年層アスリート。身体を動かすことには慣れているけれど、心のコンディションまで整える方法はまだ模索中という方々ですね。

研究では、ヨガとマインドフルネスという2つの“内なる技術”が、アスリートの心とパフォーマンスにどのような影響を与えるかを調べました。結果はとても興味深いもので、特に「フロー状態」――つまり競技中に“ゾーンに入る”といわれるような集中の状態が、明確に高まったというのです。

また、「マインドフルネス傾向」も大きく向上しました。これは、今この瞬間に注意を向け、自分の内面を客観的に観察できる力のことです。感情に巻き込まれずにいられること、結果にとらわれすぎずプレーできることは、まさに競技における“精神の軸”とも言えるでしょう。

ストレスに関しても、ヨガやマインドフルネスによって明確な改善が見られました。ただし、不安については全体としての効果は限定的であり、より個人差が大きい印象を受けました。つまり、「ヨガをすれば不安が消える」というものではなく、「不安に巻き込まれにくくなる姿勢」を養うものかもしれません。

僕がこの研究で面白いと感じたのは、体を鍛えることと心を整えることが、実は深くつながっているという点です。特に、ヨガは筋肉や柔軟性だけでなく、自分の内面と対話する時間でもあります。練習や競技とは違う文脈で“自分と向き合う”時間を持つことで、心の余白が生まれていく。そんな余白が、結果としてパフォーマンスにも影響するのだろうと思います。

だからこそ、競技の現場にヨガやマインドフルネスが取り入れられるようになると、もっと多くの人が「勝つために」ではなく、「整えるために」実践するようになるかもしれません。

アスリートの方はもちろん、コーチやトレーナーの方にもぜひ読んでほしい論文です。心の状態が整うと、身体も自然と反応してくる。そんな“内なる力”の可能性を、科学的に支えてくれる研究でした。

 下記、研究の要約まとめです。

Effect of yoga and mindfulness on psychological correlates in young athletes: A meta-analysis

Satish Kanaujia, Priyanka Saraswati, Anshu, Narendra Singh, Sanjay Singh, Neetu Kataria, Poonam Yadav,
Effect of yoga and mindfulness on psychological correlates in young athletes: A meta-analysis,
Journal of Ayurveda and Integrative Medicine,
Volume 14, Issue 3,
2023,
100725,
ISSN 0975-9476,
https://doi.org/10.1016/j.jaim.2023.100725.

【タイトル】
「ヨガとマインドフルネスが若年層アスリートの心理的要因に与える影響:メタ分析」


【背景】
近年、アスリートの心の健康に対する注目が高まっています。身体的なトレーニングだけでなく、競技に伴うストレスや不安に対処する方法の重要性が認識され始めています。特に若年層のアスリートは、競技のプレッシャーや自己期待によってメンタルの不調を抱えることも少なくありません。既存の研究では、アスリートの約35%が摂食障害や燃え尽き症候群、うつ、不安などの心理的課題を抱えていると報告されています。このような背景から、ヨガやマインドフルネスといった実践が心理的ストレスを軽減し、競技パフォーマンスに好影響をもたらす可能性があると期待されています。


【ヨガについて】
ヨガは古代インドに起源をもつ心身統合の実践であり、身体の柔軟性を高めるポーズ(アーサナ)、呼吸法(プラーナーヤーマ)、瞑想などが含まれています。近年では、糖尿病や心疾患の予防・改善にも寄与することが報告されており、心の健康への影響も注目されています。脳内のGABAという神経伝達物質を増加させることによって、不安やストレスの緩和が期待されている点も注目すべき特徴です。


【マインドフルネスについて】
マインドフルネスは「今ここ」に意識を向け、過去や未来への評価や思考から自由になる実践です。呼吸、身体感覚、思考、感情を客観的に観察することで、感情のコントロールやストレス耐性を高める効果があり、スポーツ心理の領域でも応用が進んでいます。特に「受容」「非判断」「意識的な行動」を養うことが、競技中の集中力や回復力を支えるとされています。


【若年層アスリートについて】
本研究で対象となったのは、18~45歳の若年~中年の男女アスリートたちであり、プロというよりはレクリエーショナルレベルの選手たちです。サンプルにはバスケットボール、サッカー、水泳、レスリング、ホッケーなど多様な競技が含まれ、比較的日常的にトレーニングをしている層が選ばれています。


【ヨガとマインドフルネス、若年層アスリートの心理面との関係性とは?】
本研究では、ヨガとマインドフルネスが、アスリートの「ストレス」「不安」「マインドフルネス傾向」「受容と行動」「フロー状態」にどのように影響を与えるかを解析しています。結果として、特に「フロー状態」と「マインドフルネス傾向(FFMQスコア)」には有意な改善が見られました。ストレスは大きく軽減されましたが、不安に関しては有意差が確認されなかったケースもありました。


【方法】
この研究はメタ分析であり、世界中の15件の実験的研究(RCTまたは準実験)からデータを収集・統合しています。対象者はアスリートに限定され、介入法としてはヨガまたはマインドフルネスが行われました。アウトカム指標には、マインドフルネス(FFMQ)、受容行動(AAQ-II)、注意と認識(MAAS)、フロー状態(SFSS)、ストレス(PSS)、競技不安(CSAI-2)が用いられました。


【結果】
フロー状態とマインドフルネス傾向の向上には、統計的に有意な効果が確認されました。ストレス軽減についても明らかな効果が見られましたが、注意力や「受容と行動」指標への効果は限定的でした。不安に関しては、いくつかの研究では効果が示されましたが、統合分析としては有意とは言えない結果となりました。


【考察】
この結果から、ヨガとマインドフルネスは、若年層アスリートの心理的な回復力を支える一助となることが示唆されました。特に競技中の集中力や感情の安定性を保つうえで、ヨガ・瞑想・呼吸法の実践は有効と考えられます。ただし、不安への影響は個人差が大きく、今後はより精密な研究が求められます。また、ストレスに対する効果が大きかったことから、日常的なトレーニングへの組み込みも推奨されるべきでしょう。


【結論】
ヨガとマインドフルネスは、若年層アスリートのストレス軽減やパフォーマンス向上に対して補完的な療法として有効であることが示されました。特にフロー状態やマインドフルネスの向上を通じて、競技中の集中力を高める効果が期待されます。今後の研究では、より長期的かつ厳密なデザインによる検証が必要とされます。

引用文献は下記よりご覧下さい.

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