Study
精神病ケアにおけるアーユルヴェーダの可能性
現代の精神病の治療法は進歩していますが、多くの患者の方が依然として症状の持続や再発に苦しんでいるようです。
特に、抗精神病薬の服用を守らなかった場合に問題が発生しやすくなるとのこと。
アーユルヴェーダでは精神病を「ウンマダ(Unmada)」として説明しており、さまざまな治療法が存在しますが、これまでその効果についての系統的な証拠は不足していました。
今回ご紹介する論文では、アーユルヴェーダによる精神病治療に関する臨床試験を整理して示してくれています。
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▼アーユルヴェーダとは?
「アーユルヴェーダ」は、インドで約2,000~3,000年前に発祥した伝統的な医学体系です。サンスクリット語で「アーユス(生命)」と「ヴェーダ(知識)」を組み合わせた言葉で、「生命の知識」や「生命の科学」を意味します。
その目的は、心・体・精神のバランスをとり、健康を維持し病気を予防することです。
アーユルヴェーダは、個人の体質(ドーシャ:ヴァータ、ピッタ、カパ)に基づいた食事、ハーブ療法、浄化療法(パンチャカルマ)、瞑想、ヨガなどを通じて、このバランスを整えることを重視しています。
簡単に言えば、アーユルヴェーダは体と心のバランスをとり、健康を保つための古代の知恵ですね。
下記、研究の要約まとめです。
Role of Ayurveda in the management of psychotic disorders: A systematic review of clinical evidence
Kavyashree Kulamarva, Venkataram Shivakumar, Umesh Chikkanna, Kishore Kumar Ramakrishna, Hemanth Bhargav, Shivarama Varambally
Department of Integrative Medicine, National Institute of Mental Health and Neurosciences (NIMHANS), Bengaluru, 560029, India
Received 14 January 2022, Revised 11 March 2023, Accepted 29 April 2023, Available online 7 June 2023, Version of Record 7 June 2023.
『精神病の管理におけるアーユルヴェーダの役割:臨床的証拠の体系的レビュー』
【背景】
精神病は、幻覚や妄想などの異常な思考や知覚を伴う深刻な精神障害です。現代の治療法は進歩しているものの、抗精神病薬の副作用や薬の非遵守などにより、多くの患者が症状の持続や再発に苦しんでいます。アーユルヴェーダは、精神病を「ウンマダ」として分類し、さまざまな治療法を提案していますが、これらの方法の体系的な科学的証拠はこれまで不足していました。本研究では、アーユルヴェーダによる精神病管理に関する臨床試験を体系的にレビューしています。
【方法】
PubMed Central、Cochrane Library、AYUSH Researchポータルから23件の研究を検索し、そのうち21件を重複排除後にレビュー対象としました。さらに9件を除外し、最終的に12件(10件の臨床試験と2件の症例報告)が含まれました。
【結果】
レビューに含まれた12件の研究の大多数は、さまざまな症状評価尺度で精神病理学の改善が見られました。特に、アーユルヴェーダの薬草療法(例:ブラーミー、アシュワガンダなど)や浄化療法(パンチャカルマ)を用いた治療が効果を示しました。一部の研究では、アーユルヴェーダと従来の治療法の併用がより効果的であることが示唆されています。
【考察】
アーユルヴェーダを用いた精神病治療に関する研究はまだ限られており、現時点で確実な結論を導くには不十分です。しかし、既存の研究は有望な結果を示しており、神経生物学的視点からのさらなる研究が必要とされています。アーユルヴェーダの治療法が精神病の管理にどのように役立つかについて、より詳細な研究が行われるべきです。
【結論】
アーユルヴェーダによる精神病の治療は未開拓の分野であり、さらなる臨床試験や体系的な研究が求められています。今後、神経生物学的に裏付けられた研究が進められることで、統合的なアプローチが可能になり、精神病の管理においてより良い結果が期待されます。
引用文献は下記よりご覧下さい.
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