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中高年・高齢者の睡眠をいちばん改善する運動はどれか ─ 有酸素・筋トレ・併用・ヨガを“直接比較”したネットワークメタ解析

中高年・高齢者の睡眠をいちばん改善する運動はどれか ─ 有酸素・筋トレ・併用・ヨガを“直接比較”したネットワークメタ解析
記事作成日
2026年1月23日

中高年以降の「眠りの不調」って、意志や気合いの問題に見えてしまうことがあるんですね。でも実際は、身体のリズムそのものが変わってきている中で、睡眠のスイッチが入りにくくなったり、途中で浅くなったり、日中の回復感が落ちたりしている、という生理学的な面がとても大きいです。だからこそ、薬だけに頼らずに、身体側から睡眠を整える方法が欲しくなるわけです。

この論文が面白いのは、「運動が睡眠に良い」という話を一段深くして、「どの運動が、どの困りごとに強いのか」を比較している点なんです。まとめると、睡眠の総合点を一番押し上げやすいのは有酸素運動でした。歩く、こぐ、軽く踊る、そういうリズム運動が、睡眠全体の質を底上げしやすい、という見立てですね。一方で、ヨガは“全部を平均的に上げる”というより、睡眠効率や睡眠時間、日中のだるさといった、生活の実感に直結する部分で上位に来ています。つまり、寝つきが課題なら有酸素、日中の不調や睡眠のまとまりが課題ならヨガ、というふうに、選び方の解像度が上がるんです。

僕の感覚としても、ここはすごく臨床的に納得できます。睡眠って「眠る」行為そのものというより、「眠れる状態に落ちていく」現象です。だから、交感神経で頑張り続けている人には“抜く練習”が効きやすい。ヨガの呼吸や伸ばす動きは、その抜く練習を、身体の感覚として学ばせてくれるんですね。逆に、身体活動そのものが少なくて、エネルギーの使いどころが足りないタイプの不眠には、有酸素運動のほうがスイッチとして入りやすいことがあります。

もし「最近眠りが浅い」「寝ても回復しない」と感じている方がいたら、まずはこの論文を入口にして、運動を“根性の習慣”ではなく、“睡眠の設計”として捉え直してみるといいと思います。週に何回、何分、どの運動を選ぶかは、性格や生活ではなく、睡眠の困りごとの種類に合わせて決めていい。そうやって整えていくと、眠りは少しずつ「自分で戻せるもの」になっていきます。そんな現実的な希望をくれる論文です。

 下記、研究の要約まとめです。

Effects of different types of exercise on sleep quality based on Pittsburgh Sleep Quality Index in middle-aged and older adults: a network meta-analysis

Gao X, Qiao Y, Chen Q, Wang C, Zhang P. Effects of different types of exercise on sleep quality based on Pittsburgh Sleep Quality Index in middle-aged and older adults: a network meta-analysis. J Clin Sleep Med. 2024;20(7):1193–1204.

【タイトル】
「中高年および高齢者におけるPittsburgh Sleep Quality Index(PSQI)に基づく睡眠の質に対する運動の種類別効果:ネットワークメタ解析」(1ページの原題に対応)


【背景】
本研究は、睡眠問題が世界的に多く、とくに中高年・高齢者で睡眠障害が増えやすいという状況を背景にしています。睡眠不足や睡眠の質の低下は、認知・精神健康・社会活動に影響し、心血管疾患リスクとも関連するため、改善が重要だと位置づけています。一方で睡眠薬治療は副作用や依存などの懸念があり、短期使用が推奨されるという文脈があり、非薬物療法として運動が安全性・費用・有効性の面で魅力的だと整理しています。ただし「どの運動様式が最も効果的か」は研究ごとにバラつきがあり、直接比較だけでは決着しにくいため、ネットワークメタ解析で“間接比較も含めて”順位づけを試みた、という流れです。


【Pittsburgh Sleep Quality Index(PSQI)について】
PSQIは睡眠の質を評価する質問票で、総合点(Total score)と、いくつかの構成要素(例:入眠潜時、睡眠時間、睡眠効率、睡眠障害、眠剤使用、日中機能障害など)で睡眠の状態を捉える主観指標です。本研究はアウトカムをPSQIに統一し、異なる研究間でも比較可能な形にしています。ただし著者自身も限界として、PSQIは主観指標であり客観指標(ポリソムノグラフィやアクチグラフ等)ではない点を明記しています。


【ネットワークメタ解析(Network Meta-Analysis)とSUCRAについて】
ネットワークメタ解析は、A対Bの直接比較だけでなく、A対C・B対Cなど複数介入をネットワークとして統合し、直接比較と間接比較を組み合わせて「相対的にどれが良いか」を推定する手法です。本研究では、介入(有酸素運動、レジスタンス運動、両者の併用、ヨガ)と対照群をネットワークとして扱い、総合PSQIおよび各下位尺度ごとに比較しています。SUCRA(surface under the cumulative ranking curve)は、各介入が「上位に来やすい確率」を面積として要約する順位指標で、1に近いほどそのアウトカム改善に有利と解釈されます。


【PSQI、ネットワークメタ解析、SUCRAとヨガの関係について】
この論文における主要語彙は、運動様式(有酸素運動AE、レジスタンス運動RE、併用ARE、ヨガYG)、PSQI(総合点と各要素)、ネットワークメタ解析、SUCRA、RCT(ランダム化比較試験)、中高年・高齢者、というセットです。その中でヨガは「柔軟性・筋力・呼吸法を統合し、心身の健康を高める運動」として位置づけられ、睡眠に関しては、ストレス・過覚醒の低下、メラトニン増加、呼吸を介した迷走神経活動の改善や自律神経バランス(HRVの上昇)などの仮説的機序が論じられています。また、ヨガの伸張要素が、漸進的筋弛緩法に似た緊張低下として働きうる、という臨床的に納得しやすい説明も添えられています。本研究の重要点は「ヨガは総合点の最上位ではないが、PSQIの特定コンポーネント(睡眠効率・睡眠時間・日中機能など)で上位に来る」という“得意領域の分化”を、順位づけで可視化した点です。


【方法】
著者らはPRISMA 2020に沿った系統的レビューを実施し、PROSPERO登録も行っています。PubMed、EMBASE、Web of Science、Cochrane Library、中国系DB(CNKI等)を含む複数データベースを2023年8月まで検索し、PICOSに基づき45–85歳の中高年・高齢者を対象に、AE/RE/ARE/YGのRCTを抽出しています。対照群は健康教育または通常生活維持で、アウトカムはPSQIに限定しています。バイアス評価はCochrane tool、統計は平均差(MD)と95%CI、ランキングはSUCRA、解析ソフトはStataです。


【結果】
最終的に28研究、参加者3,460人が統合されました。総合PSQI(Total score)に関しては、有酸素運動が最も高い順位となり(SUCRA 93.2%)、次いでレジスタンス運動、併用、ヨガ、対照群の順でした。一方で、PSQIの下位要素では「どの側面を良くしたいか」で最適が分かれます。具体的には、入眠潜時(寝つき)と睡眠薬使用は有酸素運動が最上位で(SUCRA 96.8%、77.1%)、睡眠障害(睡眠の乱れ)、睡眠効率、睡眠時間、日中機能障害はヨガが最上位でした(それぞれSUCRA 90.4%、95.9%、93.8%、98.3%)。また、著者らは有害事象について、採択研究の多くで報告がなく、ネットワークメタ解析として有害事象の統合はできなかったと述べています。


【考察】
著者らの解釈では、総合的な睡眠の質(PSQI総合点)を最も押し上げるのは有酸素運動であり、エネルギー消費、体温変化、エンドルフィン産生などを通じた睡眠促進が想定されています。一方でヨガは、呼吸法や自律神経調整、ストレス反応の鎮静、伸張による筋緊張低下を通じて、睡眠効率・睡眠時間・日中の不調といった“生活機能に直結しやすい要素”を改善しやすい可能性が示唆されています。レジスタンス運動は睡眠関連の一部要素に差が出るが、総合的には決定打になりにくいという整理で、併用(ARE)は「睡眠の主観的質」では順位が高い一方、他要素では相対的に優位が小さいという位置づけです。
限界としては、PSQIが主観指標であること、研究のバイアスリスクに不明確な点が多いことが示されています。したがって本研究は「客観的睡眠指標の改善」を断言するより、「自己報告の睡眠体験(PSQI)がどう動くか」を比較したエビデンスとして読むのが精確です。


【結論】
中高年・高齢者のPSQI総合点を最も改善しやすい運動様式は有酸素運動である、というのが本研究の主結論です。加えて、ヨガは睡眠効率・睡眠時間・日中機能障害など複数の下位尺度で最上位に位置づけられ、睡眠の“困りごとの種類”によって推奨運動が変わりうることが示されています。著者らは、文献で多かった介入特性を踏まえ、有酸素運動を8週間〜12か月、1回30〜60分、週3〜6日程度行うことを推奨として記しています。

引用文献は下記よりご覧下さい.

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