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ヨガは関節の痛みと関係ある?60代女性を対象にした横断調査

記事作成日
2021年1月21日
ヨガって、やってみたい気持ちはあるけれど「膝や腰に負担がかかるのではないか」と不安に思う方は多いと思います。特に年齢を重ねてくると「関節がもろくなっているんじゃ…」と心配になりがちです。でも、この論文を読むと、その不安に少しだけ安心が芽生えるかもしれません。
この研究はオーストラリア人女性、62〜67歳のおよそ9,000人を対象に行われたものです。全体の約3割が肩や膝などに日常的な違和感を感じている中、ヨガを「時々」している人が10%、「たびたび」している人が8%ほど。意外と多くの人がヨガに触れているんです。でもそこで注目なのは、ヨガをしている人に関節トラブルが多いとか少ないとかの明らかな差はなかったこと。これは、ヨガ=関節に悪影響という説を冷ややかに否定してくれているわけです。
もちろん、この結果だけで「ヨガは絶対安全」と断言するわけにはいきません。ヨガのやり方によっては無理をすれば痛めるケースもありますし、人によっては自分の体調や柔軟性の違いもあります。それでもこの研究が与えてくれる安心感は大きい。「リスクがそれほど高くないなら、試してみようかな」という気持ちになるきっかけになることもあります。
ヨガには、心を落ち着ける効果や、柔軟性を高めて動きやすくなる効果、運動不足の解消など、プラスの要素がたくさんあります。朝数分の呼吸法、椅子に座って行う簡単なポーズ、無理なく続けられる基本的なヨガなら、日常のちょっとしたアクセントにもなります。
この研究をきっかけに、ゆっくりと自分に合ったヨガを試してみてはいかがでしょうか。大切なのは無理をせず、自分のペースを尊重することですよ。
下記、研究の要約まとめです。
Associations between yoga practice and joint problems: a cross-sectional survey among 9151 Australian women.
Lauche, R., Schumann, D., Sibbritt, D. et al. Associations between yoga practice and joint problems: a cross-sectional survey among 9151 Australian women. Rheumatol Int 37, 1145–1148 (2017). https://doi.org/10.1007/s00296-017-3744-z
【タイトル)】
ヨガ実践と関節の問題との関連:オーストラリア女性9,151名を対象とした横断調査
【背景】
ヨガが関節に悪影響を与えるのではないかとの懸念が報告されることが増えています。そのため、ヨガが実際に関節の痛みや硬さにつながっているのか、特に中高年の女性において見極める必要があり、本研究が企画されました。
【関節痛について】
関節痛は多くの中高年女性が日常的に経験しており、肩、股関節、膝、足などに痛みやこわばりを感じることが多いです。本研究では、このような定期的な関節の問題を有無で調査しています。
【ヨガと関節痛について】
ヨガがすぐに関節への負担につながるという科学的な裏づけは乏しく、本研究では「ヨガ実践」と「関節の問題」の両者の関連性をデータに基づいて検証しています。
【方法】
オーストラリアの上中年女性を追跡するALSWH(Australian Longitudinal Study on Women’s Health)の調査データを用い、2013年に62~67歳の女性9,151名に、過去12ヶ月に関節の痛みや問題があったか、またヨガを行っていたかを尋ねました。ヨガの頻度は、「時々」と「よく」の2つのカテゴリに分類し、関節問題との関連を統計的に調べました。
【結果】
調査対象者のうち約3割が関節の痛みやこわばりを抱えており、具体的には肩:15.2%、股関節:11.9%、膝:18.1%、足:15.9%という報告がありました。一方で、ヨガを時々行う人は10.1%、よく行う人は8.4%でしたが、ヨガの実践と関節問題の有無には統計的な関連は認められませんでした。つまり、ヨガを行っていても関節が痛む頻度は変わらないという結果でした。
【考察】
この結果は、ヨガが中高年女性における関節問題のリスクとは無関係であることを示唆します。ただし、この調査は横断研究であり因果関係を証明するものではありません。また、ヨガの種類や強度、個々の健康状態などの詳細な情報は含まれておらず、それによって結果が変わる可能性もあります。さらなる詳細な研究の必要性が高まっています。
【結論】
ヨガの実践は、中高年女性の関節の痛みやこわばりと関連しておらず、関節への悪影響を示す証拠は得られませんでした。しかし、詳細を明らかにするためのさらなる研究は引き続き必要です。
引用文献は下記よりご覧下さい.
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