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ヨーガスートラに学ぶ ─ 30日で始める瞑想入門
記事作成日
2025年8月22日
瞑想とは「心の働きを静める練習」
『ヨーガスートラ』はこう始まります。
「ヨーガシュ・チッタ・ヴリッティ・ニローダハ(Yogaś citta vṛtti nirodhaḥ)」──ヨーガとは心の働きを止滅すること。
ここでいう「心の働き」とは、私たちが普段から経験している思考の流れのことです。頭の中はいつも「やることリスト」や「過去の後悔」「未来への不安」でいっぱいですよね。たとえるなら、ネットのブラウザでタブを50個も開きっぱなしにしているようなもの。気づいたら、肝心な作業がどこに行ったか分からなくなってしまう。そんな経験は誰にでもあると思います。
瞑想とは、この「開きっぱなしのタブ」をそっと閉じて、心のデスクトップをきれいに整える作業のようなものです。特別な宗教儀式ではなく、日常の中で「静けさに戻る習慣」を持つこと。それがパタンジャリの言うヨーガの第一歩なのです。
続ける力を育てる「アビヤーサ」と「ヴァイラーギャ」
瞑想は1日や2日で完成するものではありません。サマーディ・パーダで示されているのは、二つの柱です。
一つ目は アビヤーサ(abhyāsa)=繰り返しの実践。
これは「とにかく毎日やること」です。たとえ3分でもいい。歯磨きと同じで「今日も座る」を繰り返すうちに、体も心も「静かにすること」に慣れていきます。
二つ目は ヴァイラーギャ(vairāgya)=手放す態度。
座っていると、雑念が次から次へと湧いてきます。「あのメール返さなきゃ」「今日の晩ご飯どうしよう」……。それらを追いかけないで「今は必要ない」とそっと手放す練習をするのです。
現代で言うなら、「アビヤーサ=筋トレ」「ヴァイラーギャ=力をゆるめる練習」 に近いものです。毎日の積み重ねと、余計な力を解きほぐすこと。この両輪があって初めて、瞑想は習慣として根付いていきます。
瞑想を支える四つの柱
パタンジャリはさらに、瞑想を深めるための心の姿勢を 四つの柱 として示しました。
シュラッダー(śraddhā|信)
静けさの中に価値があると信じる気持ち。これは「きっと瞑想には意味がある」と思える心の傾きです。
ヴィリヤ(vīrya|精進)
怠け心に負けず、コツコツ座り続ける力。1日休んでしまっても、翌日にまた戻ってこれる粘り強さです。
スムリティ(smṛti|記憶)
瞑想中に感じた安らぎを日常の中でも思い出す力。例えば「電車でイライラしたときに、あの呼吸の静けさを思い出す」ことです。
サマーディ(samādhi)
その積み重ねの先に訪れる、一体感や静寂の境地。これは特別な力技ではなく、自然に熟していく果実のようなものです。
これらは決して宗教的な「信仰心」の話ではなく、人が「新しい習慣を身につけるときの心理的プロセス」として読むと、ぐっと理解しやすくなります。
瞑想の対象を選ぶ ─ 呼吸・音・光
瞑想を実践する上で大切なのは「心をどこに置くか」という対象(ālambana)を決めることです。
サマーディ・パーダでは、呼吸、光、聖音(オーム)、慈悲や感謝の感情など、さまざまな対象が挙げられています。
現代的にアレンジするなら:
・呼吸:自分の吸う息・吐く息をただ感じる
・音:マントラ「オーム」や静かな音楽を繰り返す
・光:ろうそくの炎や心の中の光を思い描く
・感情:「ありがとう」という気持ちや、誰かへの思いやりを静かに抱く
対象を決めると、心は「今ここ」にとどまりやすくなります。雑念が生じても、対象に戻ることを繰り返す。それが「心の筋トレ」なのです。
30日で瞑想に慣れるための道筋
瞑想は一気に深まるものではなく、段階的に「慣れる」ことが大切です。サマーディ・パーダの教えをベースにすると、30日で次のように進められます。
・第1週(Day1–7)
:呼吸に気づく練習。毎日3分、吸う息と吐く息を数えるだけ。
・第2週(Day8–14)
:対象を決める。呼吸か音か光を選び、毎日5分。
・第3週(Day15–21)
:雑念を手放す練習。「今は必要ない」と心の中でつぶやきながら流す。
・第4週(Day22–30)
:日常生活で思い出す。「イライラしたら呼吸に戻る」を実践。
こうして1か月を終える頃には、「瞑想しなければ」ではなく「座ると落ち着くから、自然とやりたくなる」という感覚に変わっていきます。
サマーディ・パーダの瞑想法は、単なる古典的な哲学ではなく、現代を生きる私たちの「心の取扱説明書」なのです。
もし「30日間で瞑想を生活に取り入れる具体的なプログラム」を体験してみたい方は、studio Sahanaの「30日間の瞑想プログラム」の講座ページ(各タイトル上にある写真をクリックするとページに飛べますよ)もどうぞご覧ください。






