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Column

ヨガとアーユルヴェーダ、食事と心の安らぎ

ヨガとアーユルヴェーダ、食事と心の安らぎ

記事作成日

2021年1月20日
【食事と心身の関係性】

私たちの体は、私たちが食べたもので作られています。頭では「確かにそうだ」と理解していても、実感する機会はあまりないかもしれません。例えばインドでは、多くの人の体からスパイスの香りが漂っているため、その事実を実感しやすいです(笑)。英語の「Diet/食事」という言葉が、日本語で「ダイエット/減量」と直結しているように、体重や健康を管理するためには食事が最も重要な要素であるという意識が強くあります。

周囲を見渡すと、お肉が大好きな人は活動的でエネルギッシュな雰囲気を持っていたり、食事量が少ない人は静かで穏やかな雰囲気を持っていたりと、食べるものが内面性にも影響していることが感じられるのではないでしょうか。

食事をしなければ生命を維持できない私たちにとって、食事に意識を向けることは動物的な行動ともいえます。しかし現代は食べ物の選択肢が非常に多く、必要以上に食べることができてしまう環境です。こうした状況は、食への意識を非常に人間的なものにしています。前回の記事でも触れたように、私たちは自分自身の「舌」をコントロールする必要のある社会に生きているのです。

人類の食の歴史を遡ってみると、初期の人類は「ナチュラルハイジーン」と呼ばれる果物や野菜を中心とした食生活を送っていました。その後も、果物や野菜は食卓の中心を占め続けていますが、魚や肉が頻繁に食べられるようになってから食生活に偏りが生じる人も多くなっています。

近年、特にアメリカの医師たちを中心に、自然に寄り添った健康法である「ナチュラルハイジーン」が提唱されているほか、世界各地には健康で長寿の人が多い「ブルーゾーン」と呼ばれる地域があります。これらの地域の人々に共通する9つの生活習慣のうち、3つが食事に関係しており、「植物性食品を基本とする」「腹八分の食生活」「人生をスローダウンさせる」など、食生活が心身の健康に大きく影響していることが示されています。

ヨガとアーユルヴェーダ、食事と心の安らぎ
【ヨガ実習者へ推奨される食事(ハタヨガ・プラディーピカより)】

ヨガを実践されている方はもちろん、全ての方にとって食事について考える良い機会になるよう、ハタ・ヨーガの教典『ハタヨガ・プラディーピカ』から、ヨガ行者に推奨される食事を紹介いたします。

『不摂生は避けられるべきである。一度冷めてしまったものを再び加熱した食物、乾燥したもの(自然な油分がないもの)、塩分や酸味が強すぎるもの、新鮮ではない野菜、または多種類を混ぜすぎた野菜は避けよ。』―第60節

一度冷めた食べ物にはバクテリアが繁殖しやすく、胃の中で発酵して消化不良を引き起こします。油分は適度に摂取すべきであり、塩分や酸味が過剰になると身体のバランスを崩しやすくなります。特に塩分は心拍数にも影響を及ぼします。また、多種類の野菜を混ぜすぎると化学反応が起こり、消化機能を妨げます。消化活動には無駄なエネルギー(プラーナ)を費やすべきではなく、常に効率よくスムーズに行われるべきなのです。

『ヨガ行者に最も適している食べ物は、良質な穀物、小麦、大麦、米、牛乳、ギー(インドのバター)、赤砂糖、氷砂糖、蜂蜜、ドライジンジャー、パトラフルーツ(ヘチマ)、5種類の野菜、ヤエナリ(小豆の一種)またはそれに類する豆類、そして綺麗な水である。』―第62節

穀物や米は炭水化物やビタミンB群の供給源として重要です。新鮮な牛乳やギーは消化器官の粘膜を保護し、砂糖類は脳の活動を効率よく支えます。蜂蜜やドライジンジャーは消化を助ける働きがあります。5種類の野菜(Balasaka、Kalasaka、Patolapatraka、Vastaka、Himalochika)はホウレン草に似た葉物野菜で、軽く消化しやすい豆類はタンパク質源となります。また、清潔で化学物質を含まない水は体の浄化に役立ちます。

古代のインドのヨガ行者たちは、食事にも細心の注意を払い、自らの修行に集中していたことが分かります。心身を整える食生活を確立することは、「座位(アーサナ)」「呼吸法(プラーナヤーマ)」「瞑想(ディヤーナ)」といった修行で望ましい成果を得るための重要な第一歩であるとされています。これらの推奨される食事内容は、現代の私たちが見ても納得できる健康的な食生活といえるでしょう。

また、ヨガ行者が推奨する食事は「サトヴィック・フード」と呼ばれ、中庸の性質を持つ食物です。これは、身体と心を過度に活発にせず(陽性)、過度に落ち着かせすぎない(陰性)という、バランスの取れたニュートラルな状態を保つものです。例えば、辛い食べ物など刺激が強いものは身体の機能(消化や発汗など)を活発化させ、心の状態にも影響します。心身ともにバランスの取れた状態を保つためには、中庸な食生活が理想的なのです。

ヨガとアーユルヴェーダ、食事と心の安らぎ
【アーユルヴェーダから見た1日の循環と食事】

アーユルヴェーダでは、空(大気)、風、火、水、地という五大元素から6つの味覚(*1)が形成されており、また私たちの身体も「地」「火」「風」の三元素から成るとされています(*2)。人生の中で幼少期は「地」、青年期は「火」、壮年期は「風」とされ、このサイクルが1日の中でも繰り返されています。各元素の詳しい説明は割愛しますが、一般的なイメージとほぼ一致します(地は力強く粘り気があり、火は活力にあふれ、風は軽やかです)。以下、時間ごとの活動内容とともにサイクルを説明します。

*1: 苦味、辛味、渋味、酸味、塩味、甘味
*2:「地」「火」「風」のバランスは個人ごとに異なり、優位な元素によって適した食べ物や避けるべき食べ物が変わります。


【06:00–10:00 am KAPHA(カパ)Ⅰ】
・運動
・軽食
・排泄完了
・一日の準備
・エネルギー蓄積

動きがゆったりした時間帯。朝6時以降に起床すると、起きづらく睡眠不足を感じます。この時間帯は消化が緩やかなので、軽めの食事が推奨されます。


【10:00 am–14:00 pm PITTA(ピッタ)Ⅰ】
・計画、準備、整理
・行動的活動
・高い代謝
・一日の中で最も栄養豊富な食事

代謝がピークに達する正午に向けて身体が準備を始めます。12時頃は栄養吸収率が最も高く、しっかりとした質の高い食事を摂るのに最適です。


【14:00–18:00 pm VATA(ヴァータ)Ⅰ】
・活動、交流
・社会的行動
・最後の食事(夕食)

活動が最も盛んな時間帯です。夕食は昼食よりも軽い内容が望ましく、精神的な活動や人との交流が活発になります。


【18:00–22:00 pm KAPHA(カパ)Ⅱ】
・吸収、消化
・落ち着きを取り戻す
・就寝準備
・内面へ向かう時間

徐々に身体を休息モードへと切り替える時間帯です。22時までに就寝すると快適に眠れますが、遅い時間の食事は睡眠の質を低下させます。


【22:00 pm–02:00 am PITTA(ピッタ)Ⅱ】
・深い睡眠
・栄養吸収と代謝
・カラフルな夢
・意識下での活動

睡眠が最も深くなり、鮮やかな夢を見やすい時間帯です。この時間に起きていると、代謝が活発になるため夜食を欲する傾向があります。


【02:00–06:00 am VATA(ヴァータ)Ⅲ】
・浅い眠り
・排泄の開始
・起床
・瞑想、想像力
・創造性を高める時間

この時間帯は霊性が高まるとされ、早朝に起床して瞑想や創造的活動を行うことで、一日をエネルギッシュに過ごせます。逆に、6時以降の起床は朝のだるさを引き起こします。


朝日と共に目覚め、夕日と共に心身を休める生活リズムは自然に即しており、無理なく長期的な活動が可能になります。現代社会では難しい側面もありますが、多くの世界的なCEOが早起きを習慣にしている理由がここにあるのです。

ヨガとアーユルヴェーダ、食事と心の安らぎ
【食事をするタイミング】

昔の日本では一日二食(朝と夕)が一般的でしたが、現在のような三食(朝・昼・夕)になったのは約300年前からだと言われています。その背景には、照明器具が発達し、人々の活動時間が延びたことが挙げられます。欧米諸国でも照明の発達で労働時間が長くなりましたが、特にエジソンが「一日三食の食事」を提唱し、トースターを大々的に販売した話はよく知られています。

しかし、食事のタイミングや量は個人によって適したものが異なるため、「一般的にはこうだ」「憧れのモデルがこうしているから」と他人を基準にすることは必ずしも適切ではありません。

アーユルヴェーダの1日のサイクルが示すように、自分自身の生活習慣や活動(学業や仕事)に合わせた食事タイミングを意識することが大切です。排泄の時間、集中力を要する時間、身体を動かす時間などを把握していれば、エネルギーを効率よく身体(脳、胃腸、筋肉など)の必要な場所に活用できるでしょう。

免疫学者の藤田鉱一郎先生は、「お腹が鳴ってから食べなさい」とアドバイスされています。食事のタイミングを時計だけに頼りすぎていませんか?時間を考えることも重要ですが、同時に腸の声に耳を傾けることも非常に大切です。頭で考えたスケジュールばかりに囚われず、実際に食べたものを消化している腸の感覚を研ぎ澄ませ、より良い食生活を心がけましょう。

【あらためて食事について考えてみて】

今回はヨガとアーユルヴェーダを中心に食事についてお話ししましたが、私個人としては、せっかく現代を生きているのですから、食事を楽しむことも大切にしてほしいと思っています(笑)。考えすぎるのもかえってストレスになりますよね。好きなものを食べれば気分が良くなりますし、誰かと食事をすることはコミュニケーションの一環としても非常に重要です。

「これは食べてはいけない」「この時間に必ず食べなければならない」といった厳しすぎる考えは、食事そのものの楽しみを失わせ、時には一緒に食事を楽しむ相手まで失ってしまうかもしれません。仏教(*3)では、快楽と苦行という極端を避ける「中道」が推奨されています。本やインターネットの情報に振り回されるのではなく、自分自身に合った食事を見つけ、心と体の調子が整う食生活を築くことこそ健康への第一歩です。情報は重要ですが、文字や数字だけに惑わされず、自分自身の感覚を信頼し大切にしてください。

〔補足〕
*3: 仏陀はVipassana(ヴィパッサナー/内観)やAnapanasati(アーナーパーナサティ/入出息念)など、じっくりと自分を観察し集中する瞑想法を教えています。これはラージャ・ヨーガの八支則にあるYama(禁戒)やNiyama(勧戒)と共通する考え方です。



【参考】
1. Commentary-Swami Muktibodhananda, Guidance-Swami Satyananda Saraswati (3rd-1998) Hatha Yoga Pradipika – Light on Hatha Yoga, Yoga Publications Trust, Bihar
2. Dr. Light Miller & Dr. Bryan Miller (1998) Ayurveda & Aromatherapy, Motilal Banarsidass Publishers Private Limited, Delhi
3. 藤田鉱一郎 (2013), 人の命は腸が9割~大切な腸を病気から守る30の方法, ワニブックス, 日本

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