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自分に合わせたヨガ実践で、慢性的な不眠・疲労・不安・うつの症状が改善

自分に合わせたヨガ実践で、慢性的な不眠・疲労・不安・うつの症状が改善
記事作成日
2025年7月4日

日々「よく眠れないなあ」と感じている方、あるいは、眠れているはずなのに「なぜか日中に疲れやすい」とか「不安やイライラが取れない」と感じている方に、ぜひご紹介したい論文があります。

この研究は、ベルギーの病院で行われたもので、「慢性的な不眠症を抱える大人」に対して、なんと薬も使わず、しかも一人ひとりに合わせて調整されたヨガを14週間やってもらった、という内容です。

しかも面白いのは、みんな同じポーズをやるのではなくて、本人の生活リズム・身体のクセ・不眠のパターンに合わせて、呼吸やアーサナ(ポーズ)、瞑想などを調整していったという点です。ヨガの種類は「ヴィニヨガ」といって、古代インドの智慧をもとにした個別対応型のヨガ。

この論文で特に印象的だったのは、「客観的な脳波データには大きな変化がない」のに、「本人の体感・感情レベルではかなり良くなっている」という結果でした。実際、睡眠の質に関する質問票のスコアも、不安感やうつ症状も、すべて有意に改善。さらに、腕につけた活動量計のデータでは、夜中の「覚醒回数」も減っていたんです。

これは、ヨガの力が「身体を動かすこと」以上に、「呼吸・注意・感情」に働きかけているからこそではないかと感じます。呼吸を通じて意識の流れを整えることで、頭の中のぐるぐる思考や、無意識の緊張がゆるみ、心の静けさが戻ってくる。そうした「心の質感の変化」が、眠りや日中のエネルギーにまで波及していったのかもしれません。

もしあなたが、「薬には頼りたくないけれど、どうにも眠りの質が良くない」というときや、「自分の内側と向き合いながら、眠りを整えていきたい」と思っているときには、「ヨガって、本当に効果があるんだな」を実感させてくれるはずです。

最後に、この論文の良いところは、再現性の高さですね。ポーズを図解で渡して、自宅でできるようにしていること。そして、誰もが無理なく実践できる内容であったこと。つまり、特別な柔軟性や体力がなくても始められることが、ヨガの長所みたいですね。

 下記、研究の要約まとめです。

Tailored individual Yoga practice improves sleep quality, fatigue, anxiety, and depression in chronic insomnia disorder

Turmel, D., Carlier, S., Bruyneel, A.V. et al. Tailored individual Yoga practice improves sleep quality, fatigue, anxiety, and depression in chronic insomnia disorder. BMC Psychiatry 22, 267 (2022). https://doi.org/10.1186/s12888-022-03936-w


【タイトル】
個別に調整されたヨガ実践は、慢性不眠症における睡眠の質・疲労・不安・抑うつを改善する


【背景】
不眠症は非常に多くの人が悩む症状であり、日中の活動や気分の障害とも密接に関わっています。特に慢性化した不眠症は、心身の健康に長期的な悪影響を及ぼす可能性があるため、適切な対処が必要です。これまでの標準的な治療法は認知行動療法(CBT-I)でしたが、アクセスの難しさや継続の困難さもあり、近年ではヨガや太極拳といったマインド・ボディ介入が注目されています。


【慢性不眠症とは?】
慢性不眠症とは、十分な睡眠環境があるにも関わらず、「寝つけない」「途中で何度も目が覚める」「朝早く起きてしまう」などの問題が、少なくとも週3回、1か月以上続く状態を指します。この状態が続くと、日中の倦怠感、注意力低下、感情の不安定などが生じ、生活全体に支障をきたすようになります。


【個別に調整されたヨガとは?】
この研究で行われたヨガは「ヴィニヨガ(Viniyoga)」という個別対応型のヨガです。参加者一人ひとりの体調・生活スタイル・不眠の特徴に合わせて、呼吸法・アーサナ・瞑想・マントラなどを組み合わせて構成されました。毎日自宅で実践できるよう、指導者との4回の個別面談を通じて、内容が微調整され、図解付きの練習シートや音声ガイドも提供されました。


【睡眠とヨガの関係性について】
ヨガは自律神経や呼吸、思考の流れに働きかけることで、心身のリラクゼーションを促します。特に呼吸を整えることが思考の静まりにつながり、寝つきやすさや中途覚醒の減少に寄与すると考えられています。また、ヨガの実践によりメラトニン分泌の増加やコルチゾールの低下が報告されており、ホルモンバランスの調整を通じて睡眠にも良い影響を与えることがわかっています。


【方法】
ベルギーの病院にて、新たに慢性不眠症と診断された成人を対象に、14週間のヴィニヨガプログラムを実施しました。対象者は、自宅でのポリソムノグラフィー(睡眠脳波計)、アクチグラフィー(活動量計)、複数の心理評価質問紙(睡眠の質、不安・うつ、眠気、疲労)によって、介入前後の状態を比較されました。


【結果】
21名の参加者のうち、2名が途中で離脱し、19名が最終評価まで完了しました。ポリソムノグラフィーによる客観的な睡眠データには大きな変化は見られませんでしたが、アクチグラフィーでは夜間の覚醒回数が有意に減少しました。また、自己申告による睡眠の質、不安、抑うつ、疲労、日中の眠気においては、いずれも有意な改善が認められました。


【考察】
この研究では、ヨガの主観的効果が特に顕著であり、「眠れない」と感じていた人が、「眠れた」と感じられるようになったことが示されました。もともと不眠症は主観的な症状が中心であり、客観的指標では異常が出にくいという特性があるため、主観的な改善こそが重要とも言えます。特に、ヨガによってステージN3(深いノンレム睡眠)の増加と自己評価の改善が相関していた点は興味深く、ヨガが睡眠構造に微細な影響を与える可能性も示唆されました。


【結論】
個別に調整されたヴィニヨガの14週間の実践により、慢性不眠症の方々は、睡眠の質だけでなく、疲労感・不安感・抑うつ感といった日中の不快な症状も改善されました。CBT-Iに代わる、もしくは補完的な治療法として、自律的に取り組めるヨガは今後の選択肢として有望であると考えられます。

引用文献は下記よりご覧下さい.

もし、掲載内容と論文に誤りがございましたらご連絡いただけると幸いです。

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