
Study
大学生のメンタルヘルス改善におけるヨガの有効性:ランダム化比較試験

記事作成日
2025年5月10日
僕たちが日々生活する中で、避けては通れないもののひとつが「ストレス」や「不安」ですよね。特に大学生という立場は、新しい環境や課題に囲まれて、自分が思っている以上に精神的な負担を感じることがあります。勉強のプレッシャー、人間関係の悩み、将来への漠然とした不安…こうしたことに振り回されて、気づかないうちに心が疲れてしまっている人がとても多いんですね。
そこで、この度ご紹介するのは、ヨガを使った心のケアについての研究論文です。ヨガというと、身体を柔軟にしたり、美容や健康に役立つイメージが一般的ですが、実はヨガにはそれ以上の大切な役割があります。それが、僕たちの心の調子を整える「メンタルヘルスケア」としての役割なんですね。
この研究はスペインで行われ、129人の大学生を対象に、12週間ヨガを続けたら、精神的にどのような変化が起こるかを丁寧に調べています。具体的には、参加した学生は毎週2回、専門の先生の指導のもとで、深い呼吸法や伝統的なヨガのポーズ(ハタヨガ)を実践しました。そして、ヨガの前後でストレスや不安、心の幸福感を数値化して変化を見ました。
その結果がとても興味深いものでした。研究に参加した大学生たちは、たった12週間でストレスの感じ方が明らかに軽減し、不安も減少しました。さらに、日常の幸福感や心地よさ(これを「感情的ウェルビーイング」と言います)が大幅にアップしたんですね。
ヨガを行った学生たちは、以前はストレスが多く、不安を感じやすかったにもかかわらず、ヨガを続けるうちに心が落ち着き、自分自身の感情とうまく付き合えるようになったんです。これはとても大きなことだと思いませんか?特に興味深いのは、一時的な不安(例えばテスト前のドキドキ)だけではなく、慢性的な不安感(いつも何か不安を抱えている状態)までもが改善されたことです。
なぜヨガがこれほど効果的だったのかについても、この論文では深掘りしています。ヨガのポーズや呼吸、瞑想をすることで、僕たちの体内ではドーパミンやセロトニンなどの脳内物質が分泌されやすくなります。これらは「幸せホルモン」とも呼ばれていて、感情を安定させたり、ストレスを和らげたりする効果があります。つまりヨガは、身体を通じて、僕たちの脳や神経の働きを整える力があるというわけですね。
さらに研究者たちは、このヨガプログラムを大学の授業や課外活動として導入すると、学生のメンタルヘルスに大きな効果をもたらす可能性がある、と結論づけています。これからは心の健康をケアする方法として、ヨガがもっと身近になるかもしれませんね。
ヨガは誰でも気軽に取り組めるものです。激しい運動が苦手な人でも、じっくりとした呼吸法やゆったりとしたポーズなら、無理なく続けられます。ヨガを通じて自分自身と向き合う時間を持つことで、少しずつ心が軽くなっていくのを感じられるはずです。
下記、研究の要約まとめです。
Yoga as a therapeutic approach to mental health in university students: a randomized controlled trial
Yolanda Castellote-Caballero1,2 María del Carmen Carcelén-Fraile3* Agustín Aibar-Almazán1,2 Yulieth Rivas-Campo4 Ana María González-Martín2,5
1: Department of Health Sciences, Faculty of Health Sciences, University of Jaén, Jaén, Spain
2: Department of Health Sciences, Faculty of Health Sciences, University of Atlántico Medio, Las Palmas de Gran Canaria, Spain
3: Department of Education and Psychology, Faculty of Social Sciences, University of Atlántico Medio, Las Palmas de Gran Canaria, Spain
4: Faculty of Human and Social Sciences, University of San Buenaventura-Cali, Santiago de Cali, Colombia
5: Department of Psychology, Higher Education Center for Teaching and Educational Research, Madrid, Spain
Front. Public Health, 05 June 2024
Sec. Public Mental Health
Volume 12 - 2024 | https://doi.org/10.3389/fpubh.2024.1406937
【タイトル】
大学生のメンタルヘルスに対するセラピー的アプローチとしてのヨガ:ランダム化比較試験
【背景】
近年、大学生の精神的な問題が増えていることから、学生のメンタルヘルス改善が重要な課題となっています。大学生は学業だけでなく人間関係や経済的なプレッシャーなど多くのストレスにさらされており、それが不安や抑うつの原因となることがあります。こうした状況から、大学生のメンタルヘルスを向上させるための効果的な方法が求められています。
【メンタルヘルスとは?】
メンタルヘルスとは、精神的に健康であることを指し、ストレスを上手く管理し、感情を安定させ、不安や抑うつなどの精神的問題を適切に対処できる状態をいいます。
【学生とメンタルヘルスについて】
大学生は特にストレスや不安を感じやすく、その要因は学業の負担、社会的期待、経済的問題、自立した生活への移行などさまざまです。ストレスが長期化すると集中力の低下や人間関係への影響があり、一時的な不安(試験時など)や、日常的に不安を感じやすい性質の不安(特性不安)にも繋がります。
【ヨガのセラピー的アプローチについて】
ヨガは身体の動き、呼吸法、瞑想、リラクゼーションを組み合わせた古くからの方法で、精神面の健康に良い影響を与えるとされています。研究により、ヨガがストレスや不安を軽減し、心身の調和を促進することが確認されています。ヨガを通じてストレスホルモンの低下や幸福感を促進するドーパミンやセロトニンの分泌が増加し、心身の健康が向上するとされています。
【方法】
この研究はランダム化比較試験で、129名の大学生を対象に12週間にわたるヨガプログラムを実施しました。参加者は週2回、60分間のヨガセッションを行い、呼吸法やハタヨガのポーズ、瞑想、リラクゼーションを実践しました。介入を受けたグループ(ヨガ群)と何も介入を受けなかったグループ(対照群)に分け、ストレス、不安、感情的ウェルビーイングの変化を評価しました。
【結果】
ヨガ群の学生は、ストレス、不安が有意に低下し、感情的なウェルビーイング(心理的な幸福感)が向上しました。特にストレスの認知(どれくらいストレスを感じているか)は、ヨガ実践後に明確に改善しました。また、一時的な不安(状態不安)と慢性的な不安(特性不安)の両方においても、有意な改善が見られました。
【考察】
研究の結果は過去の研究とも一致しており、ヨガが神経系やホルモン分泌、さらには感情を安定させる脳内物質(ドーパミンなど)の分泌を調整することにより、ストレスや不安を軽減すると考えられています。この結果から、ヨガは学生のメンタルヘルス改善に有効な手法であることが示唆されます。
【結論】
12週間のヨガプログラムは大学生のストレス、不安を軽減し、心理的幸福感を高める効果があります。このことから、大学のメンタルヘルスプログラムとしてヨガを取り入れることは有益であると結論付けられました。
引用文献は下記よりご覧下さい.
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