Voss, Stephanie1; Cerna, Jonathan2; Gothe, Neha P.1,2,3,4. Yoga Impacts Cognitive Health: Neurophysiological Changes and Stress Regulation Mechanisms. Exercise and Sport Sciences Reviews 51(2):p 73-81, April 2023. | DOI: 10.1249/JES.0000000000000311


『ヨガが認知機能に与える影響：神経生理学的変化とストレス調整メカニズム』


【背景】
ヨガは古代インド発祥の心身統合を目指す実践法で、現代のハタヨガ（姿勢、呼吸、瞑想の要素を含む）の形で広まりました。特に高齢者の認知機能低下に対する予防策として注目され、認知力の改善、ストレス軽減、脳と体の効率的なコミュニケーション向上が期待されています。


【認知機能とは】
認知機能は、記憶、判断、注意力、問題解決といった脳の思考プロセス全般を指します。ヨガを通じて、認知機能の改善が報告されており、特に注意力、情報処理速度、記憶力といった面で効果が確認されています。


【神経生理学とは】
神経生理学は、脳や神経系の働きを解明する学問で、脳の構造や機能がどのように変化するかを探ります。ヨガが脳の神経構造やネットワークの柔軟性を高め、効率的な情報処理をサポートすることが、神経生理学的な視点から確認されています。


【ストレス調整メカニズムとは】
ヨガはストレスホルモン（コルチゾールなど）の調整に役立ち、慢性的なストレスの影響を軽減する効果があります。特に高齢者において、ヨガがストレスの影響を減らし、認知機能を守るための神経保護効果が示唆されています。


【方法】
研究はヨガのストレス反応の測定や神経系の変化を調査し、ヨガ経験の浅い人と深い人の脳の構造や機能を比較しました。主に、短期間（8週間）のヨガ介入がストレスの反応性と認知機能にどのような影響を与えるかを評価しています。


【結果】
短期間のヨガ介入は、ストレス反応の低減と実行機能（例：記憶、注意力）の改善をもたらすことが分かりました。長期間のヨガ実践は、脳の灰白質（情報処理に関わる部位）の増加や、年齢に伴う脳の衰えを抑える効果も示唆されています。


【考察】
ヨガが脳と体の相互作用を向上させることで、神経資源の効率化（脳が効率的に動くためのリソースの最適化）が進み、認知機能が維持されやすくなると考えられています。また、特定の神経ネットワークの柔軟性が増し、年齢に伴う認知低下のリスクを減らせる可能性が示唆されています。


【結論】
ヨガは、認知機能の維持や改善に役立つ可能性があり、特に高齢者の脳の健康に対する効果が期待されます。ヨガの実践は短期間での効果も期待できる一方、長期的に行うことでより大きな恩恵が得られるとされ、定期的なヨガが脳の健康維持に重要であると結論付けられています。