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ストレス管理と大うつ病へのヨガの効果

記事作成日
2025年3月15日
現代の忙しい生活では、多くの人が日々ストレスを感じています。さて、皆さんは、いかがでしょうか。
ストレスは、ちょうどいい程度なら頑張る力になりますが、長く続くと心や体に悪い影響を及ぼします。その中でも特に問題なのが、大うつ病(MDD)です。この病気は世界中で3億人以上の人々に影響を与えていると言われ、深刻な健康問題になっています。
ストレスが原因でうつ病になる理由は、脳やホルモンに影響を与えるためです。慢性的なストレスを感じると、私たちの体はコルチゾールというストレスホルモンを大量に分泌します。これが長期間続くと、脳の神経細胞がダメージを受け、気分の落ち込みや意欲の低下など、うつ病の症状が引き起こされます。
こうしたストレスやうつ症状を和らげる方法として、ヨガが注目されています。ヨガというと、体を柔らかくする運動というイメージがあるかもしれませんが、実はヨガには呼吸法や瞑想など心を整えるためのさまざまな方法が含まれています。
この論文では、ヨガがストレスやうつ病を軽くする理由を科学的に検証したさまざまな研究結果をまとめています。ヨガを行うことで脳内のセロトニンやドーパミンなど、気分を安定させたり、気持ちを明るくする物質が増えることが分かっています。また、ヨガをすることで、体内の炎症を引き起こす物質が減り、免疫系が安定することも報告されています。
さらに、ヨガをするとストレスホルモンであるコルチゾールの量が減ります。つまり、ストレスを感じても過剰な反応を抑えられるようになり、心が落ち着いてきます。また、睡眠を促進するホルモンのメラトニンが増え、深い睡眠をとりやすくなるという研究結果もあります。
こうしたことから、うつ病患者がヨガを継続的に行うと、症状が改善される可能性が高く、実際に多くの研究でその効果が実証されています。特に薬とヨガを組み合わせることで、より症状が改善することも報告されています。
最近では、ヨガが精神的な問題を抱える多くの人に役立つことが認識されており、世界的にも広く取り入れられています。国連もヨガの重要性を認め、6月21日を国際ヨガの日と定めました。インドの伝統的なヨガは今や世界中で受け入れられ、学校の教育カリキュラムや医療の分野でも活用されています。
つまり、ヨガは現代人が抱えるストレスやうつ病を効果的に和らげるだけでなく、心身のバランスを保つために大いに役立つ方法といえるでしょう。忙しい毎日の中で心を落ち着けるために、ぜひヨガを取り入れてみてはいかがでしょうか。
下記、研究の要約まとめです。
Role of yoga in stress management and implications in major depression disorder
Padmavathi R a, Archana P. Kumar a b, Dhamodhini K S a, V. Venugopal c,
Santhi Silambanan d, Maheshkumar K e, Pankaj Shah f
a: Department of Physiology, Sri Ramachandra Medical College and Research Institute, SRIHER, Porur, Chennai, Tamil Nadu, India
b: Medical Education Unit, College of Medicine and Medical Sciences, Arabian Gulf University, Bahrain Arabian Gulf University, Bahrain
c: Department of Yoga, Government Yoga and Naturopathy Medical College and Hospital, Chennai, India
d: Department of Biochemistry, Sri Ramachandra Medical College and Research Institute, SRIHER, Porur, Chennai, Tamil Nadu, India
e: Department of Physiology and Biochemistry, Government Yoga and Naturopathy Medical College and Hospital, Chennai, India
f: Department of Community Medicine, Sri Ramachandra Medical College and Research Institute, SRIHER, Porur, Chennai, Tamil Nadu, India
Received 23 August 2021, Revised 10 May 2022, Accepted 5 July 2023, Available online 21 September 2023, Version of Record 21 September 2023.
『ストレス管理におけるヨガの役割と大うつ病性障害への影響』
【背景】
現代社会ではストレスが原因でさまざまな精神疾患が増えています。特に大うつ病(Major Depressive Disorder, MDD)は世界的にも非常に大きな健康問題になっており、治療の選択肢としてヨガが注目されています。
【ストレスとは?】
ストレスとは、「自分が直面する問題や状況に対してうまく対処できないと感じる状態」を指します。ストレスは良い影響を与えることもあれば、心身の健康を害する悪い影響を与えることもあります。
【うつ症状について】
慢性的なストレスは脳や体の反応を変化させ、ホルモンバランスを崩すことでうつ病を引き起こすことがあります。具体的には、コルチゾールなどのストレスホルモンや炎症を起こす物質が増加し、それが脳機能に影響を与え、睡眠障害や気分の落ち込み、無気力感などうつ病の症状を引き起こします。
【ヨガとは?】
ヨガは身体のポーズ(アーサナ)だけではなく、呼吸法(プラーナヤーマ)、瞑想(メディテーション)、さらに道徳的な教え(ヤマ・ニヤマ)を含んだ、古代インド発祥の総合的な心身調整法です。
【ヨガとメンタルとの関係】
ヨガは脳や自律神経、免疫系に影響を与え、ストレスを和らげます。さらに、ヨガはセロトニンやドーパミン、GABAなど心の健康に関係する脳内物質を調整し、心理的安定や幸福感を高めることが研究で示されています。
【方法】
この研究はヨガがどのようにストレスやうつ病に影響するのかを明らかにするため、既に発表されている科学的研究をまとめたレビュー形式で実施されました。
【サンプル】
本研究は特定の新規実験や被験者を使った臨床試験ではなく、過去のさまざまな研究論文を対象にして、ヨガがうつ病やストレスにどのような影響を与えるのかを体系的にまとめています。
【結果】
多くの研究により、ヨガはストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を減らし、脳内のドーパミンやセロトニンなどの物質を増加させることが確認されました。また、ヨガを行った人はそうでない人よりもうつ症状が軽減される傾向にあり、炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)のレベルも低下していました。
【考察】
ヨガのストレス軽減効果は、脳のストレス応答システム(HPA軸)や自律神経系を調整する働きによるものと考えられます。ヨガを通じてストレスホルモンであるコルチゾールの量が減り、心の健康を支えるドーパミン、セロトニン、メラトニンなどが増えることで、うつ症状が改善する可能性があります。
【結論】
ヨガはストレスの管理や大うつ病の補助的な治療法として非常に有効です。日常生活に取り入れやすく、副作用も少ないことから、ヨガは心の健康を維持するための理想的な選択肢といえるでしょう。
引用文献は下記よりご覧下さい.
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