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162:余韻と残心

残暑見舞い申し上げます、という時季となりました。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。暦の上では既に秋となっているため、「残った暑さ」という意味で「残暑」と言う訳ですが、このような“残”という字を用いて余韻をイメージさせる言葉が僕は好きなんですよ。



例えば、冬の季語には「残月」がありまして、この言葉は日が昇る直前や沈む直後に空に残る月のことを指します。主に早朝や夕方に見られるこの現象は、月が空に浮かび上がることで、独特の美しさや風情を持っていると解釈されるのです。



別に残りたくて残っている訳でもなく、冬だろうと夏だろうと淡々と時間通りに軌跡をつくる月に対して、勝手に人間が余韻を感じているわけです。「早朝にまだ見える月」とか「夕方にもう見える月」とか、他に言い方はあるわけですが、わざわざ残月という認識を持って愉しむのです。



日本では儚い物に価値を置く傾向は強いんじゃないかなと思います。その短い時間の中での美しさや、季節の移ろいを感じさせる存在を愛でる文化は根強いですよね。



他にも「残業」という言葉がありますが、この言葉は農耕社会には存在せず、工業化による労働システム化が進んで出来た儚さの欠片もないような言葉ですよね…。「残業手当」という文字になると少し心躍らせる方は多いかもしれませんが…。



最後に、「残心」という言葉。武道を習っている方、習っていた方はよくご存知かと思います。技や打撃を行った後も警戒心を持ち続けること、相手に隙を見せず、次の動きや反撃に備える構えや心構えのことを指します。



例えば、剣道で打撃をした後、すぐに気を抜いてしまうと、相手の反撃を受ける可能性が高まります。そのため、一つの技を出した後も、引き続き相手を警戒し、続く動きや反撃に備える必要があるのです。この状態を「残心」と言います。



これは、ただの武道の技術や形式に留まらず、心構えや考え方としての側面も持ち合わせており、常に注意深く、油断せず、環境や状況に適切に対応する姿勢を示す言葉ともいえます。



「残る心」や「残った心」というイメージを持ち合わせる言葉に、その意を込めたことがなんとも好きでして。“そこに自分の心が残っている”として姿勢を正す、意識を整えることは、ヨガにとてもよく通ずるのではないかと思っています。



この残暑の時季、暑さを楽しみながらも、季節の移ろいによる環境の変化に目を向けて過ごしたいところです。



Sahanaメルマガ vol.321(2023年9月)より

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