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161:雷と循環
最近の横浜はスコールのような雨が多く「東南アジアみたいだなあ」なんて思っておりましたが、“スコール”という言葉の意味は“急に吹き出す数分間ほどの突風”ということを、皆さまご存知でしょうか。僕はつい最近まで知りませんでした…。
ただでさえ本来の日本には四季折々の変化がありますが、さらに変則的な気候になると、農業に与えるその影響は大きいだろうな…なんてことを素人ながら考えてしまうわけです。とりわけ稲作は日本の食文化とも深く結びついており、その生育には多くの自然要素が影響を与えているのですが、意外にもその一つが雷なんですよね。
インドでは雷雨や暴風雨は神格化されていますし、日本においても雷は神秘的な存在として扱われることが多いですね。地域によっては「稲津」とも呼ばれ、稲作に対する神々しい力を象徴しているほど。雷の鳴る音、稲妻の閃光は、かつては神々の怒りや喜びとされ、恐れられていたそうです。しかし、実は科学的にも雷と農作物には興味深い関係性があるんです。
雷は、自然界の窒素循環に一定の役割を果たしているんですよ。雷が発生する際の高温・高圧環境下で、空気中の窒素(N₂)と酸素(O₂)が反応し、窒素酸化物(NOx)が生成されます。この窒素酸化物は、雨水と反応して硝酸や硝酸塩に変わり、土壌に還元されます。この過程で生じる肥料は量としては少ないんですけども、自然の循環に一役買っているというわけなんです。
稲作にとって、雨水は不可欠であり、雷を伴う豪雨は時には稲作にとって有用な水分供給源となります。ただ、過度な雷雨は災害ともなり得るため、そのバランスは微妙なところというわけです。雷を好むとされる一部の神話や信仰も、このような自然現象と農業との繊細な関係を反映している可能性があるそうなんです。
日本の自然と農業は密接な関係にあり、雷はその一例と言えます。科学的にも、神話や文化においても、雷は多くの意味を持ち、その存在は日本の自然循環や農業に影響を与えているんです。なんていう風に、「ゴロゴロと雷が鳴っているなあ」なんて思う時にも、雷がもつ多面的な要素を理解することで、雨の日がなんだか面白く感じられるかもしれませんね。
Sahanaメルマガ vol.320(2023年8月)より