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159:思想と日常
皆さま、このお盆はいかがお過ごしでしょうか。台風の接近もあり、お住まいの地域や、帰省先で雨が降っているという方も少なくないかもしれません。
インド思想においては、この雨によって天空(正式には虚空と呼ぶのですが)から個の魂が地上に落ちてきて、穀物の恵みとなり、その穀物を食べた人から再び成ると考えられています。
日本でも“恵みの雨”と表現されますが、乾季のあるインドにおいて雨は生活の為の恵みであり、同時にヒトの生命が紡がれていく過程でもあるわけなんです。とか考えるだけでも雨の日がなんだか一瞬で意味のある日に思えてきますよね。
このような輪廻と転生の思想が今日の僕たちがよく知っている仏教にも引き継がれるのですが、この輪廻思想が生まれる前はより独特な思想だったんですよ。
それが「相続転生」と呼ばれるものでして、父親の魂が、その子ども(男の子)に転生するという思想でした。父親が生きているにも関わらず、その子である男子は父親の次の魂という、斬新な考えだったんです。なので、(特に)父親は自らの男子に対しては、生涯をかけて持っている全てを与える姿勢で子育てをしていたんですよね。
「男子に」というなんとも前時代的で男尊女卑な話を取り上げてしまって申し訳ないのですが、相続転生のような思想も持って全ての子に接することができると、世の中の子どもたちの環境も大きく変わりそうだなあと勝手に想像したりしています。
(思想の中で“自分の”という冠が付いたとしても、子を自分の所有物だと考えないのは、スピリチュアル大国のインドが流石なところだと思います)
なんていう思想や哲学や神様の話を(嫌というほど…)インドで学んできたわけですが、四季折々の日本にいる時の方が実感としてより深く学んでいる気がします。資本主義真っ只中で「コスパ」やら「効率化」が注目されやすい時代ですが、暇人の特権である(とか言うと怒られそうなんですけども)哲学的思想を持っていると、なんてことのない日常も楽しく過ごせる気がしませんか。
Sahanaメルマガ vol.318(2023年8月)より