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147:休息デザイン
かの有名な大谷翔平選手が、1日の約10~12時間ほどを睡眠に費やしていることは、今では多くの方がご存知かもしれません。過去20年間破られなかった陸上男子100mの日本記録保持者であった伊藤浩司選手は、試合前の1週間はストレッチ以外“ほぼ何も”しませんでした。
上述の2人に関しては少し特殊な例ではありますが、高いパフォーマンスを発揮するプロのアスリートは、「練習での(/日常的な)疲労をいかに回復するか」と「試合(/本番当日)をどれだけ万全の体調で挑めるか」という調整に長けています。つまり、「休み方のプロ」とも言えるわけです。
と、ここまでは「スポーツ選手は休むのも仕事の内だからね」ということが常識な今では、特に驚きはないかもしれません。実は、休むことが上手な人は優秀な音楽家にもなれるみたいです。
世界的有名な複数のバイオリニストを調査したところ、いわゆる“普通に優秀なバイオリニスト”と比較して、彼らの18歳までの練習時間は約1.5倍も長かったのですが、ただ練習時間が長いだけでなく、休息の取り方がとても計画的だったという特徴があります。
バイオリンのトッププレイヤーたちは、その多くが「90分練習したら、30分の休憩を取り、散歩や、瞑想、昼寝などをしていた」とのことです。音楽家にとっては、休憩時に「いかに音楽から離れて脳を休ませるか」という目的が大事であり、それを明確に把握できているプレイヤーほど世界に名を馳せているみたいですね。
なので、ご自身が仕事をされている時はもちろんのこと、スポーツや音楽活動、芸術活動をされている時にも休息を意識されることがキーポイントになるでしょうし、お子さんが習い事をしている場合は、休み方の指導が上手な先生を見極めることも大事になってきますね。
昔から努力することが美徳されるこの日本において、休み方をデザインすることについて考えてきた人は少ないかもしれません。「どのような目的で休むか(体を休めたいのか、脳を休めたいのか)」「どのようなタイミングで休むか」「1週間に計どのくらい休むか」を決めて実行するのも、日本的に言えば僕は立派な努力だと思います。
ちょっと春の疲れが出やすく、気温と湿度の上昇によって体調が崩れやすいこの5月という時季に、「いかに美しく休み方をデザインできるか」というテーマで過ごされるのも、とても良いんじゃないかなと思います。
Sahanaメルマガ vol.304(2023年5月)より