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144:運動記憶
新年度、皆さまいかがお過ごしでしょうか。人によっては環境が変わり、新たに覚えなくてはいけないことが増えているかと思います。また、職場や生活環境が変わらずとも、新しい習い事を始めた方も多いかもしれませんね。
「記憶力」って、実は色々とあることをご存知でしょうか?いわゆる物忘れに繋がるものが認知記憶と呼ばれまして、脳の中でも記憶中枢が関係します(“記憶力アップには、感動が大事です”という話はよくされますよね)。
今回は、記憶中枢は関係のない運動記憶の話でして、その名の通り運動が得意になるかどうかの決め手になります。
子どもの頃にスポーツや音楽に打ち込んで、たくさん練習したことがある方は、大人になってから(しばらくそのものから離れていても)再開した時に、“体が覚えている”という不思議な感覚を経験したことがあるのではないかと思います。
気が遠くなるようなバットの素振りや、ピアノの繰り返し練習は、脳の機能的に理にかなっているようです。
なぜかと言いますと、動作の上達には2つの脳の使い方が関わってきます。
このメルマガを読んで下さる方のほとんどがヨガをされているので、ヨガを例にさせていただきます。
初めておこなうポーズって、とても難しく感じませんか?ですが、2回、3回と繰り返し行っていくうちに、「あれ?なんで最初はこんなに難しく感じていたんだろう…」と思えるほど、すんなりと綺麗なポーズが取れるようになります。
初見では、「そんな恰好どうやってするのよ…?」と、ポーズ(ヨガって変な恰好になること多いですよね…)を取るための体の動かし方が分かりにくいのですが、これは小脳から少し間違った運動指令が筋肉に届いている為です(失敗の段階)。
練習を繰り返すことによって、大脳が“間違った動き方”を捉えてくれ、小脳が正しい運動指令を出せるように訂正させてくれるのです(フィードバックの段階)。
最終的には小脳は正しい指令を出せるようになり、動作を意識することなく行えるようになります(成功)。
なので、最初は基本動作を覚えていくと同時に、しっかりと失敗を重ね、“失敗してしまう動き方”を覚えていくのが大事のようです。
そして、知覚運動学習と呼ばれる、見たり聞いたりすることである知覚を何度も繰り返すことによって、運動や動作が効率よくできるようになります。スポーツや楽器演奏の練習などに励んだことがある方は、「イメージするのが大事だ」と言われたことがあると思いますが、知覚運動学習において、イメージを持ちながら練習することが効果的であるとされます。
また、英語学習時のように、「目(Reading) と耳(Listening)を使って知覚記憶」とし、「指(Writing)と口(Speaking)を使って感覚記憶」にすると、短期記憶が長期記憶に変えられやすく効率が良くなります。
ヨガだけでなく、バレエやゴルフ、英会話など、皆さん色々な趣味をお持ちだと思いますが、“脳の機能”に着目すると、上達速度が上がって、より楽しくなるかもしれませんね。
つまるところ“失敗を重ねること”がとても大事なのです。もちろん、時には失敗には苦痛が伴うかもしれないのですが、それも実はとても大事なんですよという話はまた次回に。
Sahanaメルマガ vol.301(2023年4月)より