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080:綿の下旬

あっという間に8月も下旬でして、暦の上では処暑と呼ばれる二十四節気に入りました。ちなみに、毎年「まだ8月7日なのに、暦ではもう立秋なのか…」と思いながらの上旬を過ごします、、、、。



二十四節気をさらに細かく分けた七十二候では、本日8月23日からは、「綿柎開」と書き「わたのはなしべひらく」もしくは「めんぷひらく」と呼ぶ時季となります。綿の花の萼が開いて、ふわふわの綿毛が飛び出してくる頃だと言われています(「萼 / がく」なんて言葉、中高の理科や生物の授業ぶりに見た気がします…)。



衣類や布団、衛生品など、日常生活で身に纏う物の多くは綿が原料となっており、とても身近な天然繊維ですよね。そんな綿ですが、植物学的には大きく4つの種に分けられまして、そのうちの2種の原産はインドということをご存知だったでしょうか(意外と多いんですよね、インド原産のものたち)。古代のインダス文明以降、綿を使った織物業はインドの主要産業の一つだったんですよね。



インドとは遠く離れたヨーロッパでは、大昔から羊毛を使っていた為(この歴史はかなり古く、人類が農耕を始めるよりも前からヤギとヒツジは家畜化されていたと考えられています)、中世になり、綿繊維がヨーロッパに伝わると、「肌触りが良く、ふかふかしていて暖かく、そして軽くて着心地が良い」と人々は驚いたそうです。



何よりも驚いたのが、その綿繊維が植物から採れるということでした。ギリシャでは、インド誌と呼ばれる書物にて「インドには羊の生える木がある」とイラスト付きで人々に紹介されているほど、植物から採れたとは思えなかったようです。インドには羊が生える植物があると想像していた中世ヨーロッパの人たち、なんとも可愛らしくないですか。



そんなこんなで、あれよあれよと大人気になった綿繊維のせいで、ヨーロッパ現地の毛繊維業が大打撃を受けてしまうのですが、綿があまりにも人気の為、作っても作っても足りないという状況が、後の18世紀におこる産業革命のきっかけの一つになったようです。羊の生える植物、すごいですよね。まぁ、良い面があれば悪い面も…ということで、産業革命で綿織物が安価になると、今度は原産地インドの伝統的な織物業が大打撃を受けたり、綿花の栽培に奴隷が投入されたりと、負の側面も出てしまうのですが…。



日本に綿がやって来たのは、平安時代の初め頃だと言われております。日本に漂着したインド人が綿の種を伝えたとされているのですが、その場所が愛知県の三河地域だったようで、後に「三河木綿」が作られます。また、この綿織物に勤しむ母親を思って作られた装置が、木製人力織機でして、これを作った人が豊田佐吉です。そして、この機械がもとに、豊田自動織機が創立され、それが今では世界的有名なトヨタ自動車になったという話なのですが、愛知県に漂着してくれたインド人ありがとう、ですよね。



そんな綿の萼が開くこの時季、暦の上では「処暑」ですが、まだまだ残暑が厳しいですので、皆さまお体に気を付けてお過ごしくださいませ。



Sahanaメルマガ vol.215(2021年8月)より

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