Mail Magazine
079:送り火
本日でお盆が終わり、これから夏も終わりに向かってゆくのだなという気分にさせられます。特にここ2~3日の雨のおかげで、久しぶりに「涼しいな」なんて言葉を口にしました。
今日から平日に戻られる方もいらっしゃれば、今日までお盆休みの方、はたまた最初からお盆休みなんて…という方もいらっしゃるかと思います。月遅れ盆だと8月15日がお盆、16日には送り火、または灯篭流しをする風習も多いですね(京都の大文字の送り火も毎年8月16日ですね)。
送り火だったり、護摩だったり、火と仏教の結びつきは強いイメージだったのですが、意外にも仏教はもともと火を宗教行為に用いることはなかったそうです。仏教が成立してから数世紀経ち、密教化する過程において、火を用いるヴェーダ(ヨガの元になっている思想哲学です)系の宗教行為を採用したみたいです。弁財天や韋駄天、吉祥天など、「天」のつく神様はインドからやって来たヴェーダの神様なのですが、その中には火の神様である火天さんもいらっしゃるんですよね。
送り火のように、死者の魂を火によって霊界へ送るという考えは、遥か昔のインドでも同じ考え方が生まれていました。火によって燃やされたものは上に上がっていくという性質を捉えた古代インド人は「火葬に付せられると死者の不滅なるもの(魂)が天界の火神“アグニ”に導かれて赴く」と考えていました。この考えがまた後の輪廻思想の一部にもなるのですが、僕たち日本人の(宗教的な)精神文化の一部が、大昔のインドの思想が大いに影響していているなんて、そしてそれが今皆さんが行われているヨガに大きく関係しているなんて、なんだか面白い話だなと思っております。
宗教行為やら思想哲学とは関係無くても、暗闇を照らしてくれたり、食材の調理を可能にしてくれる火の恩恵をたくさん受けている人類です。最近またキャンプがとても人気になったり、動画配信サービスにおいても、ただただ焚火の様子を映しているだけの動画が多く再生されたりなど、いつの時代も人は火を見て心や気持ちを落ち着かせるんだなと(焚火しながら火天や火神のことを考える方は、あまりいらっしゃらないかと思いますが…)。
なにもキャンプに行ったり、庭で火をおこさなくても、ロウソクの灯をぼーっと見つめるだけでかなりのリラクゼーション効果が期待できます。照明や家屋やデバイスなどの規則性のある物ばかりに囲まれている生活においては、ゆらゆらと不規則に揺れるロウソクのゆらぎが脳を休ませてくれるのです。ちなみに、近代ヨガの行法の一つにも、ロウソクの灯をじっと見つめ続ける浄化法というものがあったり。
香りが好きな方は、アロマキャンドルを選ぶのも楽しそうですね。この夏も、在宅時間が長い状況が続いているかと思いますが、在宅仕事を終えられた時や、就寝前などにロウソクを点ける時間をつくられるのも、とても良い気分転換になりそうですね。何も言わず、部屋に独りでじっとロウソクを見つめていると、それを見たご家族からとても心配されそうなのでお気を付けください、、、、。
Sahanaメルマガ vol.215(2021年8月)より