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014:悪魔祓いと精神分析
こんばんは。ホッとひと息つく方も多いのではないでしょうか、金曜日の夜ですね。メルマガでもよく心理学の情報(といいますか、小ネタといいますか…)を書かせていただいているのですが、今日は少し詳しく「精神障害とその歴史」についてです。
表題に、“悪魔祓い”なんて付いておりまして、たしかに宗教的な背景が出てきますが、あくまでも「歴史的な観点」でのお話です(悪魔だけに…ですね……)。
近代においてすら、科学史家のジョルジュ・カンギレム(1904-1995)が「心理学って、科学としても、技術としても、充分には定義づけられないよね」と疑問を呈したり、かの有名なアメリカ心理学の父であるウィリアム・ジェームズ(1842-1910)も、人間の精神活動を「意識の流れ」と表現しているように、私たち人間の精神活動や行動を分類したり、概念化するには極めて複雑であると言えます。
(まぁ、だからこそ、そこに多様な概念や解釈をつける作業として心理学が役に立つと言えるようですが)
ここでは色んな歴史を省略してしまいますが、私たちの認識としてある「精神障害」も、いわゆる心理学の概念であるため、それぞれが独特で固有の曖昧さを持ち、さらには時代や学派によって「概念」が異なっていると言われています。
古代ギリシャでは、人のもつ狂気や精神病は「神」や「悪魔」が取り憑いた結果起こるとする「鬼神論」が存在していたようです。
例えば、「てんかん」の病気を神々の仕業であると言い、右半身の痙攣は”母神”のせいであると言い、口から泡を吹けば”軍神”のせいであると言い、夜に錯乱して家を飛び出せば”夜の女神”のせいだと言って、祓い清めの呪文を唱え、お布施を取っていたそうです。
その時代にもちゃんと医師がいて、医師たちは「てんかんは脳の病気である」と言っていたにも関わらず、です。よくぞ人類が生き延びたな…という、まぁなんとも恐ろしい話なのですが。
この「鬼神論」の流れがローマ社会に受け継がれ、いわゆるキリスト教社会になってから「精神病者は悪魔が憑依したもの」という観念が定着していったようです。
世界史を履修されていた方はご存知「宗教裁判」が、15世紀~17世紀にかけて頻繁に行なわれていたのですが、宗教裁判にかけられるほとんどが中高年の女性であり、これがいわゆる「魔女狩り」と呼ばれます。
悪魔と契約した魔女の体を焼き、魂を解放するといった、これまた恐ろしい考えのもと、約300年にわたって10万人~数10万人の方が亡くなったとされています(正式な数は不明のようです)。
「メランコリー」という言葉、聞いたことありませんか?
「血液」「粘液」「黄胆汁」「黒胆汁」の4つの体液のバランスから人間の健康状態を診ていた「4体液説」においては、黒胆汁(メランコリア)が過剰になって脳に蓄積されると鬱状態のようになり、時に絶望的になって自殺を図ってしまう症状を示すとされていました。
黒胆汁は名前の通り、黒色ですので「黒=悪魔の色」と解釈され、「メランコリーの原因すべてが悪魔ではないが、悪魔に取りつかれた人はすべてメランコリー(鬱病)である」という、なんとも奇妙な病因論が医師たちの間にも広まったそうです。
ここでメランコリーの症状について記述を残したヨハン・ワイヤー(1515-1588)の症例が、今日の鬱病(メランコリー)にも引き継がれている内容が多く見受けられます(対人恐怖、引きこもり、幻覚、妄想 等)。
実はこの4体液説がアーユルヴェーダの考えと類似していまして…
と、既に長くなってしまったにも関わらず、まだまだ書けそうですが、やめておきます…(笑)
この続きは、またいつか皆さんが忘れた頃に…(笑)
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Sahanaメルマガ vol.68より(2020年1月)