Essays

 

2016年3月

 「今日は自分の誕生日だから子供たちにお菓子を配りたいんだ。ちょっと手伝ってくれないか?」とアニルに尋ねられ、一緒に近くの集落まで行きました。ここインドでは、誕生日の人がお世話になっている人にお菓子や果物を配る習慣があり、僕たちの住む場所の近くには、必要最低限のものだけで暮らす人たちの小さな集落があります。「子どもたちはお菓子が好きだろうし、筆記用具が必要だろう」と話すアニルの手は袋いっぱいのお菓子と文房具を抱えていました。
 

 無邪気に走り回っていた子どもたちは、こちらを見るや群がるように集まり、目を輝かせながらお菓子を待ちます。そして、元気いっぱいの声でバースデーソングを歌い、食べ物に感謝をし、満面の笑みでお菓子を食べるのです。一口ひとくちを大切そうに、美味しそうに食べる彼らは間違いなく幸せの基準を持っています。
 

 体が成長していくにつれて、幸せだと思う基準が少し曖昧になっていた僕は、幸せはいつでも日常にあることを思い出しました。そして子どもたちからシンプルに生きることの大切さを、アニルからは分かち合うことの素晴らしさを教わりました。
 

 分かち合うことは素晴らしいことだと、僕はこの国でただ知っているだけでした。ですが、いざそれを行動に移すことで、自分が分け与えられるものよりも、得るものの方が大きいのではないかと実感しています。

Busport2016年4月号より

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